表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄金の経験値【なろう版】  作者: 原純
第二回公式イベント 2
103/612

第103話 「第七の災厄」

2020/4/2

タイトル改訂。





 スガルに命じ、ラコリーヌに歩兵や工兵アリを空輸するよう手配する。

 地下などを探索させ、他に忘れ物がないか確認しておくためだ。

 これでようやく、ラコリーヌに関してはクローズできるだろう。


 王都へ『術者召喚』を利用して戻り、ようやくSNSを調べた。


「災厄は把握されているだけでわたしを除いて6体か」


 主にNPCの国に伝わる伝承などから拾い上げた情報らしく、その確度はどこまで信用できるものかはわからない。この検証班のプレイヤーたちがどのレベルで裏取りなどを行ったのか定かではないが、別にそれはどうでもよい。

 レアが今確認したかったのはあくまでプレイヤーやNPC間における共通認識であって、真実ではない。


 やはりNPCが把握しているらしい災厄の数はおそらく正確ではない。


 ゲーム外の知識ではあるが、一般的に考えて大悪魔というのは大天使と対極にある存在と考えてよいだろう。

 であれば、関係としては魔王と精霊王に似ていると言える。

 真実はどうあれ、ヒルス王国首脳部が精霊王を自分たち寄りの存在だと考えていたことをみるに、精霊王は人類にとって脅威となる勢力とは判定されない可能性がある。


 ではその場合、精霊王は「特定災害生物」とやらとしてアナウンスはされるのだろうか。


「その判定──というか設定をしたのはおそらく開発だろうし、NPCがどう思っていようが関係ないだろうけど……」


 レア自身をひとつの「勢力」として考えた場合、開発の想定では「魔王勢力は人類側勢力に敵対する」とされていたと思われる。これはレアが魔王になった際にアナウンスされただろうメッセージから明らかだ。

 ならばその対極にあるであろう精霊王という存在が、人類の敵対勢力として人類側にアナウンスされるということは考えづらい。

 同様に、宰相から聞いたアーティファクトの仕様から、精霊王と大天使は本来敵対しない側の勢力であると想定されていることがうかがえる。ならば、大天使誕生の瞬間、人類側にその事実がアナウンスされない可能性がある。


 この結論はあくまで仮定に推論を重ねた思考実験的なものに過ぎないが、もしそうだとしたら。


「特定のスキル持ちにもたらされるワールドアナウンス──神託とかいうのだったかな。あれには関係なく、災厄とやらが決められているってことかな」


 神託によってもたらされる情報は優先的に災厄とし、それに加え、人類に仇なすと考えられる勢力を災厄に追加する。そういうルーチンであったならば納得できる。


「なんとかしてその、神託とかいうものが聞こえるスキルを手に入れられないものかな。もっと言えば、その魔物側バージョンがあれば、それも欲しいな。両方の勢力のお知らせが届くなら、これ以降に新たに発生するリスクについて管理が可能だ」


 この王都で手に入れられそうならば手に入れておくべきだった、と後悔する。

 しかしSNSで神託の存在を知った現在、すでに都内の大半の住民は片付けてしまっていた。

 神託とか言われているくらいであるし、おそらく宗教関係者だろう。どうでもいいと思っていたため、神殿や教会など気にも留めていなかった。

 おそらく今はアンデッドに生まれ変わっているだろうが、能力値などはどういうわけか、だいたい生前を踏襲した傾向のゾンビが生まれるのだが、スキル等は一切引き継がれない。


「しまったな……。これからはもし、宗教関係者らしき者がいれば、殺さずに支配してみなくては。どちらかのスキルが判明すれば、もう片方も考察できるだろうし」


 この国の他の都市などに神託を受けられるNPCがまだ残っているかは定かではない。もともと王都にいたプレイヤーはイベント開始後すぐに辺境の街などに移って行ってしまったようだし、ヒルス国内でNPCから災厄の話を聞いたというプレイヤーは少なかった。

 他の国では街角などでの説法ですら説かれていたということだし、自国内で発生した災害だったためヒルス国内では情報規制などが敷かれていたのかもしれない。


「他国とリアルタイムで情報のやりとりをすることができるわけではないからね。

 ……しかしこれからもそうとは限らないな。この国にはいなかったようだけど、もし騎士などになったりして、プレイヤーが国の中枢に食い込んでいるような場合があれば、その国の情報収集能力は普通とはケタ違いになる。わたしがヒルス王都を掌握したことすらこの時点ですでに知っている国家があってもおかしくないな」


 そういうプレイをしているのなら、その本人はSNSなどに書き込んだりはしないだろう。レアと同じく、ただ情報を吸い上げるだけだ。


「そういう可能性もこれからは考えていかなくては。そんな尖ったプレイをしているプレイヤーに、例のアーティファクトなど使われては、また負けてしまうことになりかねない」


 なんとなれば、SNSを利用して情報操作などをしかけてくる可能性すらある。


「この情報はふっ、フレンドと共有しておく必要があるな……。いや、でも戦闘中とかだったら迷惑になるかな。国外に出てからでいいか……。でも早い方がいいかもしれないし……」


 結局この日はフレンドチャットは送らなかった。









「ヒルス王都、それから国内有数の大都市は落とした。しばらくはじわじわと手を広げつつ、地盤を固めることに注力したほうがいいか」


 せっかくのイベント期間であるし、期間中はできるだけ侵攻を進めるという手もある。

 しかしいかに補給などを考える必要が薄いとはいえ、拡大した戦線を支えるだけの数的余裕があるとは言えない。

 すべての都市を灰燼に帰すのであればそれでもいいのかもしれないが、引き上げた後にすぐに復興されてしまったのではやる意味も薄い。


「理想的なのは、落とした街の中央に世界樹の端末を植え、アリとトレントを放ち、緑あふれる廃墟街にして、エサ用の獣や魔物なんかを養殖することなんだけれど」


 これが可能かどうか、まずは実験してみる必要がある。

 当初の計画では、とにかく王都を廃墟型の領域にしてみたいという程度のものしかなかった。

 そして想定外の事態はあったにしろ、それは達成された。

 これ以降の動向を詳細に定めるためには、新たに計画を立てる必要がある。


「まずは大目標かな。これはもちろん大陸制圧でいいか。残る5ヶ国を滅ぼすということは、必然的にそうなる。人類側プレイヤーすべてと敵対することになるけど、まあこれはブラン、ちゃんみたいな子が他にもいるだろうし、そちらと協力プレイができれば対抗できないこともないかな」


 しかしレア自身が災厄と呼ばれるレイドボスであることや、他にも公にしたくない情報などがたくさんある。利害が一致しているとはいえ、むやみに手を広げるのは危険だ。

 それに確認の必要はあるが、レア同様に人類種のアバターで開始して、人類種を狩るプレイをしているプレイヤーもいるかもしれない。協力できるかは交渉次第だが、ことさらに敵対する必要もないだろう。


「大陸制圧のための中間目標として、まずはヒルス王国全土の掌握だ。この掌握の定義についてはよく考える必要があるけど……。すべての街などの侵略とかになると、ちょっと数が多すぎるな。普通の戦争なら、首都を陥落させたんだから首脳部に降伏宣言を出させて、こちらに有利な終戦協定を飲ませて……ってするんだろうけど、交渉の余地はないからな。というか、国家元首が亡命してしまっているからな」


 精霊王の遺産とやらは、国家よりも重要なものだということなのだろう。レアに限らず、他の災厄などに対抗するために必要不可欠なものであるため、敵に奪われるわけにはいかないということだろうか。


「でもあれ天使に効きが悪いとか言っていたな。この大陸天使しか攻めてこないのになんで後生大事に持ってるんだろ。もしかして他に──」


 たとえば王族などの限られた者にしか伝わっていない脅威などがあるのだろうか。

 しかしそうだとして、何のメリットがあってそのような情報の制限を行うのだろう。


「そういう存在を王族とかだけが知っていたとしたら、精霊王を倒したのが実は自分たちだってことも王族とかだけには伝わっていそうだ。だとしたら面の皮の厚い人たちだなあ」


 これも推論に過ぎない。今考えてもわかることはない。

 いま重要なのは、この後残る国内の都市をどうすべきかである。


「まずは、アリとトレントの楽園都市が実現可能かテストしよう。それが可能なら、街をひとつずつ人類とアリ、家屋とトレントで入れ替えていけば、そのうち制圧も完了するでしょう」


 そのためにはまず解決しておかなければならない問題がひとつある。

 スガルの転生だ。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ