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「私はパルスさまの為なら死を恐れないが、無理なものは無理だ」

「臆病者め、お前で無理なら他の者を送り込むだけだ」


俺を襲った連中はそんな話をしていた、もちろん俺たちが隠れたまま黙ってそれを聞いているわけがない。


「ここは俺がやる」

「うむ、任せるのじゃ」


俺は風を魔力で操って室内にいる者の位置を把握する、あとはその四肢に沿って風の弾丸が中にいた者たちを貫いた。


「うぎゃああ!!」

「痛い、痛い!!」

「貴様、つけられたな!!」


建物の上からおりて部屋の中にはいってみると、そこには三人の男たちが倒れ伏していた。よし、俺の魔力操作もばっちりだ。


「お前ら何が楽しくてパルスに従っているわけ?」

「あの歪んだブラコンのどこがいいのじゃ?」


俺たちがそれぞれ質問した途端、三者三様の答えがあった。


「うるさい、パルスさまはいずれムーロ王国の要となるお方だ!!」

「あの若さで魔王を倒し、セメンテリオ魔国と友好を結んだ偉大な方だ!!」

「なぜあの方がお前などに構うのかわからんが、パルスさまを馬鹿にするな!!」


俺はそのお返事を聞いて、うーんと頭痛がしてきた頭を撫でた。これは昔俺の両親と同じ反応だ。パルスのことを狂信的に信じていて他のことが耳に入らなくなっている。


「表向きは立派な勇者様だからなぁ、プリム。これダメだわ、説得するだけ無駄。こうなってるともう洗脳に近い」

「そうか、それなら仕方ないのう。まったくあのねじれブラコンのどこがいいのか、理解に苦しむのう」


俺はその三人を骨も残さず焼き尽した、匂いは風の魔法で上空に拡散させておいた。


「あいつらよりここに残っているものの方が面白いな、多分ここはムーロ王国が諜報活動に使っている拠点だな」

「暗号化されておるが、いくつかは解読できるのう。ほう、ムーロ王国の第二王子がこの国へここ1年留学しておるそうな」


プリムはこういった暗号が得意だ、以前は本を読むのも苦労していたのにかえって勉強したぶん賢くなった。


「証拠になるかどうかは分からないが。パルスに関するものだけうつしをとって置いておいて、代わりに本物を貰っていこう」

「あーもう、民衆の目の前でお前たちが勇者と慕っておるあやつの化けの皮を剥いでやれたらスッキリするのにのう!!」


「まぁ、まぁ、落ち着け。プリム、ここはじっくり調べていこう」

「ふぅー、それしかないのじゃな」


諜報員を3人行方不明にしてしまったわけだが、それから二週間ほどその施設を見張っていたらパルスの狂信者が結構な数見つかった。他の諜報活動に使っている拠点もいくつか見つけることができた。


そのうちの数名が彼らはまた暗殺の密命を受けてきたので、その願いを叶えてやることにした。


「うぅ!?」

「レイ、レイ!!どうしたのじゃ!!………………ちと芝居くさいかのう」


「………………良い演技だから、そのまま続けてくれ」

「レイ!?これは毒か?す、すぐに解毒するから死なないでおくれ――!!」


「………………」

「レイ、レイ――!!」


「………………」

「………………」


「………………行ったか?」

「………………まだ分からんのじゃ、どれ我はこの大胸筋を堪能するのじゃ~」


「ふはははっ、プリム。くすぐったい、ちょっとその攻撃は卑怯だぞ」

「こらっ、レイ。死体が笑い転げてはダメじゃ、もっと我慢をせんかや」


何度目からの襲撃の際に俺は敵の攻撃をくらって死んだふりをしたのだ、プリムも良い演技をしてくれた。そして、人間とは自分が信じたいものを信じるものだ。


「はぁ、はぁ、はぁ、パルスさま。やりましたよ、深手は負いましたがこのくらいすぐに治ります。俺はやりましたー!!はははははは、は?」

「ほい、ご苦労さん。君の最期の暗号文は遺体と一緒にここに置いておくよ」

「あの世であのブラコンがどれだけ馬鹿か知ればいいのじゃ」


傷だらけで帰った暗殺者は拠点としている場所で息絶えた。最期にきちんと使命を果たして勇者のお兄さまである俺を殺したと暗号文を書かせた。


「この暗号文を読んだらパルスが大喜びするわけだ、そしてしばらく俺は身の安全を確保できる」

「次の神託がくだるまでの間じゃがのう、粘着性ブラコンがぬか喜びをして悔しがるとよいぞ」


俺たちがそうやって暗殺者さんと共同制作した暗号文は2、3日後にちゃんと別の諜報員が持って帰ってくれた。ぜひパルスに届けてやって欲しい、そしてできれば俺のことなど忘れてくれ。


「公衆の面前で堂々とあのブラコンを殴り倒すことはできんかのう」

「外面だけは物凄くいいからな、なにか決定的なことがないと無理だな」


「外面も厚いが、欲も深いのじゃ。絶対にいつか自爆させてやるのじゃ」

「俺はもう関わりたくないな、あいつと関わると碌なことがない」


それからフォルクス王国では俺はローブで顔を隠して行動した。おかげで一応、俺が死んだ説は信用して貰えたようだ。暗殺者が昼間や夜中に邪魔してくることもなくなった。


さて、これでパルスは満足してくれるだろうか。散々俺の死を願っていた弟のことだ、喜んでこれで俺のことは忘れてくれるかもしれない。


……俺の希望的観測過ぎるかな?

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