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第28話 「ボーナスステージ」

2020/4/1

タイトル改訂。





「ゾンビかー……。その発想はなかったわー……」


 ブランはリスポーンしながらうなだれた。

 しかし確かに、スケルトンとかいう骨格標本が居るくらいなのだから、ゾンビがいても別に何もおかしくはない。

 むしろどちらかといえばスケルトンよりゾンビの方が肉の分だけまだ人間に近いとも言える。腐っているが。


「すでに死んでるのでは?って意味ではわたしのお仲間っちゃーお仲間と言えなくもない……ような……いや無理かな。

 まぁ前向きに行こう! 仲間じゃないなら焼いてもいいよね!」


 ブランは今度こそ、これまでを教訓に油断しないことを心に誓い、歩き出した。


 洞窟から石壁へと切り替わる境界線のところに、先程の、かどうかは不明だがゾンビが一体佇んでいた。

 一瞬ビクリとしたが、教訓が生きたか過度に動揺はせず、取り敢えず『フレアアロー』を放った。


 腐敗によって可燃性のガスでも出ているのかは不明だが、ゾンビはよく燃えた。アリよりも圧倒的に体積は大きいはずだが、燃え尽きるまでにかかる時間は大差なかった。


「魔法ほんと強いな……。てか『フレアアロー』が特別強いのか魔法が強いのかこれじゃわかんないな。あ、わたしINT上げてたんだった。わたしの魔法だから強いという可能性もあるな……」


 検証のため、出来れば『フレアアロー』以外の魔法も使ってみたいところだ。

 しかし『フレアアロー』で確殺出来ている現状、あえて他の魔法をわざわざ使う必要もない。一撃で殺せなかったらまた何かしらのトラウマを刻むことになるだろうし、MPも余計に消費してしまう。『フレアアロー』が結果を出しているのなら『フレアアロー』でいい。

 兵器において何より重要なのは信頼性なのだ。


 地面にはドロップアイテム──とは言っても焼け残ったゾンビの下半身がなんの役に立つのか全く見当もつかない──が落ちている。

 一応戦利品にはなるが、出来るだけ触りたくないということもあり、放っておくことにした。


 しかし。


「うわぁ! また来た!」


 もう一体のゾンビが現れ、焼け残ったゾンビの下半身に食らいついた。

 新たなゾンビは、人型の生物が行なう食事としては違和感しかないというほどのスピードでブランの戦利品を貪り食っていく。


「結局トラウマ植え付けるのかよお……」


 こんな事なら拾っておけばよかった、と顔を青くしながら、その隙だらけの頭部に『フレアアロー』を放つ。

 

「まぁ青ざめるったって顔色は白一色なんですけどね」


 するとその音に反応してか、あるいは死体が焼ける匂いにつられてか、次々とゾンビがやってきた。


「こういう映画あったよ昔! ええと、『サンダーボルト』!」


 輝く雷光がブランの手に集まり、一瞬の後にはゾンビに突き刺さっていた。同時にゾンビは全身が一瞬だけ稲光に包まれ、黒焦げになって倒れ伏す。

 どうやら『サンダーボルト』でも一撃で倒せるようだ。


「『アイスバレット』! 『ウォーターシュート』! 『エアカッター』!」


 続けざまに魔法を放ち、ゾンビを片付けていく。ブランのINTの高さならば、このゾンビたちはどの魔法でも関係なく一撃で倒せた。違いは死体の形状のみだ。


「いや、ゾンビだし最初から死体か……?」


 少なくともブランの目には、ブランが倒したゾンビと立って歩いているゾンビの区別はつかない。

 しかし、なぜゾンビたちは倒されたゾンビにしか群がらないのだろうか。立っていようと倒れていようと死体に変わりはないのでは。


「うーん。そういうゲームってことなのかなぁ。てか、数多いな! まだ来るのかよ!」


 すでに攻撃魔法は5連打してしまったため、少し待たなければ攻撃できない。最初に撃った『フレアアロー』など、撃てるようになるまでまだ20秒ほどかかる。

 一旦下がり、なるべくリキャストタイムを稼ぎながら1体ずつ倒していくしかないだろう。

 幸い背後の洞窟はさほど広くはない。無軌道な歩き方をするゾンビたちなら、2体並んで攻撃をしてくるようなことはあるまい。


 ブランは死体に群がるゾンビたちから目を離さないようにしながら少しずつ後ずさった。

 いかにゾンビが多いとはいえ、ブランの手によりただの死体も増えている。食事が終わるまでまだ少しはかかりそうだ。


「……んー、とりあえず『エアカッター』」


 更に1体、死体を生産した。

 攻撃したブランには目もくれず、ゾンビたちは死体を貪っている。餌が残っている限り、ブランが攻撃対象に選ばれることはなさそうである。


「お、リキャスト終わった。『フレアアロー』」


 このペースなら、リキャストタイムを待ちながら魔法を撃ち続けても問題ないように思える。

 であれば次の懸念はMPの枯渇だ。もう少し、ゆっくりとしたペースならばMPの自然回復とも釣り合ってくるだろうが、食事の風景からすればそれには流石に足りない気がする。


「アリの大群なみにやばい感あるんだけど、思いがけずまったりとした時間が流れてるな……」


 かといって寛げるかと言えば、まったくそうはならない光景なのだが。

 薄暗い洞窟で延々と仲間の死体を貪る死体の群れと、それを少し離れて眺める骸骨。

 端的に言って地獄の光景である。


「これどうしようかな……。まったりと詰んでるって感じするな……。このゲームって実はめちゃめちゃ上級者向けなのかな。わたしなんて運が良かっただけでホントだったらもっと前に詰んでた気もするし」


 今思えばアリに囲まれた時点で詰んでいた。

 リスポーン地点がシャッフルされたのも幸運だったと言えるかもしれない。


 時折思い出したかのように『フレアアロー』を撃ちながら、なにか打開策でもないかと頭を巡らせる。

 このままでは事態が好転しないのは確かなので、例え悪化する可能性があるとしてもMPの回復を優先させたほうがいいだろうか。

 MPさえあれば、最悪の場合でも悪あがきくらいは出来るだろう。

 

 そうこうしているうち、とうとう動かない死体が残りひとつになってしまった。MPは全快ではないが、戦闘ができそうな状態は維持している。

 あの死体が無くなった時、ゾンビたちはどう動くのか。

 とりあえずそれを確認してから次の行動を起こすことにした。


 死体をすべて食べきったゾンビたちが立ち上がる。

 そしてブランの方を向き、しかし。


「……あれ? こっちこないな」


 石壁と洞窟の境界線でウロウロしている。時折ブランの方を向く個体があるが、その場で足踏みし、すぐにまたウロウロし始める。


「あの遺跡みたいなとこから出られないのかな? もしかして」


 ソロリソロリとゾンビたちに近づく。ブランに気づくゾンビが増えるが、かといって行動に何か大きな変化があるわけでもない。


「あいつらやっぱこっち入ってこられないのか。え? これもしかして」


 ボーナスステージ到来である。


 ブランはMPの自然回復と釣り合うくらいのペースで、淡々とゾンビを焼き始めた。






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