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蛇に転生しました。勇者か魔王になろうと思います。  作者: 松明ノ音
【野性編】■■■は魔性の蛇になった。
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身重




「重い……」


 体が重かった。かわいいネズミを殺してしまって気が滅入っているわけではない。前世から冷たい人間だったのか、蛇に転生して冷徹になったのかは知らないが、感傷に浸るのは数秒で終わった。


 腹が物理的に重いのである。


「まぁ、自分より質量重いヤツを入れてるしな」


 物理的に仕方ないことだが、移動するのも億劫だった。


 そもそも、消化し切れていないままの移動自体が悪手だろうと思いなおし、木の根を探して鎮座した。


「そういや、蛇って小食のイメージあるなぁ」


 何日も何週間も食わないのは、おかしいことではないという知識がある気がする。しかし、通常の蛇として生きていいものか。


 出来る限り早く成長したい。しかし、その成長の仕方が把握できない。レベルがあるからには、経験値を積めば強くなるのだろうが、大きくなるにはエネルギーが必要だろうし食わなければならない。


 レベルが上がれば勝手に大きくなるかもしれないが、食わずに殺し続けるのもいかがなものかと思う。


 どうしようもないことなので、反省すべきか迷うが、腹の中のネズミを狩った時にはまるで周囲を気にしていなかった。


 世界には俺とこのネズミしかいなかったのである。スキル《驚異の集中力》の恩恵であるかもしれないが、おそらく鳥か何かに襲われれば一撃で死ぬリスクを持つ俺には、弊害でもある気がした。


 木の実を食っているところを狙いたいと考えたが、ネズミを食っている俺を狙いたい者がいるのは、当然だろう。


 運良く近くにいい感じの木の根があったからよかった。頭を地面の柔らかい部分で左右に振って少し掘り、身を隠している。ここなら《解析》と『第三の目』で警戒していれば、急襲は避けられる気がした。


 消化中で動きが鈍い今、襲われればひとたまりもない。


 蛇が小食である理由は、狩ることは隙を見せることだからかもしれない。


 身重の危機感はあれど、それでも胃に物が満ちていることには幸福を感じる。少なくとも近々に餓死することはないという安心感だろうか。


 ちょっと消化を早められないかと思って、胃があるあたりに力を入れてみた。


 パキパキと、胃の中のネズミの骨が折れるのを感じる。


 おぉ。これでちょっとは消化を早められるかもしれない。身重の状況を早く脱することが出来るなら、いいことだろう。


 ほ。


 ほ。


 おりゃ。


 繰り返す内に、骨の音がしなくなった。肋骨とかはバラバラに砕けたのだろう。自分の腹を見てみると、膨らんでいるがかなりスリムになった。肉もある程度溶けてそうである。


 ……うわ、グロい想像しちゃった。


 蛇として楽な体勢を探すうちに、とぐろを巻く姿勢が楽だと気が付いた。何かあった時も瞬発的に動きやすそうだ。


 しばらく周囲を警戒しながら休んでいると、あ消化終わったわ、という感覚があった。



    スキル《消化能力LV1》を獲得した!



 消化もスキル扱いらしい。



    《消化能力LV1》はスキル《焦土の吸収力》により、

    《消化吸収能力LV1》に変化した!



 お、何か変わったわ。



    《消化吸収能力LV1》により『小魔鼠』の《瞬発LV1》を獲得した!



 ほうほう。どうやら、消化することで相手の能力が手に入るスキルらしい。スキルだけでなく、心なしか体が敏捷性を増した感覚がある。自分に《解析》を使い、ステータスを確認してみた。



  《??? ♂》

   ステータス

    LV 1

     激弱


   状態

    生まれたて



 腹立つなこいつ。レベル1になったのは、生まれた時だろうか。


 数値化されていれば比較もできるだろうが『激弱』と『激弱』では比較のしようもない。《解析LV1》なので、レベルが上がると詳細もわかるようになるのかもしれない。


 まぁ常に警戒はしていくつもりだし、勝手に上がっていくだろう。


 しかし予想はしていたが、ネズミはモンスターだったらしい。名前は小魔鼠。多分っていうか、確実に俺もモンスターなんだろう。名前は知らん。消化が終われば名前もわかるようなので、自分と同種の蛇を食えばわかるだろう。


 自分自身の情報が、かなり不足している。小さい魔鼠より細いから、サイズ的には小さいんだろうけど、それも今やっと確認できた。ぶっちゃけ、視力は人間としての色覚の知識にもかなり劣るから、俺今、自分の色もわかんないんだよね。


 さて、消化も終わったことだし、食う度に強くなれることがわかった。


 幸先良くはぢめての狩りも成功したことだし、もう少し狩りを続けてみよう。


 俺は第三の目と《解析》を使い、舌をチョロチョロと出しながら木の根から出た。




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