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09 奴隷商人


「プリムはいくら金を積まれても売らない、さっさとどっかに行ってくれ」

「まぁ、そう言わずに金貨百枚ならどうでしょう?」


「うるさいな、黙れ」

「奴隷商人のカンビオ様、直々の取り引きでございますよ。カンビオ様のことはご存知でしょう」


「そんな奴は知らん」

「またまた、ご冗談を」


いくら言ってもまとわりついてくる奴隷商人を無視して、俺たちは駅馬車に乗り出発した。後ろからやたらと豪華な馬車がついてくるが、一体なんのつもりなんだか。


そして、人気のない山道にさしかかった途端、カンビオとかいう奴隷商人は護衛に命令を出した。


「あの馬車に乗っている全員を奴隷にしてしまえ!!」

「ははっ、承りました」


いきなり後ろから火の魔法が降ってきたので、水の魔法で相殺してやった。駅馬車の御者も必死に馬を走らせている、同乗している者たちはガタガタと震えていた。


「レイ!!まだ追ってくるぞ」

「なんだあの奴隷商人はそんなに怖いやつなのか?」

「王族とも繋がっているんだ、あいつに目をつけられたら終わりさ」

「ああ、どうしてこんなことに」

「あんたら今からでもいい、この馬車を下りてくれ」


俺は爆走する馬車をとりあえずゆっくり止めさせた、そしてカンビオとかいう奴の馬車に近寄ると剣で馬車を破壊した。


「な、なんと!?私を誰だとおもっている!!」

「見たところ、太り過ぎた豚だな」

「レイ、我が思うに食べられないからあれは豚以下じゃぞ」


「殺せ、その少女以外は皆殺してしまえ!!」

「プリムは俺から離れ過ぎずに援護よろしく!!」

「レイこそ、我から離れずに油断するなよ!!」


それから、カンピオとかいう奴との護衛と戦った。意外と護衛は強かった、もっともレベルが129の俺の敵ではなかったんだけどね。


向こうが殺す気できていたから、こっちも遠慮なくとどめをさしていった。カンビオとかいう奴も風の刃でその首を飛ばしておいた、その後は馬車ごと崖下に落として証拠隠滅だ。駅馬車の奴らはとっくの昔にもう逃げていた。


「レイ、ここから歩くのか」

「いや、馬がいるから乗せて貰うとしよう」


六頭いた馬は一頭をのぞいて馬具をはずし自由にしてやった、残りの一頭にプリムと一緒に乗る。


「最初は座ってると尻が痛いかもしれんが、これも慣れだ」

「うむ、我が馬に乗ったことがなかったから、それくらいではくじけんぞ」


プリムは馬に乗ることができて嬉しそうだった。俺も久しぶりに馬に乗る、これでも元騎士様だからな馬くらいには乗れるんだ。


馬のペースにあわせてやや駆け足くらいで街道を進んでいった、次に泊まった宿屋では馬にたっぷりの水と餌を与えた。


あのカンビオとかいう奴が死んだという噂は流れてなかった、俺たちがこの国を出るくらいまでは恐らく大丈夫だろう。


「レイ、馬は可愛いが尻と太ももが痛いのう」

「誰でも最初はそうなる、皮が剥けないようにこの薬を塗っておけ」


プリムは馬での移動は気にいったようだが、乗馬は初めてだから当然上手くなかった。おかげで余計なところに力が入って、太ももを痛がっていたから揉んでおいた。


痛い、痛いと言ってはいたがそのうちに眠ったようだ。俺もプリムを抱き寄せて剣が手の届く位置にあることを確認してから眠りについた。


「今日こそは我はお前を乗りこなしてみせるぞ」

「おお、頑張れよ」


次の日からずっと馬での移動となった、プリムは最初の頃は辛そうだったがそのうちに一人でも乗れるようになった。そして、とうとうドクトリーナ王国との国境が見えてきた。


「奴隷はこの国から外に出せない!?」

「はい、逃亡奴隷を防ぐ為に奴隷は国境を越えることはできません」


またこの国の悪いところが露見した、仕方がないので馬を諦めてこっそりと国境を越えることにした。


「うむ、世話になった。達者でおれよ」

「元気でな」


世話になった馬との別れを済ませ、俺はプリムを背負って国境沿いの森のなかを走っていた。二人ともローブを深くかぶっていたから、万が一誰かに見られても正体がバレることはないだろう。


「プリム、飛ぶぞ」

「うむ、分かった」


風の魔法の力を借りて大きな崖を飛び越えた、これでドクトリーナ王国ともおさらばだ。二度と来たいとは思わない、いろいろと酷い国だった。


駅馬車に乗っていて運動不足だった分を取り返そうと、俺はそのまま街が見えるまでプリムを背負って走り通した。


そして、門兵に獣人であるプリムを見られたが特に驚きもないようだった。ただ、奴隷のチョーカーをつけたままだったからかもしれない、街の露天商から買い物がてら情報を集めた。


「よぉ、こんちは。この国にくるのは初めてなんだが、奴隷制度はあるのかい。獣人なんかも住んでいるのかな。ああ、そこのキャベツと玉ねぎを袋でくれ」

「このフォルクス王国じゃ奴隷制度はあるけど、普通の獣人も住んでいるよ。まいどあり、良いキャベツと玉ねぎだろ、芋もおまけにいくつか入れといてやるよ」


こうしてようやくプリムは奴隷のチョーカーを外すことができた、捨てていいと言っておいたのだが、また使うかもしれないと『無限空(インフィニット)(スペース)収納(ストレージ)』の中で今もそれは眠っている。


「レイ、ここはどんな国だろうな」

「そうだな、少なくともドクトリーナ王国よりはマシだろう」


新しい国に来て、俺たちは二人とも期待に胸をふくらませていた。

主人公のレベルの誤りをご指摘いただき、修正しております。ありがとうございました。

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