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私の中の消えない世界  作者: はりねずみ
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通り道②

読んでみてください。

何を感じますか?

引っ越して来てから早数ヶ月。

学校の位置や商店街に何があるかなどが少しずつ把握出来た頃です。


父親が会社の人から子犬はいらないかと勧められたらしく、ペットを飼うのも夢だったので二つ返事でした。

やってきた子犬は雑種で小さくて、体の弱い子でした。

子犬と聞いていたのに大きくて不思議に思って尋ねたところ、実はすでに一年半経っているが、体が弱いから手に負えなくなったのが正直なところ、と聞いて腹が立ちました。

可愛がろう、と決意してよく散歩など連れて行っていた、ある日の事です。


一緒に帰宅していつも通り門を開こうとして、犬に思い切り引っ張られたのです。


「うわっ、どないしたん!?」


驚くも、いくら引っ張っても来てくれません。

散歩が足りなかったのかもと、ついていくと家の前の空き地に真っ直ぐ、すぐそこでした。

地面の匂いを嗅ぎだしたので、まだトイレしたかったのかと待っていると、突然前足で土を掘ろうとします。


「なんかあんの?トイレしてええんやで?」


頭を撫でても、話しかけても夢中で土を掘りたがる犬。

何か埋まってるんだろうか?

全く動いてくれない犬をそのままにして庭に置いてあったスコップを取りに戻り、またそばに戻りました。

無心に掘っている横からスコップを差し込むと、やっと顔を上げて私を見てる。


「掘ったるから待っとき。」


やっと大人しく私の隣に座り、掘ってる様子を眺めるようになりました。


これはもしかして!?

ここほれワンワン的なものじゃないだろうか。この下にはきっと隠された財宝が…と、まあ中学生なんてこんなものだと思います。


ガツ、ガツッ。

結構硬い、掘りにくい土。


ゴリゴリ、縁のほうも削って広げるように掘っていくと…。

何かがスコップに絡まって。


犬が、穴に顔を突っ込んで匂いを嗅ぐのですが、スコップで危ないのでリードを引いて真横に。


力を入れ直してスコップを引っ張ると…、



ずる、 ブチッ…。



「………、………え?え?」


これは、もしかして、………かみのけ。


心臓がばくばくしました。

髪の毛がどうして、もしかしてこの下に埋まっているのは、次は頭蓋骨が?

どうしよう、警察?

でも髪の毛だけだったら?


スコップをそこに置き、ひとまず犬を連れて家に戻り、いつもの場所にリードを繋いでから母親を呼びました。


「お母さんちょっと来て!!」

「どないしたん?」

「家の前の空き地から髪の毛!ちょっと来て!」

「ええ!?何が、何してんのあんた!?」


母親も混乱しながらも私の後を追い、再び家の前へと。

放り出したスコップを手に取り、2人で穴を覗き込みました。髪の毛がちょろちょろと出ています。


「誰か人形とか埋めたんちゃうの?」


母親が言うのに、人形…その可能性もあるなあと思いながら、また掘り進めました。

髪の毛の量がどんどん増えて、段々母親も薄気味悪がり、次第に無口になる2人。


カチッ。


スコップの先に何か当たりました。

ガリガリ、また綺麗に周りも大きく掘って土を払うと……。


古い、古い、見るからに古い小さな手鏡。

髪の毛はそれに絡みついていました。


「お、お母さん、これどないしよ…。」

「誰か埋めたんちゃうか、人形と一緒に。」

「人形なんかないし、鏡だけやし…。」

「え、ええから帰ろ。帰るで。」


私の手からスコップを取り上げ、掘り出した髪の毛も鏡も全部戻して埋めなおしていく母親。


私は何を掘り返してしまったんだろう。

この後、また引っ越すまで起こり続ける心霊現象と関係あったのだろうか。


私が掘り返さなければ、何もなかったのでしょうか。

今もそこだけが後悔として残っています。

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