脱出
プッシュゥゥウ。
蜘蛛が糸をムカデに向けて吐き出す。
《身体操作》《瞬発LV2》《突進LV3》
蜘蛛糸で怯んだのを横目に、空に向かって飛んだ。
飛び込んだ少し先には、何もいないことは確認している。だが、その後は出たとこ勝負だ。目立ってしまうだろうが、逃げ切れるところまで逃げるしかない。
幸い、ムカデの向こうに見えた空は、白み出していた。夜明けはそう遠くない。
ガリュ。
激痛が尾に走った。
《第三の目》で後ろを見ずに見やると、どうやらギリギリで噛みつかれたらしい。
――ッ! 殺、してやる。そう思った時、カチリと音がする。
――復讐対象が決定されました――
鱗を何枚も剥がされ、跳ぶ速度を落とされた。
我に返る。
今は逃げることを優先しなければならない。
進行方向には木がないが、着地先には狼の群れがいた。ここには着地したくない。
『おい蜘蛛! 振り落とされてないか!?』
『大丈夫や!』
がっちりと、八本の脚で俺の胴を掴んでいた。
『着地したくない! 蜘蛛糸を木の枝に付けてくれ!』
『! 任しとき!』
《蜘蛛糸》《躁糸》
蜘蛛糸が木に付着する、ブランコのようにわずかに下がり、わずかに上がる。
『糸を切って、前の方にある木の枝にまた糸をつけてくれ!』
『了解や!』
糸が前の方に飛ぶ。
《蜘蛛糸》《躁糸》
夜明けは近い。これを繰り返していけば、ここから離れていけるだろう。
ふと、胴を掴んでいる蜘蛛の脚が緩むのを感じる。ぼそりと、蜘蛛の声がする。
蜘蛛は俺の胴から脚を離した。
『堪忍な! こんな目立つより、俺だけの方が、確実に逃げ切れるわ!』
《巻きつきLV3》
逃がさない。蜘蛛に巻きついた。
『なっ!』
『ツレねぇこと言うなよ、相棒。さ、次の枝だぜ?』
《蜘蛛糸》《躁糸》
『くっそ! お前、俺のこと信用してへんかったな?』
『お互い様だろ? 俺らが仲良くなれたのは、お互いが生き汚かったからだろ』
《蜘蛛糸》《躁糸》
『あーもう。めんどいヤツと関わってもうたわ。嫌いやわー』
『俺もお前のエセ関西弁が嫌いだよ』
『ははは』
『くくく』
《蜘蛛糸》《躁糸》
ブランコの乗り継ぎが続いてゆく。
光は強くなり、地上では確実に魔物が減っている。朝が近い。
―復讐期間まで、あと48時間です―
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