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私の中の消えない世界  作者: はりねずみ
9/20

ついてきた①

前置きが面倒な方は一気に②を読んでも良いかと思われます。

高校生になるまでにも、我が家の霊現象は絶える事はありませんでした。

けれどほとんど私だけが見たり聞いたりするので、家族は普通に暮らしており、新たな引っ越しの話など出ても来ません。終の棲家にするのなら私は早くこの家を出て行こうと思っていました。

母親だけが時々、私と一緒に音を聞いたりしていたので気持ち悪がっていましたが、基本気にせんかったらええ精神の人なので…。


さて、高校生になってから私、土日はスーパーでアルバイトをするようになりました。

ちょっとした社会勉強です。


ある日、帰りに両親が私のあがりに合わせて立ち寄ってくれて、車に乗せてくれました。

山の斜面を切り拓いて作られているもので、ほぼ急な坂道、それはもう助かります。

ありがとう、と乗せて貰って家のある通路に入った時、道の真ん中に大きな雄の秋田犬がうろついていました。


「あれ、〇〇さんちの子やん。」

「ほんまや、また鎖千切ったんやろか?」


そう、その犬は脱走の常習犯で、よく抜け出してはうろうろしていたのです。

車が来てもこちらを見たまま動いてくれずに困っていると、母が私に言いました。


「ちょっとチャイム鳴らしてきて教えてきてあげて。」

「ん、わかった。」


何度も散歩の時に会っており、仲良くさせて貰っていたので二つ返事です。

車を降りて、おいでと手招きしてから飼い主の家の門へ近付くとついて来ました。

チャイムを鳴らしたのですが、どうも留守のようで誰も出て来ません。


「おばちゃんおらんの?」


犬に聞くと顔を見上げたままキュウと鳴きます。

困った…。

門から離れて左右を見るも、誰かが帰って来る気配もなく、我が家の車が車庫入れをしているだけ。

どうしたものかと犬を見ると、前足が赤く染まっているのが見えました。


「え、怪我してんの?見せてみ?」




……皆さま、手負いの獣にうっかり手を触れてはいけません。




いつも懐いてくれていた犬が、普通に立っているだけで私の腰あたりまである大きな秋田犬が、突然唸り声をあげて飛び掛かって来たのです。

一瞬何が起こったかわかりませんでした。

ただ、顔が濡れて、熱い。


悲鳴なんて出ませんでした。

ドサッと転げた私の音に驚いて父親が道に出てきましたが、状況を見た途端に震えて助けにも来てくれません。母親は荷物を置きに家の中。


犬を振り払うように手を振ると腕を噛まれ、逃げようと立ち上がると太腿を噛まれました。

顔から滴った血で上半身が赤く染まっていきます。


唇が千切れてぶら下がっていました。

私は完全に千切れてしまわないように咄嗟に肉を支えて口を覆い、ふらつきながら家へ歩き出しました。

犬が追ってきます。

父親は急いで家に入って行き、大声で母を呼んでいました。


ああ、せめて。

そこにホウキがあるでしょう。追い払って下さいよ。

唇千切れたな、治るかなこれ。


こういう時ってもう逆に冷静になるものですね。

私より怯えていた父のお蔭かもしれません…。


犬は途中で突然振り返り、家の方へと行くのが見えました。

何と、…家の人、居るじゃないですか。

私の姿と、飼い犬の口が真っ赤になってるのを見て救急車を呼んでくれました。


さて、何が怖い話なのかって、これはただの伏線です。

一ヶ月、形成外科で入院してとりあえず唇の形を完全ではないにせよ戻し、家に帰ってからが大問題だったのです。

男性というものは本当に血に弱いものです。しみじみと。

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