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私の中の消えない世界  作者: はりねずみ
3/20

水難

琵琶湖付近にお住いの方、気を悪くされるかもしれません。

今回は小学生高学年になった頃、夏休みのお話です。


父の会社から貰った旅行券を使い、家族で滋賀県の琵琶湖の宿に泊まりました。

家族旅行など滅多にないのではしゃいだのを覚えています。


琵琶湖は広くて海みたいですね。

泳げない私は浮き輪に掴まってぷかぷかと漂っていました。近くで兄と父が泳ぎ、水が怖い完全カナヅチの母は浜辺。


ふと、少し浜辺から離れすぎている事に気付いて、両手で水を掻きながら戻ろうとしたときです。

足元が突然ひんやりと、驚くほどに冷たくなったのです。

水深のせいなのかと思ったけど、そんな冷たさではなく、凍えてしまいそうな冷たさ。

怖くなって必死で水を掻いて浜辺側へ戻ろうとした時、


ひっくり返ったんです。


浮き輪もしているのに、身体が何かに放り投げられたようにでんぐり返しになり、気がつけば水の中でした。

怖くて、冷たくて、とにかく上へ浮こうと足掻いていると、足首が痛いほどに冷えてくる。まるで氷の塊を押し付けられているような感覚。


息が苦しくなってきたころ、やっと指が浮き輪を掴みました。必死に浜辺へ戻ったのですが、あれだけ近くにいた父も兄も私の異変に気付かず…。


宿に戻り、大浴場に母と身体を温めに行きました。

夏だと思えないくらいの、あの水の冷たさ。

思い出してぞっとしながら大浴場に入ると、まだ早い時間なのに、隅っこに一人、首元まで浸かってる人がいます。

特に気にせずに身体を洗い、母と湯に浸かって、


「のぼせへんのかな?」

「何が?」

「あのおばちゃん」


私達が来てから身体を洗い終えて湯船に浸かり、先に上がるまでずっと浸かってる。


「長風呂の人おるからなぁ」


母にそう言われ、ふーんと大浴場から出たところでもう一度振り返る。倒れないかどうか心配で。


「……お母さん、おらん」


え?と母も振り返ると、湯船から出ていた頭がなかったのです。


まさか沈んだ!?やっぱりのぼせていた!?


二人で急いで助けるために湯船に戻ると、


誰も、何も、いなかったのです。


二人して一気にゾッとして慌ててその場を後にし、部屋に戻って父と兄に話しました。笑い飛ばされるだけでした。

母はこの時あたりから、私と一緒にいる時に限って色んなものを見るようになります。



もやもやとした気持ちだったので、景色でも見ようと母と窓際の椅子に座って障子を開けました。

すると、崖の上から花束を放り投げている人の姿が見えたのです。

琵琶湖は事故も多い場所、きっと色んなものが溜まってる気がします。


連れて行かれなくて良かったなと、その時ぼんやり思った私でした。

母はこの辺りから霊の存在を信じるようになりましたが、父と兄は信じない人でした。

人一倍怖がりだから認めたくなかったのかもしれません。

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