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08 スライムは便利


ぷよぷよ、ぽよぽよと青くて透き通った体が森のなかをゆっくり進んでいる。駅馬車から降りて、森の中で狩りをしていた俺たちはその姿を見てひとまず狩りを止めた。


野良スライムである、珍しい。


「プリム、オーガとかの皮を魔法で剥ぐから手伝ってくれ」

「うむ、皮など剥いでどうする。美味いのか?」


「皮を売ったお金で美味い物が食べれる」

「よしやろう、我に任せるがよい」


俺は『無限空(インフィニット)(スペース)収納(ストレージ)』から以前に仕留めたオーガを取り出して次々と皮を剥いでいった。剥いだ皮はプリムが丁寧に畳んで積み上げておく、残った体はスライムに投げて食べさせた。


「うわ、疲れた。プリム、やり方は見てただろ。交代してくれ」

「うむ、美味い飯の為になら仕方ないな」


レベル上げの為にオーガを相当狩っているので数が多い、皮を魔法で剥ぐだけでも大変だった。途中でプリムに変わって貰った、獣人だけあってプリムの魔法総量は結構多いほうだ。百に近いオーガの皮を剥いで、その残りの体は全部スライムに食べさせた。


「羽毛を吸い込むと体に悪いから、口と鼻を布で覆うんだ」

「これでよいか?」


「そうそう」

「では、いざ勝負!!」


「おお、勝負か」

「うむ、勝負なのだ」


続いてコカトリスも皮ごと羽毛を剥いでしまう、羽毛をすいこまないように適当な布地をプリムと自分自身の口と鼻に巻き付ける。二人して競争するように皮ごと羽毛を剥いでいった。オーガよりは数が少なく、二人でやった為にそんなに時間はかからなかった。鳥肉状態になった本体は食糧として、『無限空(インフィニット)(スペース)収納(ストレージ)』に再度しまっておく。


そうして剥いだ皮と羽毛をスライムに食わせる。心なしかスライムも満足そうにしている、だが俺は遠慮なく火の魔法をスライムに叩き込んだ。


きゅいいいいいいいいいいいいいいい!!


水が蒸発するみたいな音がしてスライムの体が縮んでいく、そして最後に核となる魔石を残してスライムは消えてしまった。


「……レイ、今のは我でも酷いと思う」

「そうか?でもスライムって危ないんだよ」


場所を剥ぎ取りした場所から、川がながれるところへ移して二人で水浴びをする。布を巻いてはいたが、やはり僅かに羽毛をすいこんでいたようだ。二人で魔法で水を作り出してうがいをする、川の水は煮沸しない限り飲むには適さない。


「スライムが危ないとは?」

「ああ、アイツは生き物でも死体でも何でも食べるからどんどん大きくなるんだ。そして分裂を繰り返す、森の中なんかにあんなに大きいスライムがいるとそこの森は食べれる動物がいなくなってしまうんだ」


「うむ、ぽよぽよしていて可愛らしいが、結構危険な生物なのだな」

「都なんかだと汚水や汚物の廃棄に利用されてるぞ、そうやって育てて大きくなり過ぎたら始末する」


俺は綺麗になったプリムの体を拭いてやりながら、スライムの怖さについて話して聞かせた。プリムもようやくあのぽよぽよした生き物が危険なのだと理解したようだ。


「それはともかく今日はコカトリスの肉を食おう」

「うむ、食べるぞ」


コカトリスは石化する視線の能力を除けばでかい鳥である、俺は適当な大きさに切った肉をスープに入れて更に香草と野菜を入れる。また串にさしてそのまま食えるように焼き鳥も作った、塩胡椒だけでも充分に美味しい。


「もう食べていいぞ、プリム」

「うむ、遠慮なくいただこう」


コカトリスの肉は鳥肉だが魔物の肉だ、ほどよい弾力がある焼いて食べると美味い。逆に煮込むとぷるぷると柔らかくなって、こちらの食感もまた美味しい。


「はむむっ!!我は今度はコカトリスと戦うぞ」

「そうだな、今ある肉が無くなったらそうしようか」


プリムは上機嫌でどんどん肉とスープを平らげていく、俺も負けずに食べていく冒険者は体が資本だ。食べ終わったら二人して、地面に座り込んだ。


「コカトリスがこんなに美味いとは思わなんだ」

「魔物の肉って結構くせになるやつがいるんだよね」


さて、日も暮れてきてしまったから今夜はこの森で寝ることにする。買っておいた一人分のテントにプリムを入れて休ませた。睡眠無効の俺は一日くらいなら寝なくても、問題はない。


「おやすみじゃ、レイ」

「ああ、おやすみ。プリム」


翌朝はまたコカトリスの串焼きとスープだった、やっぱり美味い。コカトリスの肉は売却せずにとっておくことにしよう、プリムも上機嫌だ。


それから少し歩いてドクトリーナ王国の都に入った、獣人差別の厳しいこの国ではプリムはフードを被って行動している。昼間から彼女と宿をとったら、意味深に笑われた。どうも嫌な国だ、国を抜けるまでにあと半分。昼からまた駅馬車に乗って、とっととこの国を抜けてしまおう。


「それじゃ、プリム。俺は休憩するから、昼になったら起こしてくれ」

「うむ、腹が空いたら昼じゃな。任せろ、絶対に起してやろう」


昨日の晩に眠れなかった分、俺はすぐに眠りこんだ。プリムは魔法の練習をしているようだった。


昼になったのでプリムに起されて宿を出る。近くにあった軽食屋で肉と野菜をもちもちのパンで挟んだものを食べた、すると近づいてくる者がいた。


「そちらのお嬢さんは旦那さまの奴隷でしょう、私のご主人さまがどうか売って貰いたいそうです。金貨五十枚でいかがでしょうか?」


ああ、ふざけんなよとプリムと二人でソイツを睨みつけた。

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