表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄金の経験値【なろう版】  作者: 原純
公式認定ダンジョン
131/612

第131話 「説明しよう」

2020/4/3

タイトル改訂。





「ひさしぶり。数日も空けてしまって悪かったね。元気だった?」


「おかえり! もういいの?」


「うん。またしばらくはずっとインできるかな」


 エルンタールの領主館へ『召喚』で移動した。ターゲットにしたのはディアスだ。

 ディアスはあれからずっとエルンタールに詰めてもらっている。どういう判定基準になっているか不明だが、ディアスの『瘴気』もブラン配下のアンデッドたちに多少の効果があるようだからだ。

 またディアスは使い捨てのアンデッドを一時的に生み出すこともできる。ブランのゾンビのリスポーンが追い付かない時などに都合がいい。


「お帰りなさいませ、陛下。クーデターはうまくいったようですな」


「ただいまディアス」


 ディアスにしてみれば、精霊王を倒した反逆者たちのうちのひとつを完全に屈服させたわけだから、感慨もひとしおだろう。

 連れて行ってやりたい気持ちもあったが、目立つため断念した。また何かの拍子に怒りださないとも限らない。


「あそーだ。レアちゃん運営のメッセージ見た?」


 個人宛のメッセージのことだろう。

 やはりブランにも届いていたようだ。


「見たよ。たぶん同じ内容だったと思うけど、とりあえずOKしておいた。デメリットも大したことなさそうだしね」


「じゃーわたしも……OK、っと」


 ブランで言うと、このエルンタール、アルトリーヴァ、ヴェルデスッドが該当のフィールドになるのだろうか。


「でもこれさ、たとえば廃人?っていうのかな? そういう人たちがこのサービス使って転移してきたら困るよね。初心者向けに調整してたとしても、そういう人きたら蹂躙されちゃわない?」


 このゲームは基本的にプレイヤーを縛ることはない。

 それはレアやライラが好き放題できていることからも明らかだ。

 それなら、初心者向けとはいえ、そのコンテンツに上級者が参加することも制限しないだろう。

 メッセージにも「他プレイヤーの皆様による襲撃を運営側がサポートをする」としかなかったことからも、上位プレイヤーが襲撃してくる可能性は十分ある。


「まあそのときは、言ってはなんだが仕方がないよね。普通のPvPだよ。いつもこちらが一方的に殴れるわけではないのだし、相手の方が強ければ負けてしまうのは道理だ」


 とはいえ、その時はこちらはデスペナルティの変更があるため、公平かと言えば疑わしい。

 しかしこちらは拠点を襲撃される立場であるし、徒党を組んだプレイヤーたちに連続して狩り続けられるリスクもあると考えれば、デスペナルティの軽減でもなければ割に合わない。なにせ運営がプレイヤーをけしかけてくるのだから。


「あっそうか。運営がプレイヤーを送り込んでくるってことは、わたしたち運営に攻撃されるようなもんなんだね」


「そう。ついでにいうと、この内容だとおそらくエリア内にわたしたちのホームを設定していたとしても、容赦なく攻撃されるだろうね。それどころか、システム的にはわたしたちのマイホームというものは無くなると考えていいと思う。

 該当フィールド内のセーフティエリアがすべて外に移動するってことは、この中にはセーフティエリアはないってことだからね」


「ほわっ! 早く言ってよ! OKしちゃったよ!」


「さすがに実装前にもう一度最終確認あるとおもうよ。

 それに代わりに、この中に居さえすればデスペナルティによる経験値ロストは無いわけだし、単に休めないってだけだよ。ログアウトするときなんかは、わたしの城とかにでも来るとか、それこそ伯爵さんの城で眠ったらいい。ライラのところでもいいけど。それを考えると、実装前に各避難所に眷属を置いておいたほうがいいかな」


 デスペナルティの軽減はとんでもないメリットだが、休むことなくプレイヤーに狙われるというのはとんでもないデメリットでもある。

 一度殺されてしまえば、下手をしたらリスポーンポイントで出待ちされる恐れすらある。

 そういう意味では、死ぬリスクは更に上がったとも言える。


「ちなみにライラのところには、国家運営のサポートを承諾するかどうかのメールが行ってたみたい。受けるかどうかは聞いてないけど」


 あちらの詳細は聞いていないが、あちらもどうせメリットだけではないだろう。

 どちらにしても実装されてからの話だ。

 それより先ほどライラとは話を詰めなかったが、転生アイテムの販売についても気になっている。


 レアやライラ、ブランにとっては何の意味もないアイテムだ。

 自分しか使えないということは、眷属にも使用できないだろうし、自分がどの種族に転生するとしてもダウングレードにしかならない。

 しかし未だ転生を一度も行なっていないプレイヤーにとっては事情が違う。

 たとえば昨日までドワーフだった人物がいたとする。その人物が翌日エルフになって現れたとしたら、周りの人間はそれを同一人物だと認識するだろうか。

 つまりリアルマネーと引き換えに、非常に質の良い変装アイテムとして使える可能性がある。

 ただ問題もある。

 まずそのアイテムの存在を知っているプレイヤー相手にはそう何度も使えないということだ。すぐに思い当たり、看破されるだろう。

 NPC相手だとしても、あれらのアイテムはゲーム中でも入手可能とある。ということはその存在を知っているNPCも当然いるはずで、そうした者相手では同様に看破されてしまうかもしれない。


 もうひとつ、もっとまっとうな使い方でも気になることがある。

 例えばライラのようにノーブル・ヒューマンへ転生したプレイヤーが課金アイテムを使用しエルフになり、その後ハイ・エルフに転生し、さらにドワーフに転生する。そしてエルダー・ドワーフに至ったら今度は獣人へ転生し、まあ獣人の上位種族は不明だが、とにかくそのように上位種族を渡り歩いていけば、各種族の『使役』や特有のスキルなどをいくつも保有することができるかもしれない。

 レア自身も『神聖魔法』を取得している魔王という、おそらく中々に稀有な存在だと思うが、そういうビルドを意図的に作れるということだ。

 たとえば今からレアがドワーフなどに転生し、生産ビルドの精霊王を目指すということもできるだろう。


 もっとも同時に販売される予定のスキル削除アイテムなども見れば、運営が意図しているのはあくまでリビルド目的の救済措置だと思われるし、そういうアクロバティックな使い方ができるのかどうかはわからない。

 転生した瞬間、取得してあった種族特有のスキルがすべて経験値に戻ってしまってもおかしくない。

 普通に考えれば、レアがドワーフに転生したとして『翼撃』などがそのまま使えるはずがない。

 検証はしてみたいがリスクが高すぎる。


「レアちゃんこれからどうするの? イベント後の予定とか立ててた?」


「どうしようかな。プレイヤーが攻めてくるのなら待ち構えてやる必要があるだろうけど、たぶんそれは少し先の話だろうし。その転移サービスが実装されるとしたら、アンケートとかもあったしあれの集計の後とかにまとめて実装かな」


「アンケートかあ。レアちゃんなんて答えるの?」


「最後の転移サービスに関しては、さっきの運営の提案を承諾した時点で運用賛成に入れるしかないよね。課金アイテムに関しては、まあわたしが買うことはないだろうけど、賛成でいいんじゃないかな。どうせ1人2人がどっちに入れたとかなんて関係ないよ」


「民主主義の放棄だ!」


「……難しいこと言うね。まあ、そういうならちゃんと答えておくけどさ」


 良くも悪くも、イベントの前と後では大きく情勢が変わってしまった。

 本来であれば、ちょっと攻城戦のテストをし、可能なら魔物の領域として廃墟型のアンデッド地帯を作成したいとか、その程度のことだった。

 近所の街ふたつを挽き潰しておけば運営に対する面目も立つだろうし、それ以降の侵攻はただ出来そうだったからやってみただけだ。それほど深い意味などなかった。

 ある程度満足したら適当なところで切り上げて、のんびりと火山の攻略に手をつけ、できれば経験値ボーナスのあるイベント期間中に支配下に置いてしまうつもりだった。


 しかし今思えばだが、あれでよかったような気もする。

 友人もできたし、まあ、これはどうでもいいが姉と仲直りもできた。


「これからか……。とりあえず、リーベ大森林の南の方に火山地帯があるんだよ。そっちを攻略しようかな」


「ヒルス王国の他の街とかを制圧したりはしないの? まだいっぱい残ってるよ」


「してもいいんだけど……。よく考えたら、目的は6大国の壊滅なんだよね。もともとは。

 そのために全ての街を魔物の領域に飲ませてやればいいかなと思ってたけど、国家滅亡の条件が思ってたより緩いからさ。王家だけ始末すればいいなら、その方が早いし、たぶんプレイヤーなんかのヘイトも溜まりにくいんじゃないかと思って」


「そういう評判みたいなの、気にしない人かと思ってたけど」


「気にするっていうか、大陸規模で街が消えてったら、さすがに人類側プレイヤーはみんな黙ってないだろうし。それで全ての人類プレイヤーVS全ての魔物プレイヤーとかなったら面倒だしね。だったら頭だけ潰した方が穏便かなって。

 大国が6個ある状態から都市国家が無数にある状態に変わったところで、プレイヤーもたぶん街のNPCもそんなに変化ないんじゃないかな。魔物の脅威から国民を守るという国の義務というか、そういうのはあると思うけど、それだったら領主の騎士でもプレイヤーでもできるしね」


「プレイヤーが現れた時点で、国家が存在する意味が薄れつつあったってこと?」


「そういう部分もあるけど、たぶん今が時代の転換期なんじゃないかな」


「てんかんき」


 どう説明したものか。


「そうだな……。まずは大陸の貴族制度と各都市の統治について考えてみようか。

 ライラが貴族になった経緯を考えれば、各都市を治めている貴族の先祖をもともと任命したというか、産み出したのは各国の王族なんだと思う。

 国家を支えているのはそこから来ている忠誠心なんだろうけど、王族、というか中央がしたことと言えば、おそらく地方の領主を貴族にしたというだけのことだと思うんだよね。それは各都市の自治権が強いことからもわかる。

 それが地方の有力者を文字通り貴族に転生させたって意味なのか、それとも中央から派遣した貴族に挿げ替えたって意味かはわからないけど。


 この大陸の国では地方に行けばいくほど危険度が増していると言ってもいい。

 その地方の開拓を行う、または行なった者にその土地の実効支配権を与え、貴族として取り立て、そして貴族から見返りに税収を受け取る。

 そういう支配体制だったとしたら、封建制国家ということになる。中世のヨーロッパやニッポンと同じだね。

 ただこの世界では、貴族というのは種族からして違う。転生というシステムが存在し、単なる実効支配権というだけではなく、現実的な能力として『使役』などのスキルに根ざした戦力をも与えることができる。

 これによって更なる恩を売りつけられるというか、忠誠心を持たせることもできたと思うんだけど、それも長い時間の中で薄れていく。

 もともと開拓さえ自身の力で行ってきた地方領主たちだし、中央から継続的な援助があるわけでもない。税を納めているのは土地の支配権を認めてもらっているからだけど、それは本来本当に必要なことなのかと考え始める。与えられた種族としての力はすでに自分たちのものだし、しかもこれは血筋さえ守っていれば遺伝する。


 仮に開拓領主ではなく、中央から人をやって支配させたとしても同じことだよ。

 中央と地方の交通の便を考えれば、定期的に人をやるなんて無理だし、現地の支配を行うには現地にずっといるしかない。そうなれば中央は支配の全権をこの人物に委ねざるを得ない。

 やがて中央からの命令で行なっているという意識は薄れ、自分が実効支配しているわけだから、このまま支配し続けてしまえばいいと考えるようになる。

 地方の有力者がそのように考えて好き勝手し始め、中央の求心力が薄れてくると、封建制度の崩壊が始まるわけだ。

 中世ニッポンの例でいえば、そうやって戦国時代に突入していくわけだけど……。


 例えばヒルスに関しては、国がかなりの大軍を用意できたみたいだし、もっと集権的というか、中央の影響力はまだ失われていないように思える。けれど逆に今回はそれがマイナスに働いた感あるよね。

 わたしへの対策のためにその軍隊を差し向けてしまったせいで、地方への援軍を出す余力がなくなってしまった。

 このことで地方から見れば、中央からの援助がなくてもなんとか乗り切れると思えてしまうし、こんな大陸中が混乱している中で援助もしてくれない中央ならば、別になくても困らないと考えてしまう。

 襲撃にあって壊滅してしまった街もあるけど、これはほとんどわたしとブランの仕業だし、用意した大軍を全滅させてしまったのもわたしだ。言うなれば災厄を相手にしては国が全力を挙げて抵抗しても意味がなかったってことだ。国家に対する信頼度はストップ安だよ。

 実際王都陥落から2週間くらいかな? ゲーム内時間で経つんだろうけど、ヒルス国内って別に乱れたりしていないでしょう? 内乱とかで都市が崩壊したとか。

 中央がいなくなっても、ほとんどの都市に大した影響が出ていないってことは、封建社会からの転換期を迎えたってことなんじゃないかな」


 ときおりSNSでチェックしているが、どこかの領主が独立を宣言したとかいう話は出たりしているが、事実上ヒルス国内のすべての都市が独立した状態だと言えるため、意味はない。

 交易などで成り立つ都市も、変わらず周辺の街と交易を行なっているし、それは他国との商売で食っている街も同様だ。ライラの言うように関税という概念がないため、代表する国という枠組みがなくても変わらない。

 この大陸における国家とは、もはや有事の際にアーティファクトを効果的に使うという役割しかないかのように思える。


 それを考えれば、ペアレとシェイプの戦争という話も少し見え方が違ってくる。

 現代社会の国家の有りようがイメージにあるため、多くのプレイヤーは2国間の戦争というとらえ方をしているが、実際に今起こっていることと言えば、現地周辺のいくつかの街の間で小競り合いが起きているだけだ。同じ国にある街でもまったく影響が出ていないところさえある。アマテインというシェイプで活動するプレイヤーが、伝聞でしか戦争を知らないことからも明らかだ。

 獣人たちがノイシュロスの無念を晴らすとか言ったりドワーフの貴族たちが憤慨していたりするのも、愛国心というよりは単に種族の仲間意識から来ているもののようにも感じられる。


「まあこれは、あくまでわたし個人の考えだけど」


「……やっぱさあ、姉妹だよね」


「え? なにが?」


「仲直りできて良かったねってことだよ」








質問されると喜んで長々と解説してしまう人。たち。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] そんな姉妹を仲直りさせたブランちゃんマジ天使!(吸血鬼なのに天使とはいったい···w)
[一言] 生暖かい視線(・ω・ お姉ちゃんっ子だったからこじれかたも強かったんだねぇ(。。
[一言] ほんと姉妹だなぁ これ書いた作者さんすげえ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ