第5話:新事実発覚
少し動き出しました!
「どりゃあっ!」
「キンッ!」
「…痛え」
「ふんっ!まだまだ甘いわね!」
呼び出しから3日ほどたった今日。訓練所で鬼神、翔燕、獣狼が任務に向け訓練をしていた。鬼神と翔燕のかけ声やらうめき声が聞こえる。獣狼は彼の父親と剣術のトレーニング中だ。
「2人ともどうだー?」
今日のトレーニングが終わったのか、へたり込んでいる鬼神と仁王立ちをしている翔燕に獣狼が話しかける。
「疲れた…」
「何言ってんのよ!まだまだでしょ!」
「…大変だな」
鬼神は渋々立ち上がり訓練を再開しようとした。その時3人を呼ぶ声が。
「鬼神!翔燕!獣狼!」
「ん?」
3人が振り向くと、そこには針美がいた。
木陰から手招きして3人に用事があるらしい。
「お呼びでしょうか?」
翔燕がまっさきに駆け寄り、3人は針美のいる木陰に入った。そして針美は3人の身体的特徴や、弱点、これからの訓練について話し始めた。
「(休憩できてよかった…ラッキーだぜ。)」
と鬼神がほくそ笑んでいる頃、一族の長老・滝獪、その妻・燕の元へある新事実が報告されていたのだった。
「…燕。」
「はい。」
「驚きじゃな。」
「そうですねえ。」
滝獪と燕は、敵国に放ったスパイからの手紙を読んでいた。
「地の世界」は大小様々な一族・国に分かれており、魔麗一族は今も吹雪一族と争っている。
また一族間の戦いで滅びた国も少なくはない。
魔麗一族では戦争を極力起こさないようにしているが、やられる前にやらないと滅ぶ一方なのだ。今は「地の世界」の中で団結し、「天の世界」「闇の世界」に対抗しなければいけない。
そこで鬼神達は「扉」の任務を任された者と同時に「和解の使者」でもあるのだった。
「吹雪からの手紙かと思っていたが…」
「…闇の世界からでしたねえ。」
「うむ…。あの伝説から全てが始まったようじゃの。」
「そうですねえ…。ですがこれらはあの子等に教えない方が宜しいかと」
「…」
何故か、滝獪は答えない。暫く沈黙が続き、静かに言った。
「…この部屋、浄化してあるのか?」
「ええ…どうかしましたか?」
燕の言葉が終わらないうちに滝獪は矢を放った。
「そこだっ!」
鋭い声と共に放たれた矢は一匹の生き物に深々と突き刺さっていた。
「これは…間者…?」
「あまり見かけない奴じゃの…」
2人は微かにもがく生き物を見つめていたがやがてそれは動かなくなってしまった。
「こいつ…我々の世界の物ではないな…」
「え!?まさか闇の物ですか?」
「ううむ…分からん。」
「とりあえず研究班を呼びましょうか?」
「そうじゃな。」
2人は頷きあってゆっくりと部屋を出る。
廊下で白衣を着た魔人を呼び止め、研究班へと連絡したところで滝獪は気付いた。
「まさかとは思うが…」
「何でしょう?」
「他にはいなかっただろうか…」
「…浄めてありましたから大丈夫かと。」
その答えに滝獪は満足そうに頷き、燕と一緒に族長室へと歩いていった。
先ほどの部屋の中にはさっきはなかった一枚の灰色の羽が落ちていた。
研究班は気付かなかったのか、その羽は片づけられなかったらしい。
「ふーっ、危なかったなあ…。」
誰もいないはずの部屋に、男の声。すると、その羽は徐々に姿を変え1人の男へ変化したのだ。
「伝説、かあ…。面白そうだね!」
ぶつぶつと呟き、普通の人間にはない大きな灰色の羽を広げ、一瞬で消え去った謎の男。
外には夕焼け空が広がり彼はそこに黒い影を落としながら小さく、小さくなっていった。
一方、訓練所では針美の話が終わり鬼神、翔燕、獣狼の3人は楽しそうに話している。
「あーあ…オレ、頑張ろう!」
「鬼神なんかに負けないわよ!」
「体術を磨くぜ…」
「よっしゃあああ!」
「もちろんサボったら…分かってるよね?」
「「分かりましたっ!」」
得意な物も苦手な物も別だが、心は一つ。目指すべき物は一緒なのだ。
《読み方講座2》滝獪、燕