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タナトスの剣  作者: 隆醒替 煌曄
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序章-1.平穏(1)

 剣と魔法と銃が存在する世界──ヴァルハラ。


 9つの国で統制されており、戦争もなければ紛争もない。しかし、世界は平和とは言えなかった。


 ダンジョン。


 この世界に存在する、モンスター達の住処。合計21もの数があり、それぞれに名がつけられている。製作者不明、攻略者通算ゼロの謎の建造物だ。神が作った説や、古代の人の文化などの説が上がっているが、どれも信憑性に欠けている。


 これにより、世界は常にモンスターが蔓延り、人々は怯えることになっていた。


 人間は、それに対抗するため、国各々に、対モンスター機関を創設。また、それに対応する戦士を育成するため、教育機関も設けた。


 決して、兵役の義務はない。しかし、世界の人口の約7割が、それらの機関に所属していた。


 街や村、もとい国を守護する『ガーディアン』。ダンジョンの詮索、探求をする『キャプチャー』。主に、対モンスター機関は大きくその2つに分けられている。


 教育機関も両職業に通ずるために2つに分かれていた。


 そして、ここ、ブリュンヒルデ国立キャプチャー学院の屋上。とある少年──久遠(くおん) 碧人(あおと)はそこに寝転がっていた。


 今の時間では、学生は授業を受けているはずだが、碧人は寝転がって、空を見上げていた。


(あぁ、今日も空が青いな……)


 彼は争いを好まない、温厚な少年だった。年はまだ18歳もいかない。


 授業中のはずなのに、屋上で昼寝。傍から見れば不良だろう。だが、実際はそうではない。


 この世界は、剣と魔法と銃の世界。しかし、実際は剣よりも銃や魔法の方が流用性、汎用性が高く、それに長けたもの、才を持ったものが優遇され、逆に剣のみに才能があるものは、蔑まれた。


 碧人は、剣に高い才能を持っていた。しかし、銃には特筆するほど才能はなく、魔法に至っては、基礎の基礎、『身体強化』しか出来ない、周り曰く『剣術だけの能無し』だった。


 生徒どころか先生にすら差別の対象となり、こうして授業すら受けさせてもらえないのだ。だが、碧人は勉学は自習でも十分なくらいの知識を保有しているので、テストもそれなりだった。しかし、それが一層周りを苛立たせ、蔑みは勢いを増した。


 スタスタ、と碧人に近づく影が一つ。


「まーたこんなところにいた」


 碧人は寝転んだまま、首だけを動かし、その人物を見た。


「しょうがないだろ。授業受けられないし」

「まぁ、だよね」


 その人物は、碧人の隣まで来ると、その場に腰掛けた。


 雲雀野 茜 (ひばりの あかね)。数少ない、碧人を軽蔑しない人間のひとりだ。幼少の頃からの知り合い、つまり幼馴染みであり、数少ない碧人の友人、もとい親友でもある。


 端正な顔立ちをしており、艶やかな蒼髪は肩らへんで揃えられている。美人と言って差し支えないだろう。学園カーストでも上位であり、男女問わず好かれている。いつも茜を『お嬢』と呼ぶガタイのいい男の取り巻きがいる。


 ただ、碧人は青い髪なのに名前が『茜』というのはどういう事だろう、と思っていた。茜の最大の謎である。


 また、学業も好成績を残しており、銃、特に狙撃において絶大な才能を誇る。狙撃の腕なら、間違いなく学内1位だ。魔法の腕も相当で、単体で撃てる最上級の魔法、上位魔法を最大5発まで撃てる程の魔力量を持っている。身体強化を10分しか維持できない碧人とは、魔力量の桁が違う。


「お前はいいのか?こんなところにいて。折角『ガーディアン』と『キャプチャー』から貰った推薦がパーになるぞ?」

「大丈夫大丈夫。暁希君にノートは取ってもらっているから。それに、私なら推薦なくても受かる」

「流石は優等生様、だな」


 そう言って、茜のいる方向とは逆の方を向く碧人。別に彼女にムカついた、とかではなく、自然動作だ。


「そう言えば、取り巻きはどうした?」

「あー、あはは。巻いてきちゃった」

「まーた、俺が面倒くさいことに巻き込まれちゃうよ」

「ごめんごめんっ。碧人君には何もしないよう言っておくから」


 『てへぺろっ』のポーズをとったあと、ごめんと言いながら軽く合掌した。いちいちの言動が可愛いな、とそんなことを碧人は脳裏に浮かばせる。


 碧人は、不意に自分の手を見た。何かしら違和感を感じたのだ。自分の手、ではなく、体に。


(寿命が、縮んだ?)


 違和感をそのまま伝えるなら、その一言に尽きた。しかし、碧人はアホな考えだな、とすぐに一蹴した。


「どうしたの?」

「いや、なんでもない」


 再度、目を瞑り、惰眠を貪ろうとする碧人。そこをすかさず茜はチョップした。


「何すんだよ?」

「何となく」


 なんとなくで人を叩くのかよ、と碧人は思ったが、口には出さなかった。しかしその分、ジト目を返す。そして、また眠る。


 時刻はまだ11時だ。丁度3時限目だろう。


 碧人は、確かに授業は受けさせてもらえない。しかし、例外もあった。それは、剣技の授業だった。剣に圧倒的な才能を持つから、というわけではなく、剣技の先生だけ、彼に他の生徒と同じように公平に接してくれた。本日は、4時限目に体育 (剣技)

がある。


 碧人は、それまで寝ておくことにした。

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