ペチャペッチ
別サイトエブリスタで主に活動中。こちらはどうかなと思い、投稿してみました。
短編なんで、気軽に読んでください("⌒∇⌒")
ある日、起床し欠伸をしながらリビングに行くと、お袋が言った。
「ペチャペッチ!」
????
俺は何の冗談だろうと思う。だって、そうだろ?いきなりペチャペッチって。「お袋、何だって?」俺は聞き返す。起床後すぐなので、俺が寝ぼけているかも知れない。だが、お袋はやはり言う。「ペチャペッチ!」真顔で言う。はぁっと俺は溜め息をつき、お袋を睨みつけた。「何かネタ?ならツマンネ~からやめろよな!」「ペチャペッチ、ペチャペッチ~」何処まで俺を小馬鹿にするのか。一向に止めようとしない。表情だけは、真面目そのものだが。「もういいから!」俺はキッチンテーブルの席につき、何気にTVを見る。と、直ぐに違和感を感じた。その放送局は俺の嫌いなお堅い局。決して悪ふざけはしない。「ペチャペッチ、ペチャペッチ!ペチャペッチ。」七三分けのおっさんが放送で思いきり言っている。お袋と同じ言葉を。良く見ると、中継先のアナウンサーの言葉も「ペチャペッチ。」女子アナウンサーの言葉も「ペチャペッチ。」テロップもペチャペッチ。俺は慌てた。他局にチャンネルを設定しても、誰も彼も、字すらも「ペチャペッチ」なのだ。『いきなりどうした?何が起こっている?』俺は頭に両手をあて考えた。結論なんて出る分けがない。だって「ペチャペッチ」だぞ。意味が分からない。「ペチャペッチ~」間延びしたペチャペッチでお袋が話し掛けてくる。「ああっ!もういい!何がペチャペッチだ!意味わかんねえよ!」お袋に罵声を浴びせたつもりだが、何故かお袋は顔を紅潮させ、両手を頬骨にあてた。小声で「ペチャペッチ・・」と呟き、こちらを一別するとパタパタスリッパ音を立てて、リビングから出て行く。意味も分からず取り残された俺は、食事もそこそこに大学に行く準備をした。そこで気付いたのは、教科書の文字は全てに渡り、ペチャペッチに変わっているということ。漫画ですら、吹き出しはペチャペッチ。数字は変わらない。その他がペチャペッチに変わっている。昨日まで普通だった。一体何が世界で起こっているのか。分けも分からずだが、俺は大学に行ってみることにした。
街中にはペチャペッチが溢れている。人同士の会話、印刷物の文字に至るまでだ。外国語も例外ではない。英語でいうとこうだ。pecha petuchi。もう、俺が、俺だけが異常なのかと思う。今まで使用していたカード類も名前が変わっている。コンビニで買い物をし、店員から確認がきた時なんか何も出来ない。おそらく、ストロー付けますか?スプーン付けますか的なことだと思う。が、下手にペチャペッチと答えると大変なことになりかねない。この間、うっかり適当なペチャペッチと答えたところ、若い女性コンビニ店員が泣き出した。後ろに並んでいたおばさんが俺に向かい、激しいペチャペッチ!ペチャペッチ!を浴びせてくる。 俺は相当不味いペチャペッチを言ってしまったのだろう。店内の客の視線が突き刺さるほど痛く、居たたまれなくなり、俺は買い物もせず、コンビニを後にした。このままでは、大学はおろか、買い物すらできない。しばらく大学は休学することとし、それから俺は、ペチャペッチの分析を始めた。まず、文字に関して言うならば、文字のサイズ、形に意味があった。言葉については、イントネーション、声の大きさが意味に関係している。俺は勉強した。死に物狂いで。ペチャペッチの本、言うならば小学校低学年の国語に当たる教科書を買い基礎を学ぶ。3ヶ月ほどで文字の意味を理解できるようになり、最低限の筆談は可能となった。最初、ペチャペッチの意味を理解できない俺をいぶかしく思っていたお袋も協力的になり、俺の練習に付き合ってくれた。半年を過ぎた頃、文字については中学レベルに達し、テレビのテロップが大体理解できた。言葉も文字が理解できたら、何となく分かってくる。10か月を過ぎた頃、俺の語学力は小学校高学年にまでなった。そして、お袋が恥ずかしそうに部屋から出て行った理由、それは・・「君のことが堪らなく愛してる。」だったからだ。俺は自分を殺したいほど恥じた。意味を理解した後、しばらくお袋の顔をまともに見ることが出来なかった。自室で何度枕に顔を埋め、大声で叫んだことか。立ち直り、やっとここまできて、今ではコンビニで買い物ができる。あのコンビニには二度と行けないが。世の女性を全て敵に回す、それほどヤバイ台詞を伝えてしまったから。
1年間の休学を経てやっと大学に通学できるレベルになった俺は、少し不安になりながらも大学の門をくぐった。講義に出て内容を理解できることを確認。久しぶりに友達と会話した。
「ペチャペッチ、ペチャペッチ~(今までどうしてたんだ、もう大丈夫なのか?)」「ペチャペッチ!ペチャペッチ・・ペチャペッチ。(ああ、ちょっと軽い記憶障害に掛かってね、もう大丈夫さ!)」「ペチャペッチ~ペチャペッチ、ペチャペッチ!(へぇ、記憶障害か・・何か大変だったんだな。)」
友達との会話もスムーズにできる。俺は自信を持った。この1年間の努力が実を結び、俺は、平穏無事な日々を送れることだろう。
朝、起床すると、欠伸しながら眠気眼でリビングへ。お袋がキッチンで料理をしている。「ペチャペッチ!(おはよう!)」俺は気のない挨拶をし、キッチンテーブルの席につく。新聞を手にする俺にお袋は言った。「ボコンベホベホ!」んっ?俺は、固まり、恐る恐るお袋に言った。「ペチャペッチ!(おはよう!)」と。お袋は首をかしげる。「ボコンベホベホ・・」真顔で言ってる。ああ、あれだ。またあれが来た。これからの俺がしなければいけないこと。それら全てが恐怖となる。俺は悲鳴を挙げていた。
反応良かったら、また投稿しますよ(*^ー^)ノ




