強敵と書いても友
「「一、二の、散!!」」
二匹で左右に跳び跳ねた。
パーティスキル《はさみ撃ち》が発動。
俺は左に。相棒は右に。
ムカデの頭は当然俺を追う。この二日間、俺を意識してきたはずだ。
アイツは相棒を、小さな虫としか認識していないだろう。
「オーケー、ちゃんとこっちを観ろ」
《邪眼LV4》
俺はムカデの目をしっかりと見上げて《邪眼LV4》をかける。
《邪眼》
ムカデは息苦しそうに震える。動こうにも動けず、それでも無理に動こうとした結果、震えるようになってしまうらしい。
それだけじゃなく、実際息も止まるのだ。己の身で食らってみて初めてわかることだった。
動けない。息が苦しい。
「……っ! お前、も《邪眼》持ってん、のか、よ!」
身をめちゃくちゃに捩って、何とか自由を取り戻す。
《身体操作》《瞬発LV6》《三角蹴り》
ムカデと俺が自由になったのは、同時だった。
相変わらず真っ直ぐ突っ込むのは怖いため《三角蹴り》で一度角度を変える。
斜め前から行くのさえ怖い。斜め後ろへ突進してV字を描き、腹の真ん中より少し後ろのあたりへ。
ムカデも色々スキルを持っているだろうが、俺と同じく頭の武器が多いのだろう。
《蜘蛛糸》《蜘蛛巣》《操糸》
ムカデが頭を、右後方にいる俺の方に持ってこようとしていたのが、見て取れた。
しかし頭はこちらへとは来ない。頭が相棒の《蜘蛛巣》で逆方向へと引っ張られている。
《突貫LV2》《噛み千切るLV7》
ガツン。
足の数本を食い千切って、頭突きをしたような形になった。
ゴブリンや狼たち相手なら、噛み千切った勢いのまま通り過ぎることができたが、ムカデの甲殻はさすがに硬いし身体も厚い。
そもそも俺の牙の形状として、この技は向いていない。牙が折れたりしなかっただけ、御の字だ。
《粘着耐性》か力づくなのか、ムカデは相棒の《蜘蛛糸》をすぐに逃れた。
俺に噛みつこうと、尾を移動させながら頭を俺へと急接近させる。
《毒牙》
俺はすぐに離れたが、頭はこちらへ来なかった。
相棒の《毒牙》に苦しみ、悶えている。
「相棒! お前と同じや! 背中は甲殻で硬いけど、腹の下は攻撃が通るで!」
身を捩るムカデの腹から相棒の声が聞こえる。
《毒牙》
相棒はもう一撃《毒牙》で噛み、カサカサとムカデの背の上に這い出した。
ぴょい、と飛び降りる。
ムカデはわしゃわしゃと無数の足を動かしながら、腹這いになった。
「そうだろ? お前の本来の姿勢はそれのはずだ。何故頭をもたげて弱点を晒していた? 俺を意識でもしていたか?」
もしかしたら《念話》持ちで、俺たちの会話も聞こえているのかもしれない。
そう思って挑発してみた。
キッシィィィイイ、とどこからか鳴き声ともつかない音を出す。
「お? 怒った怒った」
「アホかぁぁあ! 怒らせてどないすんねん!!」
まぁ怒ったら毒が早く回るかなっていう浅い考えと、悪戯心だ。
《突貫LV2》《噛み砕くLV8》《毒牙LV7》
ムカデはまた、少し身を捩る。相棒よりも怯み方が少ないのが気になる。
おそらく、相棒の毒の方が俺より強いんだろう。
ちょっち悔しい。すぐさま牙を離し、足を数本食い千切って離れる。ここも相棒頼り。
《蜘蛛糸》《蜘蛛巣》《操糸》
ムカデはまた俺に噛みつこうとするが、糸で自由を奪われている。
《薙ぎ払う》
「うお!」
俺の唯一の尾での攻撃を相手がしてきた。ぴょんと跳んで避ける。やっぱ認めたくないけど、こいつは俺と似ている部分がある。
一部だけな? 蛇はカッコいい。ムカデはキモい。そこ忘れんなよ?
長縄跳びのようにやり過ごして、即反転。
《突貫LV2》《噛み砕くLV8》《毒牙LV7》
ムカデはまた、何か動きを取ろうとする。
《蜘蛛糸》《蜘蛛巣》《操糸》
頼れる相棒が、それをさせない。
今度は少し頭の近くに、
《突貫LV2》《噛み砕くLV8》《毒牙LV7》
をかまして、相棒の近くにいく。アイコンタクトで伝える。
ジリ貧はよくない。一気にカタを付ける。