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蛇に転生しました。勇者か魔王になろうと思います。  作者: 松明ノ音
【駆け出し編】少年は冒険者になった。
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銀髪眼鏡碧眼真面目巨乳M受付嬢ヒナ




 城門から王都を出た二人を見送ると、また僕だけ都に入った。交代したらしい門番と目が合ったので微笑んだが、目を逸らしてきたのでそいつも一回殴った。


「さて、僕は僕で、ヤることヤらなきゃね」


 両手を上げて伸びをしながら、また都の内を歩く。


 ギルトのパーティランク上げを任せるのは、二人のレベル上げも兼ねている。だからといって、僕が何もしなくていいというわけにはならない。


「まずは……、国の把握かな」


 この世界のことは、王都まで旅をする中で少しは知ることができた。亜人の差別されっぷりは予想以上だったけれど、他は大体想定内。


 時代は中世で、科学技術などは未発達だ。草原や荒野に囲まれ、西洋風の城や街、村が点在する。すべて、どこかファンタジックだ。


 魔物は人族も亜人族も関係なく襲う。これも予想はついていた。栄養価も高くて経験値やスキルの熟練度ももらいやすい。それは、当然食うだろう。元々魔物の僕にはよくわかる。


「オイ、勇者様よぅ」


 右後ろから、ニヤついたような声の男から肩を掴まれた。人型になっても、舌で周囲は把握できる。


 右肘から上げて手首のスナップで、声の位置に拳を振った。


 ごげ、という変な声で鳴いた。



    スキル《裏拳LV1》を獲得した!



 お、スキル出た。


「スキルも増やしたいんだよねぇ」


 あまり戦っていないから、人型の闘い方が少ない。参考にしたい気もあるが、ケンカを売って来る弱いヤツらからではスキルを得られない。下手に人を《丸呑み》するわけにもいかない。


 かといって、強い人に戦いを挑む気はあんまりしない。森で生まれた時と同じように、今は臆病なほど注意深く生きるべきだ。


 テイ・ホといったか、ハゲの大将軍はもとより、軍部の中に数人格上らしき雰囲気の人間はいた。あまり好き勝手にやって国を敵に回せば、彼らが僕を殺しに来るだろう。


 僕一人が逃げるだけなら出来そうだが、イッサとソージは逃がせるか分からない。それに、勇者として国から得られるものは出来るだけ手に入れるべきだ。



 どうするか迷ったが、結局僕は冒険者ギルドの扉を叩いた。


「見た? あの褐色のかわいい顔! それでいてあの強さと容赦の無さ! 最高かよぉぉぉぉおお!」


「えぇ。冒険者ギルドのムサい男ばっかり見てた私たちには、良い目の保養だわぁ。いいわよねヒナは、一番近くで見れて、話せたんだから」


「……最高だったわ。あんな子にいじめられたい」


 中では、キャーキャーと叫び声が上がっていた。


 入り口まで、さっきのヒナ嬢を含めた女性職員たちの不穏な声が聞こえてきた。


 僕に気づくと、驚いた顔をしてそそくさと解散していった。


「あ、あら? また来たの?」


 銀髪生真面目眼鏡巨乳受付嬢ヒナは、困惑と小さな喜びの表情。よく見ると碧眼の瞳も美しい。銀髪生真面目眼鏡碧眼巨乳受付嬢ヒナ、だ。


「はい! ちょっとお姉さんに訊きたいことがあってぇ」


 笑顔で応えて、受付の机にまた肘と体重をかける。椅子に座っているヒナと、顔が近くなる。


「えぇ。何かしら?」


「えっとね、僕田舎から出て来た子どもだから、国とか世界のこととか、色々教えてほしいんだ!」


 僕が何人かの冒険者は再起不能にした上、日中になって、冒険者たちの多くはすでにクエストを受けて出て行っていたようだ。暇だったらしい受付嬢は快く、承諾してくれた。


「まずは、何から知りたいの?」


「うーん。まずは国のことかなぁ」 


 そうねと前置いて、ヒナは話し始める。どうやら世界には三つの国があるらしい。


 我らがソン・ケイン王が治める、南東の国ソン=サック。


 コーメー・ショカ宰相が治める、南西の天険の地ルビ。


 シカン・ソウ王率いる、北の大国ソウブル。


 その三国にまたがって《魔の大森林》が広がっているという。森林はソン=サックの三分の一ほどの大きさであり、その中心には誰も行ったことがない。


「……へぇー、そう、なんだぁ」


 相槌を打ちながら、似た知識が頭に思い浮かぶ。


 孫権が治めた、孫策が開いた呉。


 諸葛良孔明が治めた、劉備が継いだ蜀漢。


 ソウ×2(ダブル)曹操を継いだ、曹丕子桓の魏。


 ……これ三国志だよね? 例によって前世は教養の無い人間だったようで、それ以上の知識は出てこない。魏――ソウダブが一番強いんだっけ?


「あら、そのあたりは知ってるのね? 大きな声では言えないけどー、正直、ソウダブの一強状態ね。ルビが攻められたらソン=サックがソウダブを攻める。ソン=サックが攻められたらルビが攻める。そういう協定にしなければ、ルビもソン=サックも存続できない状況よ」


 大国であるソウダブが、二面作戦をせざるを得ない状況にする約束があるという。逆に言えば、片方の国が潰されればあとは容易に潰されるほど、力に差があるということだ。


「そっかぁ。じゃあ僕が頑張ってソン=サックを強くしないとね!」


 笑顔を向けると、ヒナは細めている目を少し開いた。



    《あざといLV2》が《あざといLV3》に上がった!



 天の声うるさい。まぁそれよりも、今は状況の把握だ。


「戦力的に、ソウダブが強いってことなの?」 


「そうね。それよりも根本的な問題として、ソン=サックもルビも、使える領土がソウダブに比べて少ないの」


「そうなんだ。領土の広さが違うの?」


「えぇ……。広さもあるけど、それよりもそれぞれの領土の特徴ね」


「特徴?」


「えぇ。正直、ルビの広い国土には山が多いわ。だから人口は少ないし、発展もしていないの。亜人は――多いわね」


「なるほどね。ソン=サックはどうなの? 亜人の件も含めて、何か問題があるの?」


 予想通りというか、ヒナはあごに手を当てて言葉を考えた。どうやらこの国の特徴というか問題は、亜人に関するものらしい。


「……ソン=サックは、国の南方に問題があるわね。亜人と魔物が、地域を住み分けながら暮らしているの」





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