50 女性の敵
ファルクス王国は獣人でも差別されないので良い国だ。だがこれといって名産とか名物になるものがあるわけではない。そんな普通の国でもいいものだ。
「レイ、ゴブリン狩りとオーク狩りとオーガ狩り。どれがいいのじゃ?」
「うわぁ、その理由は?」
「女の敵は絶滅すればよいのじゃ」
「よーし、わかった。運動がてら狩りに行こう、オーガ狩りかな」
俺たちはオーガ狩りの依頼を受けようとカウンターに行った、でも受付のお姉さんに反対されてしまった。
「オーガ狩りに二人で行くなんて認められません、いくらレベルが高くても危険です。はーい、次の人お願いします」
「だとさ、プリム」
「むうぅぅぅぅ、理不尽じゃ。自己責任で受けても良いじゃろうに!!」
「まぁ、まぁ、落ち着けプリム。まずはオーク狩りをうけてみよう」
「なぜじゃ?」
「今回のオーガとオークの居場所は比較的近い場所にある」
「なるほど、一挙両得というわけじゃな」
オーク狩りの依頼はなんとか受理された、その時も仲間《パーティ》の数が少ないことが問題とされたが、丁寧な態度とプリムの可愛い笑顔で依頼書をもぎとった。
「オーク狩りでは魔法は禁止の縛りプレイな!!」
「望むところなのじゃ!!」
俺たちはオークが出るという西の森の中を進んでいった、運良く向こうがプリムを見つけて獲物として襲い掛かってきた。
「よっと、軽い、軽い」
「やはり首が一番よの、体は脂肪でぶ厚いからの」
俺が普通にオークの間を走り抜け、一度に二つの首を刈り取った。プリムも小柄なぶん俺よりも俊敏にオークの首をはね飛ばしていった。十数人いたオークだが、今度はプリムの方が多くその首を狩っていた。
「女性の敵は滅びる定めなのじゃ!!」
「うっわ、負けた。プリムも魔法無しでも強くなったよな」
「ふふふふふ、女子が大人しいと思ったら大間違いぞ」
「はい、肝にめいじます」
グラアアアアアアアアアアアアアアアア!!
「レイ、オーガじゃ!!」
「ようやく本命がきたか、魔法も解禁だぞ!!」
障害物が多い森の中をものともせずに俺たちは駆ける、このくらいのステージはバトルルームで嫌というほど体験済だ。
「おい、盾役!!踏ん張れ!!」
「誰か、誰か魔法を早く!!」
「無理よ、もう魔力がないの」
先にオーガと戦っていたパーティと出会った、とりあえずは彼らが苦戦していたオーガの首をはね飛ばして挨拶する。
「こんにちは、良いお天気ですね。ここのオーガたち、手に余るようなら」
「我らが貰ってよいかのう、オーガを始末したくてうずうずするのじゃ」
グラアアアアアアアアアアアアアアアア!!
俺たちは話しかけたパーティは呆然としていた、別のオーガが話の途中でわりこもうとするから今度はプリムが雷の魔法でオーガをこんがりと焼いていた。
「い、いいです。どうぞ、オーガを倒してください」
「ありがとう。さぁ、オーガ狩りだ」
「さて、これで思う存分にやるのじゃ」
俺たちは新たにでてきたオーガに向き直り、俺はまずは一匹剣でその体を両断した。プリムは今度はオーガの体に傷がなるべく少なくなるように、鋭い水の刃で首を刈り取っていた。
「ひぃ、ふぅ、みぃっとざっと10ほどかの?」
「それじゃ、半分ずつだな」
思いっきり体を動かしてオーガに迫る、遅い、遅い!!一つ首をはねて、次のオーガに向かって疾走する。
「我の魔法を受けるがよい!!」
プリムは同時に複数の水の丸い刃を生み出し、5匹それぞれのオーガに狙いを定めてから解き放った。狙いは正確、オーガたちは首を失ってドスンッと地面に倒れた。
全部倒したと思っても油断はしない、索敵にひっかかるものはないか再確認をして剣についた血をぬぐって鞘に納めた。先ほどオーガと戦っていたパーティのところへ向かう。
「あのオーガの取り分はこの貴方たちが傷をつけてたオーガはそちらに、残りは俺たちが貰ってもいいですかね」
「うむ、皮を剥いで売るのじゃ。今日も氷菓子を買って食そうかの」
最初にオーガと戦っていた冒険者たちは、俺たちの提案に呆然と諾と答えた。
「は、はい。どうぞ、それでいいです」
その後はまず怪我を負っている者にプリムが回復魔法をかけた。そして、剥ぎ取りのお時間だ、切り込みを入れて魔法で皮と脂肪を分離するようにするすると皮を剥いでいく。
「こっちは済んだぞ、レイ。土魔法で残りは埋めてしもうた」
「俺も終わりだ、土魔法で埋めてっと……ああ、しまった!!」
「ど、どうしたのじゃ。レイ!?」
「さっきのオークたち、討伐の証明部位をとってない!!」
「そういえばそうじゃったの、今からすぐに戻ってみるかや」
「ああ、泥棒なんかに盗られたら大変だ」
結果としてオークの討伐証明の部位である牙は無事残っていた、俺たちはそれを引き抜いて冒険者ギルドに提出した。きちんと報酬も貰えたし、良かった。良かった。そんな些細なことのあった翌日のギルドで声をかけられた。
「なぁ、君たち俺たちのクランに入らないか?」




