《スライム》
それから、蛇と戦い続けた。
命の危険を感じたのは、最初の蛇だけだった。
俺にとって未知の攻撃だった《巻きつき》が、戦慄するものだったように《三角蹴り》は物凄く効果的だった。
ほとんどをこれで勝ったようなものだ。
一匹、しっぽを叩きつけてきた相手がいたが、威力は小さかった。それに構わず噛みついて、勝負が着いた。
しかし食ったことで、経験値とスキルは獲得できた。
《突進LV2》、《噛みつきLV3》と《巻きつきLV2》は、それぞれレベルが上がって《突進LV3》《噛みつきLV4》と《巻きつきLV4》に上がった。
毎回噛みついて即巻きつくようにしていたのと、食った蛇のどれもが3つのスキルを持っていたことにもよるだろう。
レベルアップして獲得した《毒牙》が、捕食して得たスキルで《毒牙LV1》になった。
《瞬発LV1》と《威嚇》も《瞬発LV2》《威嚇LV1》になった。それから第三の目と仮称していたピット器官だが、スキル《第三の目》として、本当に開眼した。
さすがに小魔鼠とは経験値も体積も違って、数匹狩るだけでレベルは2も上がったし、食って身体もかなり大きくなった。
「……ここがギリギリだろうな」
気づけば体長は体感で1.8メートルくらいになっている。
身長180センチと考えれば、もう成人男性くらいの大きさだ。
今夜も眠るのは木の根になる。余程の大木でなければ、これ以上大きくなるのはマズい。
今日は一日中蛇と戦って終わった。真新しい戦闘方法は期待より身につけられなかったが、陽も傾きかけている。
蛇を探しながら、今夜の寝床は見つけていた。大木の根の下で、誰かが穴を掘っている場所があった。そこに入って、丸まってやり過ごすつもりだった。
そういえば、一つ謎が解けた。
雨も降っていないのに、点在していた水たまりの件だ。
移動を速足で這っていると、少し範囲が広がった《第三の目LV1》に《?》が映るようになった。その謎の魔物は、すぐに俺の察知範囲から外れていった。
それを追いかけていくと、すぐに見つけた。
ぷる。
ぷるぷる。
ぷる。
「おぉ、スライムか」
透明な液体が浮き上がり、ぷるぷると震えていた。
がぶり。
《突進》+《噛みつき》で、即食う。食感はなく、水を飲んだようだった。
当たり所が良かったのか、即死だった。芯を食ったというか、核を食った攻撃だったのかもしれない。
スライムを殺すと、死体は水となって地上に落ちて水たまりとなった。
今まで俺が水浴びしていたのは、スライムの亡骸だったようだ。
それから見つける度にスライムを殺していき《察知LV2》《体液操作LV2》《念話LV2》を獲得した。
「しかし、弱いなこいつら」
まぁご都合主義のように、弱い魔物から順に出てくるわけでもないだろうし、スライムといえば雑魚の代名詞ではあるが、いかにも弱かった。
これまで見つけられなかったのが不思議なくらいだったのだが、スキルから何となく想像がついた。
つまりはスライムは、察知能力が高かった上に、念話でコミュニケーションを取っていたのだろう。移動速度自体は遅い。
だから今までの、ゆっくりした蛇行ではスライムが俺を察知し、念話で仲間に知らせながら逃げていたのだ。
《察知》は持っているスキルとかぶるが有効そうだ。
《念話》も会話の機会があれば必要になってくるだろう。
なかなか生態っていうのも面白い。
そんなことを考えていると、罠にかかった。