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戦略的ヤンデレは愛し愛されたい  作者: おゆきリん
2/4

雪音の、裕也君虜にしちゃうぞ大作戦パート1

ヒロインの名前を変更しました


この回は自称戦略的ヤンデレの雪音視点になります



育成学校に入校して3日目の帰り道、雪音はあまりの嬉しさに笑みが溢れており、スキップで家に向かっていた。



「やったやったやった。今日裕也君とお話しできた!」


彼女は思わず破顔させてその時の会話を思い出す。



「しかもしかも、下の名前で呼んでもらっちゃって。うふ、うふふ。」



ニヤニヤが止まらず、頬に手を当てて夢うつつの様子でつぶやく彼女であったが、突然真顔に戻ったかと思うと、先ほどとは打って変わり、苦虫を噛み潰したような顔を見せる。



「...いいえ、喜んでなんていられない。今日の私は最悪だった。」



道のど真ん中、通行する人は誰もいないとはいえ彼女は突然立ち止まると、自らで反省会を開く。



「最初の挨拶、話しかけ方はまだよかったと思うよ。だけど雪音、いくら敬語をやめて欲しかったからと言って名前を素直に言わなかったのは失敗だよ!」



「彼の顔、最初は戸惑いの表情、そしてその後は明らかに面倒臭そうな顔してた。」


彼女はその状況を再度思い出し身震いする。



「...しかも、その後も下の名前で呼んでもらいたいがばっかりに、名字をいうことなく強制的にユキネかハニーの二択に迫るとか。もう最低!」



彼女は自分の悪かった部分を一つずつ思い出す度に、だんだんと絶望の表情に染まっていく。



「どうしよう。今の裕也君の私への評価は0どころかマイナス域。面倒くさい、関わりたくない相手として認識されているに違いないよ。」



彼女の洞察力、分析力は、特に結城裕也に関することに対してはとてつもないものがある一方、肝心の結城裕也の前に限っては、その力はほぼ皆無となってしまう。




しかし彼女には強みとして1つ、ネガティブ思考とポジティブ思考、2つを上手に使い分けられるというものがある。



「...うん、間違いなく面倒な相手と認識されてる。っでもまだ嫌われたわけじゃない!挽回するチャンスはまだある!」



カバンから「裕也君を虜にする計画」と題された手帳を取り出すと、パラパラと計画表をめくり思案する。



「...仕方がない、まだ少し早いけれど、成功すれば確実にこれで評価をマイナスからプラス域に持っていける!」



そう一言呟き、「手料理」と記された部分を赤ペンで囲み、ピアッツァと呼ばれる市場へと駆け出した。



市場、ピアッツァは平日ながらも割と賑わっている様子であり、食材も様々なものが売っている様子だった。


「うーん、ピアッツァに来たのはいいけど、料理なに作ろうかな。えっとえっと、せっかく裕也君に食べてもらうんだし、やっぱり私の一部を食べてもらいたいなぁ。」



変なスイッチが入った雪音は比較的よく暴走する。



「まあでも、最初は髪の毛ぐらいから...。ってダメダメ、髪の毛は美味しくないし、飲み込みにくいから大して喜んでもらえないかも。それだったら私の体液を使った...。」


「...ってそうじゃなくて!」



一時暴走をしてしまうも、自らでストップをかけ冷静さを取り戻す。



「そう、冷静に考えよう雪音、普通人の体の一部を食べたいと思う?私は...裕也君のなら、食べ......たい、かな...。って違う違う違う!」



再度暴走しかけた雪音は一度大きく深呼吸をする。



「答えは否だよ否!普通は無理、気味が悪くて食べられないのが普通なんだよ。」



「雪音、手料理が確実な理由はなに?それは、男の子にとってみれば女の子からもらう手料理は一種の憧れみたいなものだからなんだよ。」



自身で質疑と応答を繰り返すことにより、少しでも客観的意見を取り入れようとする。



「だけど裕也君にとってみれば、まだ知り合って2日しか経ってない、仲が深まっていないような状態で渡される手料理弁当は、不審にしか思えない。」



ピアッツァの真ん中でブツブツと呟く彼女を、通り掛かる人、商売人たちは不審な目で見ているが、雪音にとって裕也君の前ではそんなものは蟻の視線と同義。



「そしてそんな不審に思われてる状況で、恐る恐る弁当の蓋を開けると......なんとそこには人の髪の毛が!」


「なんてただのホラーにしかならないし、多分口を聞いてもらえなくなるどころか顔すら合わせてくれなくなっちゃう。」




「もしそうなったら......この世に生きる意味が無くなる。」




雪音は速攻魔法、思考チェンジを発動。この効果により雪音の思考はネガティブからポジティブへとチェンジする。



「だからこそ裕也君が気にいる。そう、とっておきの料理を作らないと!」



料理の方向性が決まった後の彼女の動きは早かった。



「おじさん、一本だけでいいの。黄竜の骨つき肉を売って下さらない?」


「じょうちゃんバカ言っちゃいけねえ。そんなものたった一本だって金貨2枚はいただくぜ?」


「そう、金貨2枚なら売ってくれるのね。」


「ま、まあ小ぶりのものなら金貨2枚で売ってやるけど...。」


小太りの商人が全て言い終わらないうちに、彼女は財布から金色に輝くコインを取り出す。



「はい、金貨3枚。これなら文句ないでしょ?私急いでいるの、早く肉を渡してくれないかしら?」


「お、おう、毎度あり......。」


商人の手から引っ手繰るように受け取ると、彼女は早々といなくなってしまった。


「ふ、太っ腹なじょうちゃんだなぁ...。」



いや、少なくともお前の腹ほどではねえよ by雪音




「おばあさん、たった一尾あればいいわ、白式海の白海老を売って下さらない?」



「あら、かわいいお嬢ちゃん。白式海の白海老かい?あるにはあるけどねぇ、いかんせん遠い海のものだし高級品だしで、とてもじゃないけど安くは売れないんだよ。ごめんね。」



「安くなくていいわ、いくらなら売ってくれるの?」



「そうねえ、お嬢ちゃんになら特別に金貨2枚にしといてあげるけど...。」

高すぎるわよねえ、と続くはずだったおばあさんの言葉は、先ほどと同様に彼女にかき消される。


「はい、金貨2枚、これで売って下さるんでしょう?」


おばあさんは彼女のお金の使い方と大胆な言動に驚くも、すぐに笑顔で尋ねる。


「お嬢ちゃん、何か嬉しいことでもあったのかい。」


「そうね、大好きな裕也君にとっておきの料理を食べてもらえるんだもの、嬉しすぎて心臓が止まってしまいそうだわ。」


「そうなの...。」



少し考えるような素振りを見せたおばあさんは、ふと立ち上がると白海老を2尾奥から持ってくる。


「はい、立派な白海老だよ。持っておいき。」


「いいえおばあさん、金貨2枚で1尾買いたいの。」


「お嬢ちゃん、せっかく食べてもらうとっておきの料理、たった1尾でいいのかい?」



じゃあ金貨4枚支払えと言うのか、と尋ねるかけると、思わぬことをおばあさんは言った。



「大好きな人のためなんでしょう?お代は2枚でいいから、2尾持って行きなさい。」


雪音は大きく見開いた目をおばあさんに向けるも、その優しい笑顔を見て頬を緩ませる。


「ありがとうございます!彼のための精一杯作ります。」


雪音は深くお辞儀を一つしてその場を離れる。



「...若いっていいわねぇ」





その他野菜やらなんやらを買って帰った雪音は、財布の中身を机にぶちまけて、睨めっこをしていた。


「財布の中身は金貨が4枚と銀貨6枚、銅貨が27まいかぁ。ということは、今日だけで金貨5枚と銀貨2枚、銅貨12枚使ったってこと......になる。」


「これでもおばあさんに金貨2枚分もおまけしてもらってるんだけどなあ。」



今までにないお高い買い物に彼女は目が眩みかけるも、そこは流石の雪音さん。


すぐにポジティブシンキングに切り替わる。


「いや、違うよ雪音。もしも裕也君の私への印象がマイナスからプラスになって、しかも毎日お話しすり機会ができるアイテムがあったとします。雪音はどうしますか。」


「はい!買います!金貨5枚?安すぎでしょ!金貨20枚でも即買いします!」


「っと、つまり今日使ったお金はとてもお買い得な買い物が出来たってこと!はいQ.E.D.」


雪音はそう結論付けると、満足した表情で買った食材を並べていく。



「とりあえず、今日できることは明日の作戦の計画を練ること、軽い仕込みと黄竜をひたすら煮込むことだね。」


「あぁ、明日が楽しみ過ぎるよ。早く裕也君に食べてもらいたいなぁ。」





こうして雪音は、ただひたすらに結城裕也を思って明日を迎えるのだった。

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