【幕間(8)】
結局、ショウコ王女が泣き疲れて眠ってしまい、おひらきという雰囲気になった。
……大変な目にあった。
勘弁してほしい。転生してからこっち、女を抱いていないのだ。あれほどの美貌と大きな恵みを持った美少女に包まれると、欲情を通り越して目眩さえしてくる。
あの虎のような勝ち気な美少女が、赤い長髪を振り乱しながら鳴くのはきっといい眺めだろう。
……帰ったら一人くらい捕まえて抱こうかな。そう思いながら、席を立った。
「失礼します」
ケイン王とテイ・ホ将軍に深く礼をして、背を向ける。その背を王の声が打つ。
「俺は国の王だ」
「……存じ上げております」
僕は背を向けて扉に向かったまま応えた。
「王は国益を優先しなければならぬ。同情で国益を損なうことはしない」
「正しく、賢明なご判断かと」
「つまるところ、慣習が国益を損なう状態であれば、王としては捨て置けん。もし、それが明らかとなった場合に限るがな」
能力は示した。意志も示した。そして今、言質を取った。
「では僕は、判断材料を持って参りましょう。どう判断されるかは、王次第です」
「その通りだな」
王として言うのであれば、その判断にはそれなりの責任を伴う。僕がそこまで口にすることはないが。
「では、これにて」
僕はそのまま前進し、扉を開いた。
パタン
扉の音を立てて、亜人の勇者は去っていった。
「さて、どう思う? テイ・ホ」
まだ目尻に涙の残る大将軍に王は問う。
「……あの能力は異常ですな。幼い身でうぅ、惨劇を、おぉ、目の当たりにした、あぁ、こともあるのでしょうが、戦闘では間違いなく役に立つかと、ぐす」
王はこの感動屋の老人を、呆れたような微笑ましいような目で笑う。
「戦闘については大将軍のお墨付きか。さて、お前はどう思う? 《智》の勇者シュウ=コウタン」
亜人の勇者が出た扉とは、別の扉を見やると黒い長髪に透き通るような白い肌の美女が入室してきた。細身を包む衣服の色は、国の色である赤だ。
「恐るべき能力ですね。敵に回すべきではないでしょう」
整った顔の《智》の勇者は、才気走った声で言う。しかし、と。
「しかし?」
「具体的にはわかりませんが、何かを隠している様子ですね。それ自体が、隠し事をしているのにテイ・ホ大将軍を前にしても恐れなかった理由でもあるでしょう」
「……その気になれば、あんな小さな童が大将軍を倒せるとでも?」
「わかりませんが、逃げ切れるくらいには思っていたようです」
「同意ですな。ひょっとしたら《隠蔽》のスキルも持っている可能性があります」
大将軍はようやく泣き止んだらしい。ちょっと困った顔で王と勇者はそれを見る。
「人格としてはどうだ?」
「悪くはないですね。ただ、おそらくあどけない顔の腹の底には、黒いモノがゴトリとあると思います」
「同感だな。あの褐色の少年の笑顔は、どこかこちらの肚を冷たくさせるぞ」
二人は深刻な顔で頷き合う。老将軍が「そうですかな?」などと言っているが、ちょろい爺さんの声は黙殺される。
「ですが、復讐の念は元より亜人を救いたいという思いも、本物でしょうね。どこかお人好しの面もあります」
王は頷き、質問を変える。
「では、亜人の勇者についてどう思う?」
「恐れながら我が国は、亜人を特産品とすることで利益を享受しているとともに、不利益も生み出しております」
「……以前からの提言であったな。そのせいで、領土を十分に使えていないと」
シュウ・コウタンは首肯する。大将軍も、実感を持って深く頷いている。
「ええ。我ら人族では無理なことも、彼がいるならば取れる手段があります」
「ほぅ? ではあの者がいれば……」
《智》の勇者である黒髪の美女は、妖艶とも思える微笑みを浮かべて答える。
「えぇ。彼が《英雄》に相応しいのであれば、あるいは」
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ようやく幕間終わりですー。長くてすみません。
今日は18時に【閑話】をもう一部分投稿します。
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