第4話:過去の傷跡と任務
ほんのちょっと流血(?)シーン有りです。苦手な方はお止めください!
「6年前のこと、知ってるだろ?」
オレが10歳の時、12歳の姉ちゃんが帰ってきた。その時のことだ。
鬼神はそう付け足すと、静かに語りはじめた。
6年前の春。
「たしかここら辺で姉ちゃんが…」
鬼神は姉・辰乃が連れ去られた場所にいた。
もしかしたら、と思い毎日来ていたのだった。
「ガサ…」
直ぐ近くの暗い森から何かが近づいてくる気配がした。
鬼神は既に訓練を開始していたため習ったとおりに短剣を構える。
「ん?」
「おに…が、み…」
何者かが微かに鬼神の名を呼ぶ。だんだんと近づいてくるそれは鬼神のたった一人の姉。
「ねねね姉ちゃん!」
鬼神は突然のことに驚き辰乃に駆け寄る。
「大丈夫か?」
ふらふらしている体をしっかりと支えた鬼神は、そう遠くない一族の地へと向かう。
途中で何度か倒れかけたがなんとか入り口の門までたどり着いた。
「鬼神?ま、まさか…」
「辰乃か!」
2人の門番が鬼神と辰乃に近付こうとした瞬間、鬼神の喉元にはキラリと輝く短剣があった。
「うわっ!」
まだ12歳の少女が弟に刃物を突きつけるなんて有り得ない。
門番の頭にそれが過ぎった瞬間、彼はもはや肉の塊でしかなかった。
一瞬で鬼神から離れ、大人の男を殺しまた鬼神の元へ戻った辰乃。
もはやそれは少女ではなく、殺人の狂気に満ちる魔物。
もう1人の門番は何か呟き、鬼神と辰乃を魔法陣で包み込んだ。
「怨舞さんを呼んでくるから待っていろ!」
門番はまた何か呟き驚異的なスピードで走り去る。しかし辰乃は笑っていた。
「…あははっ」
意味のある言葉を発することはなく、魔法陣を隠し持っていた長剣で切り捨てる。
そして周りをゆっくりと見渡し突然言った。
「ご、めん…ね…」
その目には涙が。
しかし次の瞬間に顔つきが変わり、鬼神を地面にたたきつけその背中を斬った。
「ぐ、はっ」
そこから鬼神の記憶は朦朧となる。
姉と父親と門番が戦っている。父親が姉を強力な魔法陣で包み込み、泣きながら謝っている。
そして父親が鬼神の名を何回も呼ぶ。
「鬼神!鬼神!お……!…がみ!――――!」
「ってわけだ。オレは何故か生きている。致命傷を負ったはずなのに。」
実は殺された門番は1人ではなく、走って怨舞を呼びに行った門番も死んでいた。
怨舞とともに辰乃と戦い呪いをうけ死んだのだった。
「呪いをうけた門番は死んだ…なのに鬼神は助かった?」
翔燕と獣狼は顔を見合わせた。
鬼神が答えようとするがそれを針美が制する。
「鬼神は自然治癒能力が桁外れに高いのよ。だから助かった…」
しばし無言になる5人。長い長い沈黙の後、怨舞が口を開いた。
「鬼神の呪いはまだ治っていない。いつ暴走するか分からん…だから一刻も早く止めなければいけないのだ。…3人で、謎を解いてくれないか?扉の謎…鬼神の呪い…辰乃…頼む!」
怨舞の必死な頼みで3人の心は決まった。
しかし、本当の決め手は友情、だったのだ。
「オレは鬼神や辰乃さんを救いたい。」
「私も力になりたい。」
翔燕と獣狼は鬼神を見つめる。鬼神が大きく息を吸い言った。
「オレだって死にたくないからな!行くか!」
3人の思いが一つになり若き戦士たちは旅たちの準備を始めることとなった。
3人は一礼し、部屋を出る。
部屋に残された怨舞と針美は顔を見合わせた。
「成長、したな。」
「そうね。」
「…帰ってこいよ、3人とも…。」
「帰ってきますよ、絶対に。」
両親の愛は鬼神に伝わったのだろうか。愛と友情は呪いを越えることができるのだろうか。
3人は待ち受ける困難を知りもせず、日々訓練に明け暮れるのであった。
遅くなってすいませんでした。こんな作品ですが読んでくださっている皆さんに感謝です!