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07 差別と偏見


「こらっ、プリム。外で軽々しく服を脱ごうとしない、そうしていいのは安全な場所で水浴びする時だけです」

「我はフードがうっとおしかっただけである、レイ」


「あー、次の街では特別に風呂付きの宿屋に泊まるからそれまで我慢しなさい。ほらっ、フードをしっかりと被りなさい」

「うむ、仕方ない」


現在、俺たちはディレク王国を出てドクトリーナ王国に入っている。どうもこの国に入ってからプリムに対する周囲の態度がおかしい、駅馬車の御者からは忠告を受けた。


「ドクトリーナ王国では奴隷制度が認められてますし、あの獣人の女の子は綺麗だから狙われますぜ」

「そうなのか、それは気をつけておこう」


だから、プリムにもそのことを説明して狼の耳と尻尾はフードの中に隠して貰った。それでも同乗している男性陣からプリムに嫌な視線を向けられている、この点ディレク王国は良かった。獣人差別もなかったし、プリムも普通も女の子のように扱われていた。

俺の故国のムーロ王国はその点が駄目だった、人間以外のあらゆる種族と争い事が絶えなかった。……なにせ停戦条約を結んでいた魔王を倒してしまうくらいの国だからね。


そして、ようやく駅馬車が今晩泊まる宿屋に着いた。それなのに新たな問題が浮上した。


「その女性はお客様の奴隷でしょうか、えっ。違う?それでは、奴隷以外の獣人の宿泊は禁止とされておりますのでお引き取りください」

「うっわ、そうですか。失礼しました」

「チッ、無礼者め」


うーん、うーんと散々悩んでから考えた結果。俺はプリムに相談することにした。


「プリム、この国では獣人に対して扱いが冷たい。この国にいる間だけプリムを俺の奴隷だということにしたい」

「………………構わんぞ」


俺たちは早速、露天商で首輪に見えるようなチョーカーを購入した。そこに奴隷の証としてプリムの名と主人である俺の名を彫って貰った、そのチョーカーをつけたらどうにか別の宿屋が見つかった。二人で風呂に入りながら、のんびりと会話をする。


「はぁ、疲れる国だな。ここは」

「我が奴隷だとは無礼な話だ」


「そうだな、でも逆に俺が奴隷になる国もあるかもしれないぞ」

「魔国の話かや?」


「そうそう、魔国ごとに魔王がいて、いろんな法律があるんだろうからな」

「うむ、その時は我が理想の主人を演じてみせよう」


「それならもっとレベルを上げなきゃな」

「おお、レベル上げが早くしたいぞ」


このドクトリーナ王国を出ていったら、次の国ではじっくりとレベル上げをするつもりだ。そう俺を裏切ることはない努力、倒せるようになった新しい敵。レベル上げには人生の喜びが詰まっている。


お風呂に入ってのんびりした後、俺とプリムはいつものように一緒のベッドで寝た。というかベッドが一つしか無かった、この国の獣人嫌いは深刻らしい。


翌日も駅馬車に揺られていつも通りに出発した、いつもと違ったのは山中で盗賊に襲われたことだ。


「獣人は全員解放しろ、人間は皆殺せ」


そう言って道を塞いでいるのは虎の獣人だった、既に変身していて迫力がある。他にも獅子や豹など様々な獣人がそこにはひしめいていた。


「プリム、俺が出るから魔法で援護してくれ」

「うむ、無茶はせんことだ」


俺は駅馬車からおりると獣人たちの間に突っ込んだ、素早い動きでまずは一人目を仕留める。相手が俺の身体能力に驚いているうちに二人目、三人目と数を増やしていく。


「我の魔法を受けてみや」


プリムは魔法で時々俺を援護したり、崖の上から見張っている者たちを倒したりしていた。


「たかが、人間風情が!?」

「殺し合いに人間も、獣人も関係ないでしょう」


そう言って俺はリーダーらしき虎の獣人の心臓を突き刺した、あっけなく倒れる彼からすぐに剣を抜いて残党をさっさと片付けていった。


「ただいま、プリム。いい魔法だったぞ、助かった」

「うむ、我が魔法が見れて光栄に思うがよい」


駅馬車の中ではプリムに対する男たちの視線が変化していた、下卑たいやらしいものから恐怖という恐れを含んだものになっていた。


「どうして、あの虎さんを殺したのよ!!せっかく自由になれたのに!!」


プリムと同じで首輪をつけた、兎の獣人がそう泣き喚いた。彼女の主人らしき男に首輪を引っ張られていたが、それでも狂ったように喚き散らした。


「俺たちは自分の身を守っただけだ、俺はまだ死にたくない」

「我もそうだぞ、最初に人間を皆殺しにすると言ったあやつが悪い」


兎の獣人は俺たちの返事を聞いてもただ泣くばかりだった。これは運が悪かったとしか言いようがない、盗賊の要求が獣人たちの解放だけだったら俺もプリムも手を出さなかったかもしれない。


ちなみに俺たちは獣人を十数人片付けたことで、また俺たちのレベルが上がっていた。魔物を狩るよりもある程度の強さをもった人、魔族を相手にした方がレベルが上がるのかもしれない。それとも謎のスキル、魔王の祝福の影響だろうか。


名前 :レイ

レベル:129

年齢 :22

性別 :男

スキル:剣術、怪力、魔法剣、全魔法、毒無効、気絶無効、麻痺無効、石化無効

    睡眠無効、即死無効、魔王の祝福



名前 :プリムローズ

レベル:39

年齢 :15

性別 :女

スキル:剣術、水魔法、光魔法、毒無効、石化無効


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