出会い
白銀の髪に陶器よりも白くなめらかな肌。
程よい体格に引き締まった身体。
優しげな藍色の瞳に甘いマスク。
信じられますか?
そんな超絶美形がほぼ全裸なパン一で剥き出しの地面に土下座してました。
☆☆☆☆☆
「顔をあげてよー」
うむ。女としては怒ったり泣いたり憎んだりするべきなんだろうが、いかんせんこの状況。
周り瓦礫と死体の山ですのよ奥さん。
立ち寄り予定の街が数日前にはドラゴンに襲われて壊滅、町民も逃げる間もなくほぼ全滅だなんて村娘Aにわかるかい。
少しでも町民が逃げ延びれてたりして、他の町や村に状況の報せがあればいいんだけど。
なかったらあたしが報せに行くしかないなあ、その前に生存者の確認だけど、と軽く探索してたら瀕死の美形発見。
生存者イターーと喜び勇んで、比較的無事なスペースに瓦礫の中の板やら木材で簡単な休憩所作って運び、手当てしようとしたらなぜか組み敷かれまして、ええ。
あちこち折れてるし打ってるし抉れて焦げてたりして半死半生というか9割死な怪我なのに。あたしを組み敷いてるけどこれ絶対に意識ないと断言できるのに。
組み敷かれて丸一日。性的に食べられてましたよ。
むーりー、と気絶。そして起きたら全快してパン一土下座してる美形さん。
全快。瀕死の重症が一日で全快。美形さんの第一声が。
「すいませんでしたあああああ!!」
という絶叫謝罪でした。
「無理矢理はしないのが俺のポリシーだったのに······! しかもカタギの娘に······。 ほんっとうに申し訳ない······」
カタギとな······?
かたぎ【堅気】
1 心がしっかりしていてまじめなこと。また、そのさま。律儀。
2 職業や生活が、まっとうで、着実なこと。また、そういう人。
この人······! いい人だ! あたしをカタギだって!
まっとうだって!
聞きました奥さん!?(誰よ)
魔女だの聖女だの救世主だの果ては悪魔や神やら···。
まっとうな娘扱い始めて!
うーーれーーしーーい!
ああ、でも、喜ぶだけでなくちゃんと聞かなきゃ。
「あたしはともかく、おにいさんは······? 酷いけがしてたよね······?」
「ああ、俺は······」
美形さんは、一瞬目を伏せて言い淀んだ。
少し躊躇ったあと、何か覚悟を決めたのか顔をあげて言いきった。
「俺は、淫魔なんだ。成り立ての。」
「へぇ〜、そうなんだ〜」
だから快復したのね。昨日のナニでエネルギー満タンになって。
『おいしい···。』とか言ってたしね〜。
さわさわちゅっちゅっしてる間にどんどん治ってったし~。
「そうなんだ、ってそんな軽い問題じゃないだろ! 俺に言う資格ないけどな······」
「ん〜······」
昨日のナニには、美形さんがあんまり気に病む必要がないんだけどなぁ······。
「あの······、昨日のことについては、あんまり気にしないでいいですよ? 抵抗しようと思えば出来たんで······」
「だろうな」
「ぅえ?」
美形さん、昨日意識あったっけ? いや無いね絶対。白目剥いてたし。後半戦以外は。
あたしが首をかしげてると、美形さんは、顔を片手で覆って長くため息をついた。
「昨日、俺は瀕死だったろ。お嬢さんがちょっとどついた程度で死ぬぐらいに」
「あ、はい······」
よく自己分析出来ていらっしゃる。
昨日の美形さんの状態
・左上半身お焦げ。左手指先完全炭に。
・両足。腰下から膝まで瓦礫で潰され、左足は焦げたのも相まって千切れかけ。
・あばら。瓦礫で同じく潰れかけ。 他にもこまごまとした怪我をしていたんだけど。
むしろ、なんで生きてるの。
この世界の人間ってこんなに丈夫なんだと最中に関心したぐらいだわ。
そういう状態の人が無理に動いたら死ぬし。
どついても蹴っても死ぬし。
止めさしてでも自分の清い身のが大事かなと思ったら、清さとか聖女に祭り上げられただけで良いことなかったわ〜と、むしろ自分で決めて身を任せたので。
「だからと言って、ソレとこれ、俺がお嬢さんを襲って良いことにはならないだろう···」
ええぇ、やだぁこの人面倒臭いぃ·····。
あたしが内心ちょっと引いてるにも気付かず、美形さんは真剣な顔で、あたしの前に膝まずいて頭を下げた。
「お嬢さんに、心からの謝罪と感謝を。俺の全力を持って、お嬢さんに一生償うことを誓おう」
えっ、淫魔で一生って。ていうかそれ以前に。
「えぇ···。重い男の人やだぁ······」
思わず漏れた本音に、びっしぃと、空気が音たてて凍るならこんな感じになるんだと始めて知ったわ~。
お断りされたことないんだろうな。美形だから。