合体
「ここどこ?」
「知らんわ」
とりあえず恐ろしい夜をやり過ごし、夜明けを迎えたのだが。相棒の機嫌が悪いです。
俺は蜘蛛を見ているのだが、蜘蛛は俺に背を向けている。
まぁ巻きついたまま、さんざんこき使ったからだろう。先に裏切った方が悪いのだ。
「とりあえず南――朝日の右に行こうぜ。どんな魔物いるかわかんねぇし」
「勝手に行けや」
「こっちが朝日の左だった場合、強い魔物いっぱいいんだろ? 一緒に行った方がいいって」
蜘蛛はため息をついて、ようやくこちらを振り向く。
「……しゃあないなぁ」
カリカリと右前の脚で頭をかく。器用だな、なんて思う。
―魔性の蛇は、タラント《幼生》とパーティを結成した―
正直ホッとする。強い魔物も多いだろう。見知らぬ攻撃方法を一人でかいくぐるのは難しい。
「戦う時以外は、俺の背に乗って寝てていい。正直昨夜は、お前の貢献度がかなりデカかった」
「ま、そこまで譲歩するならえぇわ。快く乗ったろ」
言うが早いか、ぴょいと俺の背に乗る。
「あぁ、一応起きてる間でいいから警戒のために後ろ向いててくれ」
「お? あぁ。でも俺すぐ寝るつもりやで?」
「起きてる時だけでいい。あと振り落とされないように、爪全部俺に突き立て続けてくれ」
「ドM?」
「違うわ。修行だ」
時間を無駄にはしたくない。《粘着耐性》なんてものがあるなら、痛みの耐性や爪への耐性を磨けるはずだ。
「まぁええわ。知らんけど」
言って蜘蛛は、八本の脚をちょこちょこと動かし、後ろを向いた。
それから爪を立て、カチカチと音を鳴らす。
「アカンわ。お前の鱗には、俺の爪立たへん」
「腹でいいよ。お前、昨日の夜ずっと俺の腹に爪立ててたんだぜ?」
「……まさか、その時にM性に目覚めたん?」
「違うっつってんだろ食うぞ」
労力としては蜘蛛にかなり頼ったが、苦痛は俺の方が大きかったのだ。
「いやそもそも、お前が大人しく置いてかれてればよかったやん」
はぁ、とため息を吐いて俺の腹に爪を突き立てる。
合体完了。
くっ。やはり多少のダメージはある。しかし、動きが鈍るほどではない。
「じゃ、起きてる間は後ろの警戒よろしく」
「へーへー、起きてる間だけやで?」
舌をチョロチョロ出し《第三の目》でも改めて周囲を警戒する。
チロチロ。
チョロチョロ。
よし。
「じゃ、南に向かって行くぞ」
言って、蛇行を始める。
「ちょ、ちょ、ちょー!」
蜘蛛が騒ぎ出す。
「何だよ?」
俺は蛇行しながら応える。
「こんな左右に揺れてちゃ眠られへんわ!」
それは知らん。というか、最初から寝させる気などさらさらない。
「じゃ起きてろ」
「この蛇ヤロー……」
蜘蛛は気づいているか知らないが、木の根の下穴が向いていた方向は、夕日に向かって右側だった。
つまり俺たちは、昨日の晩からかなり北に移動しているのだ。
魔物が強くなるという方位へと。
基本平日は19時更新、土日は7時と19時の2回更新です。
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