表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の中の消えない世界  作者: はりねずみ
10/20

ついてきた②

高校生になってから、元からの性格の所為か冷静というか冷めています。

今思えばあの時に唇を噛まれなかったら、お化粧ももっと映えたのでは?と思ったりします。

犬に顔を含む数か所を噛まれて形成外科に入院すること一ヶ月。

高校も一ヶ月休みました。

女の子の顔に傷が…私がチャイム押しに行ってと言わなければと、母は自分を責めましたが、手負いの獣にうっかり手を伸ばした私が馬鹿だったのです。


さて、そんな私は両親に休みの度に神社やお寺に連れ回されました。

変な物が見えたり聞こえたりする、と言う私。そして犬に噛まれた私、不幸続きなので何か祟っているのではないか?とのことです。


無宗教な我が家なのに適当に大きな寺巡りをし、最早観光がしたかっただけなのではないかと言える程に歩き回りました。

と、あるお寺で、住職さんにお話をしたところ、これを差し上げましょうといただいたのが小さなお札でした。


お札と言っても三つ折りの観音開きのような少し硬めの紙で、御地蔵様の絵と何か達筆な文字が細かく書き込まれています。

お経かな?と思って文字を辿ってみましたが、般若心経でもないようで。


とりあえずありがたいものなのだろうと、その夜、枕元に置いて寝たのです。



その日に限ってなかなか寝付けないでいたのですが、うとうととし始めた時、痺れるような、頭の中から全身にかけて冷えて行くような感覚に襲われました。

金縛りです。

実は何度も体験していたので、またか、程度だったのですが…。


ベッドの傍に、人の気配がするんです。


いる、絶対にいる。

目を開けたら絶対に目が合う気がする。わかる。


お札を貰ってすぐの金縛りとか本当にやめて欲しいと思いながら、心の中で南無妙法蓮華経と唱え始めました。

暫くすると人の気配は消えて、ふっと金縛りが解けたのです。


私はうっすらと目を開けてみました。

部屋は何もなく、もうこのまま寝てしまおうと目を閉じると、ほんの数分で二度目の金縛りが起こったのです。


さっきと同じ気配。

いる。


何だろう、気になる。誰なんだろう。

私は―――目を開けてしまいました。


視界に飛び込んできたのは、ベッドのそばに手を繋いで佇んでいる男性と小さな女の子。

私をじっと見下ろしていました。

目が合いました。

顔も見ました。


知らない人たちでした。


男性が繋いでいないほうの手を私に伸ばしてきて、手術をしてまだ皮膚の硬い唇にそっと触れてくるのです。


「………。」


怖いのと、治してくれてるんだろうかという疑問。

暫くすると掻き消えるように、金縛りと共に去って行った二人。

私は疲れきってそのまま泥のような眠りにつきました。


――そして朝。


枕元に置いてあったお札を手に取って、


「守ってくれるどころか何連れてきてくれたん…。」


と愚痴って、お札を開いてみると……。



昨日はなかった、御地蔵様に真っ赤な血のような染みがついていたんです。

唖然として母親に見せに行くと、お寺に持って行こう、と言われました。


母は運転できないので、ちょうど休みだった父に頼んで連れて行って貰い、住職さんにお札を見て貰いました。

引き取って供養します、と言って下さったのですが…、一体私に何がついてきてしまったのでしょうか…。

迂闊に神社やお寺をめぐるものではないのかもしれない。

そんな事を思った私でした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ