第2話:呼び出し
「起・き・ろー!」
「む…うるせえ…」
「あ・さ・だー!!」
「後五分…」
「怨舞族長が呼んでるよー!」
「げげっ!オヤジが!」
魔麗一族の朝。
元気爆発な少女が少年を叩き起こしている。
「だからって耳元で怒鳴るなよ!翔燕!」
「だって鬼神が起きないんだもん!」
どうやら少年が鬼神、少女が翔燕というようだ。2人はまだ騒いでいる。
「ったくよお…まだ朝早いってのに…」
ブツブツと文句を言う鬼神だが翔燕にはかなわないようで、おとなしく部屋を出て歩き出した。
「鬼神。怨舞族長は忙しいんだからね?」
分かってるの?と少々馬鹿にした様子で翔燕は言った。鬼神は返事の代わりに大欠伸を1つ。翔燕の額に青筋が浮かんだその時、少年が現れた。
「眠そうだな、鬼神!」
「獣狼!」
獣狼と呼ばれた少年―2人よりも大人びている―は、興奮した面持ちで話し出した。3人は足早に建物を出る。人影はまばらでうっすらと朝靄が漂っている。
「俺らは族長に呼ばれた…何かワクワクするぜ」
「ん〜…でもこんなに朝早いのは変じゃない?」
「ふああああ…」
「五月蝿いっ!」
「いてっ!」
3人は小声で話しながらある建物へと入っていった。ようやく朝靄がはれてきたようだ。
「どうする?ノックして入る?」
ドアの前でこそこそしている3人。
ジャンケンで負けた奴が最初に入れよ!と、鬼神がふざけたことを言い出した瞬間ドアが開いた。そして恐る恐る部屋をのぞくと四角い結界の中に男が1人。
「ぐずぐずするな。早く入れ。」
低い声とともに微かに殺気が漂う。3人は身震いし部屋へと足を踏み入れた。
「そこから結界の中に入るんだ。」
「「「はい…」」」
男が手をかざし何かを呟くと結界の一部が消え、鬼神を先頭にぞろぞろと入り男の前に座る。男は小さくため息をついて鬼神を見る。そのため息に何を感じたのか鬼神が口を開いた。
「んで…何の用なんだよ、オヤジ。」
怨舞は答えず、息子である鬼神を小さく睨み、言った。
「針美、そろったぞ」
すると怨舞の横に背の高い女が現れた。
「か、母さん…」
針美は美しい女性だがとても怖い。怨舞の妻、鬼神の母親でもある。そして研究班の副長なのだ。
「待たせてごめんなさいね。ちょっと忙しくて」
その言葉に3人…いや、4人は首を横に振る。かなりの恐妻家らしい。
「では。」
怨舞が針美にアイコンタクトをとると同時に3人は顔を見合わせ、小さく頷く。
「(何か起こったみたいだな…)」
この時の鬼神の勘は当たってしまう運命にある。そしてその勘をはるかに超えてしまう事が起こりつつあるのだった。