《巻きつき》
もう牙は食い込んでこなかった。
……運が良かったとしか言えない。俺の浅い《噛みつき》で絶命するほど、相手の体力は少なくなっていた。
てれれってってってー!
レベルが上がった!
各基礎能力が向上した!
《噛みつきLV1》が《噛みつきLV2》に上がった!
スキル《巻きつき》を獲得した!
遅いよ、と、誰にともなく文句を言う。
《巻きつき》を認識していれば、命の危険を感じることもなかったのだ。
「怖かったー!」
ずいぶん独り言が多くなっている気がするが、気にしない。本当に怖かった。
能力は拮抗していただろう。《巻きつき》を持っていたから、あちらの方がレベルとしては高かったのかもしれない。
そういえば、蛇が噛みついて即巻きついている動画が、知識としてある気がする。ちゃんと気づいていればよかった。それこそ遅いよ。
結果としては《三角蹴り》を持っていた俺の、スキルとプラン勝ちと言えるだろう。普通に噛み合って巻きつかれていたら、俺の負けだった。
《巻きつき》から、俺の牙を外してくるとは予想もできなかったし《巻きつき》にもテクニックが要るのだろう。俺もあれを習得すべきだ。
命を失った蛇の牙を、身を捩って外しながら反省を終える。さてさて。
「……いただきます」
頭からいただく。
自分と同サイズのものをいただくのは初めてで、飲み込めるか不安だった。結局、時間はかかったが呑みこめた。
自分より大きくても呑み込むらしいしね。
しかし、身体は今までにないほど重かった。
雨も降っていないのに点在する水たまりを探して、重い体でずるずると蛇行する。
腹の力を入れて、ネズミのアバラよろしく折ろうとしているが、なかなか手ごたえがない。骨の形状もあるのだろう。なんか肉を胃で揉んでる気になってくる。
警戒のために第三の目で周囲を感じ、舌も出す。
チロ。
チロチロ。
チロリチロ。
よし。
水たまりを見つけた。
ちゃぷちゃぷと、恒例の水浴びをする。体は大きくなったが、まだ浸かれる程度には水たまりは深かった。
勝利の美酒とまで言えないが、水は今日も美味い。
チョロチョロ。
チョロチョロ。
「ぷはぁ」
さすがに満腹だが、水は別腹。
チョロチョロ。
チョロチョロ。
腹の蛇のせいで体が膨らんでいるからだろう。脱皮は水でふやかすと、勝手に裂けた。毎回ちょっと窮屈なのが厭である。
脱皮を終えて爽☆快☆感☆を味わった後。腹の蛇を消化するのと、夜はまた眠れないかもしれないので、木の根で少し眠ることにした。
満腹になると眠くなるのは、人間と同じらしい。
涼やかで静謐な森の緑の中で、眠りに落ちる。




