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蛇に転生しました。勇者か魔王になろうと思います。  作者: 松明ノ音
【駆け出し編】少年は冒険者になった。
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藪を突いて蛇を出す。




「では、それぞれ右手を出してください」


 何か複雑そうな機械に手を出すと、虎の牙のタトゥーのような紋が右手の甲に記された。


「何これ?」


「これが、トラノスの冒険者として登録された証になるわ。ランクを示すものにもなるわね」


 Eランクになれば虎の口が、Dランクには虎の目が追加されるらしい。Bランクで虎の頭が完成するようだ。


「なるほどねぇ。ありがとう! お姉さん」


 固そうなヒナ嬢は子どもの笑顔に弱いのか、顔を赤らめて自身の巨乳を見るように俯いた。あぁもうかわいい。


 掲示板にあったFランクのクエスト《草原兎の討伐》を受理してギルドを出た。




 王都の道はきれいに舗装されていて、石畳になっている。建物もタマソン村のように適当に点々と建ってはおらず、効率的に並んでいる。


 歩きやすい大通りを、悪意に曝されながら歩く。


「これでギルドに関しては、動きやすくなったと思うよ」


 二人を連れて、城門の外へ出る西門に向かっている。《草原兎》は西門から出た草原に多いらしい。


「……ちょっとやり過ぎな気はするがな」


 最初に腕や脚を千切り取った冒険者のことだろう。優しいイッサが言う。


「どこがです? いいザマですよ」


 散々亜人を見下してきたんだろうから、とソージが言う。おそらくイッサの心配はソージのことだろうけれど、後にしよう。


「……悪いけど、基本僕はクエストに参加しないから」


 えぇ、何でですかと言うソージの頭を、イッサが押さえる。


「わかった。お前の訓練にはならないだろうからな」


「そゆことー」


「俺たちも《勇者の護り手》になったんだから、強くなったんじゃないです? 勇者ほどじゃないでしょうが」


 おそらくそうだろうけど、必要なものはそれだけじゃない。


「それだけじゃ足りないんだ。両方で強くなってもらうよ。亜人としても、人としても」


「……アンタみたいに、ですか?」


 小さく笑って、僕は頷く。タマソン村を襲った兵たちは《魔化100%》で捕らえた。


 その時に僕の魔族としての姿を見せているし、この王都に着くまでに人間とのトラブルを掌の《破砕牙》と《握撃》で握り潰してきたのを、二人は見ている。


 二人の戦闘は、ほとんど《獣度100%》でステータスにものを言わせる戦いだ。それだと、ステータスで上回る敵には負けてしまう。


 さすがに人型だけで戦えるようになれとは言わない。ただ、僕が人型の掌で魔物としての顎を表現するように、人型の戦い方に落とし込むまではやって欲しい。


 いずれは、臨機応変に獣度を使いこなせるようになってもらう。


「まぁ行き帰りは色々ありそうだから、僕が同行するけどね」


「何か、年下に子ども扱いされてるみたいで気に食わないけどな」


 僕の二倍近くあるイッサが言う。


「怖い大人たちがいっぱいいるからねぇ」


「はっ! 一番弱い俺にも敵わない程度の奴らでしょう?」


 僕も笑うが、本音だ。


 今この城門までの道でさえ、向けられるのは悪意のオンパレード。侮蔑の視線、嘲笑の声、恐怖の短い悲鳴、恫喝の唸り。


 真正面から見られることはなかった。見下され、横目で見られながら城門までやって来た。僕ほど強くもないというのに、それらに無関心を装って平然と歩ける二人を、やっぱりすごいなと尊敬する。


 しかし、二人は所詮タマソン村のお人好しだ。正気の時には、勝つことはできても優しさゆえに徹底的にやれはしない。恐怖を与えられず、その隙に大義名分を盾に強い軍人が来るかもしれない。


「おーぉ。これはこれは、噂の亜人勇者一行とかいうクソじゃねぇか」


 公務員であろう城門の門番でさえも、北門に着いたなりこの言い草だった。二人で僕たちの進路に立ち、にやにやと笑いながら武器の棒をぺしぺしと掌でもてあそんでいる。


「……ホラ、ここにも藪を突くおバカさんが」


 当分は都のみんなが『藪をつついて(ぼく)を出す』だろう。


 けれど、藪を突いた人間が蛇に噛み千切られれば、側にいた人間を含めて藪を突こうとは思わなくなる。


 門番が棒を振りかぶったので、それを振り下ろす前に蹴りで足を薙ぎ払って転ばせ、脚を踏み潰した。折れた骨が剥き出しになり、皮膚を突き破ってもぐりぐりと踏みにじると、脛から下が千切れる。


 千切れた脚をもう一人の口から無理やり突っ込んだ。泣き叫びながら気を失ったが、何とか踵までは入れられた。


 イッサとソージは、タマソン村を含めて地獄を二度見た。もう十分だ。


 だから僕がしばらくやるべきことは、出来るだけ多くのおバカさんたちに深いトラウマを作ってあげることだ。




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