第3話:トップシークレット
登場人物の名前など、漢字の読み方が分からないという方がいらっしゃったので、あとがきに読み方を書きました!
「鬼神、翔燕、獣狼…私は忙しい身だ。だから単刀直入に話す。いいな?」
怨舞は「くわしくは針美に聞いてくれ」と、付け足し、3人が予想しなかった―できなかった―ことを言った。
「辰乃が、一瞬だが目を覚ましたんだ」
「姉ちゃんが!!!」
鬼神は驚きと喜びと複雑な感情に突き動かされ立ち上がってしまう。
「静かにしろ、鬼神!」
しかし…叫び、立ち上がってしまうのは無理もない。
姉・辰乃は、今から8年前の春に誘拐され、『闇の世界』に連れ去られていた。その2年後に帰ってきたのだが既に殺人鬼と化していたのだった。
これには16年前のある事件が関係していた。
鬼神達が住むこの世界はこの星の3つの世界のうちの1つ、『地の世界』である。
そして『地の世界』と他の2つの『天の世界』『闇の世界』の狭間には『扉』といわれる封印がしてある。
この封印は決して破られることがないはずだったが何者かにより封印が破られてしまった。
これにより、今迄謎に包まれていたお互いの世界への進出が始まったのだった。
だが、自分の住む世界の空気ではない、他世界の空気を吸うと体に何らかの異常が起きてしまう。早い段階で3つの世界は研究を重ね、在る程度の成果を得る。
しかし実験体がない。
そこで『闇の世界』の何者かが辰乃を誘拐したのだ。
そして悲劇が起こった。体に起こる『異常』は人によって様々らしく、辰乃の場合、脳に影響が出てしまったのだ。
暫くは『闇の世界』で暮らしていた辰乃だが、何故か戻ってきた。
殺人衝動に因るものなのかは分かっていない。
これらは魔麗一族研究班が調べ、辰乃の殺人衝動を抑えるのにも役立っているようだ。
針美が口を開く。
「辰乃が薬の副作用で意識がないのは知っているわね?」
「おう…絶対に起きないってやつだろ?」
鬼神は辰乃について、ある程度は知っているようだ。
翔燕と獣狼は黙って聞いている。
「そうなの。絶対に起きないはずなのに…」
針美は話を続け、3人に事細かく話していく。
だが獣狼が突然言った。
「てことは、オレたち重要な任務を任されるんですか?」
それに続けて翔燕も控え目に口を開く。
「一族のトップシークレットですよね?それを私たちに話すんですから」
そこで結界の中は沈黙が支配者となってしまう。
「…お前らだからこそ、やってほしいんだ。鬼神の呪いも何か関係しているかもしれん。」
『呪い』という言葉に翔燕と獣狼が僅かに反応するが怨舞はそのまま話し続ける。そして、ため息をついてから過酷な任務を言いつけた。
「お前ら3人には旅に出てもらう。そして『扉』を閉じてくるのだ。」
息をのむ3人。
あまりにも過酷で厳しい任務だった。ましてやまだ16歳の少年と少女なのだ。
だが鬼神はそれを遙かに越えるものを背負っていた。
「オヤジ…母さん…オレまだ呪いの事言ってないんだよ」
「「!!!」」
その言葉に怨舞と針美は目を見開く。
翔燕と獣狼も驚き、鬼神を見つめる。
「翔燕、獣狼。オレは姉ちゃんに斬られて呪いにかかったんだ。」
それはまさに驚きという言葉では表せない衝撃だった。
鬼神の『呪い』とは一体何なのだろうか―――。
《読み方講座1》 鬼神、翔燕、獣狼、怨舞、針美、辰乃です。 新たな登場人物が出てきたらまた書きます!