表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蛇に転生しました。勇者か魔王になろうと思います。  作者: 松明ノ音
【野性編】■■■は魔性の蛇になった。
9/126

地を這うモノ




『草』『草』『木』『木』『草』『草』『草』『草』『木』『木』『草』


 這い進んでいくと、変化はすぐに起きた。


    《分析》の熟練度が一定に達した!

    《分析》は《解析Lv1》になった。


 どこからがアナウンスが聞こえた。どうやらスキルが変化したらしい。


 しかし、このアナウンスも謎である。先ほど歩きだしたときも、



    《大地■■の加■》を獲得した!

    《転生者》の称号を獲得した!



というアナウンスが脳内に流れたのだが、どこで誰が、何の目的で俺に伝えているのか。


 考えてみる価値はありそうだが、今は食い物を探すことと安全を確保することが先決だ。そういう世界だと捨て置いておこう。


《解析》をしてみたが《分析》と差はなかった。


『草』『草』『木』『木』『草』『草』『草』『草』『木』『木』『草』


 相変わらず草木しかなく、詳細がわかることもない。


 しかし、地面が近いのも面白いと思った。草の根をかき分けるのがデフォルトの視界なので、草がどう生えているか、どんな生き物の足跡があるのかわかりそうだ。今のところ、ネズミの小さな足跡しか見つけられていない。その足跡の主をまさに探しているのだが。


 情報は欲しい。今俺は、ここが森で自分が蛇ということしか知らない。


 周りに自分より強い生き物が多い場所なのか、そもそも自分の食物ピラミッドの位置さえ知らないのだ。見たこともない母蛇が、外敵のいないところで生んでくれたならいいが、訊ねることも出来ない。


 そして、そろそろ本格的に腹が減ってきた。


『草』『草』『木』『木』『草』『草』『草』『草』『?』『木』『草』


 そんなところで《解析》結果に変化があった。


『?』という今までにないものが出て来たのだ。


 普通にピット器官もとい『第三の目』で見てみると、ネズミの形状をしたものがいた。《解析LV1》だからか、普通に蛇の機能で見た方が詳しくわかった。見逃しそうだから使っていたけど。


 ネズミの大きさは、そう大きくない。太さが俺の頭より少し大きいくらいだろうか。《隠密》のスキルのお陰か、あちらは俺に気づいていないようだ。


《解析》した時点で俺は腰? というか全身を左右に振って進む蛇行を止めていた。息を潜めて、ただただ『第三の目』で様子を伺う。


 ネズミは小さく進んでは止まり、周囲を見渡してはまた小さく進み、また周囲を見渡すというのを繰り返していた。


 ……状況としては、俺と同じなのかもしれない。


 何度か見た足跡よりも、ネズミは小さいようだった。生まれて間もなく、外敵に怯えながらも食い物を探している。さすがに哺乳類なので、さっき生まれた俺よりは母親の庇護は受けただろうが、たどたどしい歩みには不慣れな印象を受けた。


 つまりは、恰好の獲物だ。


 万全を期せば、ネズミが木の実か何かを見つけて食っている時が、狙い時だろう。しかし、俺も生まれたばかりの狩人(蛇)初心者だ。時間をかければかけるほど、あちらに気配を辿られる恐れも大きくなる。そして、俺が俺を食う者に見つかるリスクも大きくなる。


 自分の細長い身体に問う。ここから飛びつくか? 届かない。そもそもどうやって食えばいいか? 噛み殺せ。外した場合は? 逃げられるだろうな。逃げられたら? 追いつけない。次の獲物を見つけるまでおあずけだ。


 自分で問い、自分で答える。最適解は、気づかれないように、一っ跳びで噛み殺せる間合いまで近づくこと。


 ゆっくりと近づいた。こちらが食おうとしているのに、食われる者のように緊張している。


 徐々に、徐々に近づき、自分のイメージで届く範囲まで来た。


 心臓がはち切れそうに鼓動している。目も第三の目も《解析》もネズミから離さないまま、心臓ってここにあったんだとどうでもいいことを考えた。


 ネズミが周囲を見渡す。小さく数歩歩いて立ち止ま、



    スキル《身体操作》発動。

    スキル《突進》を獲得しました!



 アナウンスが聞こえた時には、ネズミの腹に噛みついていた。勢い余って、ネズミのいた位置を噛みつきながら通り過ぎた。



    スキル《噛みつき》を獲得しました!



 アナウンスが続く。情報は助かる。これからは天の声とでも呼ぶことにしよう。


 突き立てた牙から、ネズミの血がしたたる。口に、ネズミの肋骨を噛み砕く感触があった。数度ビクンと跳ねるように痙攣し、動きを止めた。


 どうやらこの体は咀嚼を必要としないらしい。本能でわかったので、そのまま口の奥へと誘った。


 顎の可動域が広い。人間の時のように骨と骨が組み合わさっているのではなく、伸び縮みする靭帯が顎を繋げているようだった。


 映像で見た知識がある気がする。自分よりも大きな肉を食っていくその摂理を、自分で体現していく。牙と口、咽や食道をこういう風に使うのか。



    スキル《丸呑み》を獲得しました!



 捕食者となる覚悟はしていたつもりだったが、実際に体験してみるのは、また違う。


「……ごちそうさん」


 とりあえず、初めての狩りは成功に終わった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ