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蛇に転生しました。勇者か魔王になろうと思います。  作者: 松明ノ音
【駆け出し編】少年は冒険者になった。
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大神官ゴデラ・カルナ




 神殿は大きくも、華美な感じはしなかった。


「お待ちしておりました。《勇者》ヒジカ・トージス様、ご一行様」


 中に入ると、想像していたよりも丁重に迎えられた。警戒を怠ってはいなかった分、拍子抜けした感じはした。


 案内役の男だけでなく、中にいる者達の服は統一されていた。白地に、金のラインが胸の前面、袖口に入っている。神職のイメージらしい色だが、白はところどころ汚れが目立ち、金色は薄れている。


 人も少ない。


「思ったより、豪華な感じはしないんですね」


 神殿内を歩いていると、王城に比べればむしろ質素な印象さえ受けた。建設当初は豪奢な作りだったのだろうが、手入れにあまり資金をかけていないようだ。


 掃除は丁寧になされているようだが、老朽化した建物や設備を金をかけずに何とかしました、という印象を受ける。


「教会に比べれば、儲かる仕組みを取っておりません」


 先を行く案内役に聞こえていたらしい。イッサがソージの頭を叩く音が聞こえた。




 案内された応接室も、豪奢な印象は全くなかった。歴史を感じるような祭祀の道具が置いてある高価な物なのだろうが、華やかさは感じない。


 そこに立つ男も、清貧という言葉が似合った。ただ、窓から差す光によるものか。僕よりも小さい腰の曲がった老人には冒しがたいような雰囲気が出ていた。


「よくいらっしゃいました」


 一瞬性別を疑うほど高い、透き通るような声だった。


 着席を促されたソファは、古い割には座り心地がよかった。イッサは座りきれないので立っている。ハジメは自分は今回関係ないとでも言いたげに、窓の近くから外を見ている。


 結果、僕とソージだけが椅子に座った神官と向かい合って座った。


「はじめまして。私はソン=サックの大神官を務めております、ゴデラ・カルナと申します」


 僕達三人がそれぞれ名乗ると、ゴデラは深く肯いた。表情は読めない。


 読めないまま、口を開く。


「浅学にして、タマソン村という場所を存じ上げませんでした。コウシ郡の、西の方でしたか」


「……あぁ、俺達の村周辺には教会なんざ無かったしな。西の果てだよ。そこから王城へ来た」


 イッサが口を開いた。その言葉にも、大神官は深く肯いた。


「あなた方は王城に来るまでに、イチルという女性に会いましたか?」


「……っ! 何でその名前を知っているのです!?」


 ソージが驚いて立ち上がる。出てくる可能性は、あると思っていた。左手を上げてソージを座らせた。


「立派な女性でした。あの死に様――、いえ、生き様ですね。あれほど尊敬できる人は、僕はあの《聖女》以外には一人しか知りません」


 小さな大神官は、また深く肯いた。表情は悲痛というか、今にも泣きだしそうだった。


 そうですか、と小さく消え入りそうな声で応える。


「神殿の、関係者だったのか?」


 イッサが、自分まで悲しそうな声で問う。


 小さな背を丸めて、頷きも首を振りもしなかった。迷うような間の後に、ぽつりと言葉が出る。


「娘でした。血の繋がらない、義理の娘ですが」


 僕も、少なからず衝撃を受けた。何と言葉をかけていいか、わからないほどに。


「立派に、育てられました。生きていれば、民の悲しみを減らし、笑顔を増やす偉大な《聖女》になっていたでしょう」


 やっと、それだけ言えた。大神官も同じほどの間を空け、なんとかという風に口を開き、説明した。


「……私が育てたわけでは、ありません」


 僕やヒジカの《勇者適正》は、先天的な物だ。生まれた時から持っていたが、稀に後天的に《勇者適正》が身に付くこともあるらしい。それは、ごく稀に環境や経験がそうさせることもある、という程度だ。100年に一人も現れない。条件も分かるはずもない。


 しかし《聖人》や《聖女》は、後天的にしか与えられない。適性もない。条件もわからない。勇者ほど稀ではないが、比べられる程度には珍しい存在だ。


 貧しい者に、多く出るそうだ。


「親から受け継いだ生まれは、変えられるものではありません。しかし『蛇が龍を生む』ことはあり、能力においては高い物を持った者も生まれてくるのですよ。しかもその者は、聡明な目で見つめてきた貧しさの分だけ心の細やかに育った者が」


 あの《聖女》は、そういう者だったらしい。15歳の時に受けた《鑑定》で《聖女》と出て、大神官の養女になったのだという。


「迎え入れに行った時は、驚きでした。栄養不足で身長は低く、骨と皮しかないような、若くして枯れ枝のようになった腕でした」


 その腕で、食える雑草をむしっていたのだという。囲う子どもたちに、私は離れるから、あなた達は自分で覚えなければならないのよ、と。


「……俺達が見た時とは、ずいぶん違うんだな」


 イッサが言う。同感だが、本質としては同じなのだろう。


「より良く生きて、ほしかったんでしょうね」


 ソージが言う。最期を見たのは、ソージだった。


「教えて、いただけませんか。イチルが、あの娘がどのように逝ったか」


 僕はソージを見て、促した。




 プロット的なもの程度でしかないですが、週一では投稿していきますね。お目汚し失礼します。

 仕事の帰りが遅くなっていたり、書き直し前提で書くモチベを保てなかったりで離れていましたが、何とかやっていきます。

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