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平凡な我が家の神社に伝説の竜神の孫が来ました  作者: けろよん


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第8話 休日を過ごす瑠希

「ふう」


 瑠希は自分の部屋に戻ってきてベッドに寝転がり一息吐いた。休みの日は休むものだというのに今日は朝から外に出掛けて山登りして疲れてしまった。

 でも、収穫はあった。ドランの面倒はこれからドレミが見てくれるだろう。もう婚約者だとか気にせず楽ができる。ここからはいつも通りの休日だ。

 一人でごろごろして日曜日という贅沢を満喫することにしよう。

 瑠希はベッドに寝転んだままスマホに手を伸ばして見る事にした。


「ふむふむ、なるほど」


 最近のニュースを見てみる。そこには『今年の流行りはコレ! 今時の女子中高生が好きなファッション』という記事が載っていた。


「へえ、これが流行なんだ」


 瑠希は今まであまりファッションに興味が無かった。動きやすければ何でもいいし、よそいきも家にある物を着ていけばいいと思っていた。

 でも、これからはもう少し女の子らしい恰好をしてもいいかもしれない。ドレミを見ると比べてしまう。


「まあ、お金は無いし、あたしには縁の無い世界だろうけど」


 そんな事を考えつつ、適当にページをスクロールしていく。すると、『恋愛成就の神社特集!』という見出しの記事を見つけた。


「うちも神社なんだけどなあ。暴れていた竜神を鎮めるとかじゃなくてこういうロマンチックなのが良かった」


 神様とか縁結びとかそういうのを信じているわけではないが、雰囲気が良ければクラスのみんなに自慢できた気がする。


「うちの神社の良さなんて周りに自然が多くて小学校の頃に遊びの溜まり場になってたぐらいだし」


 それも中学校に上がってからはみんな野山を駆け回るよりお洒落な町の方に遊びにいくようになったのでとんと集まらなくなってしまった。

 瑠希自身も外で遊ぶという事が無くなった。ただの自然があるだけの山だ。


「本当、うちの神社って何もないわよね」


 竜神を鎮めたからといって瑠希に何か後利益があるわけでもない。まあ、それもまたいい。

 何もないおかげでこうして休日をゆっくり過ごせるのだから。忙しいとそれはそれで手伝いに駆り出されたり騒がしくなりそうだ。

 休日をゆっくりと過ごす。これ以上の幸せを望むのは贅沢というものだろう。

 瑠希はこのまま今日一日を過ごすつもりだった。だが、部屋のドアをノックする音が聞こえてきた。


「はあい」


 答えると両親が入ってきた。何か気迫を感じるんだけど何だろうか。瑠希はスマホを仕舞ってベッドから起き上がって居住まいを正した。両親は言ってくる。


「瑠希、何をしているんだ?」

「え? 休んでるんだけど」


 休日に他に何をするというんだろうか。いつも通りの日曜日を過ごしているつもりなんだけど。

 瑠希は自分に非は無いと信じていたが両親は収まらなかった。


「お前にはドラン様の婚約者だという自覚がないのか」

「いや、そんな事言われても。それに本物の婚約者が来たんだよ。ドレミさんって言って……」

「あんなどこの馬の骨とも分からない娘にドラン様を渡すつもり?」

「いや、竜王家の娘で許嫁だって言ってたけど。わたしよりもよっぽどお似合いだと思うけど」


 するとそのお似合いだとさっき言ったばかりのドレミがやってきた。彼女はなぜか瑠希にすがりついてきた。


「瑠希さん、そんなところにいましたの。間が持ちません。助けてください」

「ええ!?」

「何を話せばいいのか分かりませんの」

「そんなのなんでもいいよ。ファッションとか」

「瑠希さんはファッションにはお詳しいんですの?」

「え、それは……いや、全然」


 そう言えばドランとは何を話しただろうか。特に意識していなかったのでよく思いだせなかった。

 両親が何かを押し付けてくる。財布だった。見るとたくさんの紙幣が入っていて瑠希はびっくりしてしまった。

 うちは儲かっているのだろうか。由緒の正しさだけは知っているけれど。


「とにかく、これでドラン君を遊びに連れていきなさい」

「しっかり頑張ってくるのよ」

「ええー」


 どうやら断れそうな雰囲気ではない。ドレミもどこかに遊びに行きたそうな目をしている。

 まあ、彼の面倒を見るのも仕方ないのだろうか。うちは一応竜神を祀っている神社なわけだし、竜の関係者をないがしろにするのも対面が悪い気がする。

 瑠希は仕方なくドランを呼びに行くことにした。




 部屋を出て廊下を歩きながらめんどくさいなあとため息を吐いてしまう。


「全くもう、なんでこんな事に。休みの日は休むものなのに」

「申し訳ありません。瑠希さん。わたくしのせいで」

「ドレミさんは悪くないよ。悪いのは……誰だろう」


 誰も悪くない気がする。まあ、今日はいい天気だ。出かけるのも悪くはないか。リビングに行くとドランはまだテレビを見ていた。

 子供向けのアニメが終わってニュースを見ているようだ。もしかしたら彼はこれから一日テレビを見て過ごすのだろうか。

 だとしたら面倒が無くて済む。ドレミをここに置いて自分も適当に座ってスマホを見ながら声に答えてやれば面倒を見た事になるのではないだろうか。

 瑠希は断られる事を想定して真面目にテレビと向き合うドランに声を掛けた。


「ねえ、ドラン。お父さんとお母さんから遊びに行きなさいってお金をもらったんだけど、ちょっと一緒に出掛けない?」


 ここで、「いや、テレビ見てる」、と答えてくれたらゲームセットである。明日の学校が始まるまでのんびりと家で暮らそう。

 お金はそのまま両親に返せばいい。瑠希には重たい財布だ。

 だが、ドランは笑顔で振り返ると、「おおっ、瑠希。ちょうど今暇していたのだ。出かけよう」、と答えてきた。

 その笑顔が眩しくてインドア派な瑠希は目が眩みそうになってしまう。だが、もう誘ってしまったのだから出かけるしかないのであった。覚悟を決める。


「そ、そう出かけるんだ。じゃあ、準備して早速行こうか」

「うむ、準備ならもういつでもいいぞ」


 彼は手ぶらだ。まあ、お金は自分が持っているからいいのか。

 瑠希はお洒落をした方がいいのか考えたが、意識していると思われるのは嫌だし婚約者のドレミもついているので、山に行った時の恰好のままの動きやすい服装で出る事にした。

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