05 成長期
「レイ、早く、早く、ゴブリンを退治しよう」
「わかった、わかった、置いていくな」
あれからまたプリムのレベルは上がって、それから光魔法を覚えた。森を通る時に枝などでかすり傷を負うのを魔法で治していたらしい。冒険者プレートではこうなっている、とにかく成長が速い。もしかしたら、俺はそのうち追いつかれるかもしれない。
名前 :プリムローズ
レベル:25
年齢 :15
性別 :女
スキル:剣術、毒無効、水魔法、光魔法
「獣人は成長が速いんだったな」
「そうだ、我はもっと速く、もっと強くなるぞ」
その言葉どおりプリムは身体的にも成長していた、俺の腰ほどまでしか無かった身長がいまでは俺の胸くらいまでに伸びている。俺も男の中で背が低いほうじゃないから、これは脅威的な成長だ。
ぎゃああぁぁあぁぁぁぁあああぁ!!
「ふっ、はぁ、え?ううぅ、とおお!!」
もうゴブリンの群れでもプリム一人でほとんど倒せるようになっていた、時折油断しているところを魔法で俺が手伝ったりする程度だ。
「今日は完璧だと思ったのだがな、レイ。すまんな」
「いやいや、すごい成長だよ。俺もレベル上げに励みますかね」
俺がレベルを上げる時はプリムは隠れて見ているようになった、さすがに背負って戦うには成長しすぎたのだ。
「よっと、ふぅ、そこだぁ!!」
今日、俺が戦っているのはコカトリスという石化能力を持つ鳥形の魔物だ。石化の効果がある視線を避けながら近づき、横からその首を叩き斬った。
「っと、まだまだぁ!!」
実はコカトリスの群れと遭遇したので丁度いいとレベル上げの相手になって貰った、石化の視線だけは面倒だが、あとは体当たり攻撃を回避できればそう怖い相手じゃない。
俺は既に石化無効を持っているが、慢心してはいかんので石化攻撃がくるつもりで余裕を持って攻撃を躱している。
しばらくすれば数十羽のコカトリスが首をはねられて地面にころがっていた、俺は久しぶりに冒険者プレートを見てみる。
名前 :レイ
レベル:123
年齢 :21
性別 :男
スキル:剣術、怪力、魔法剣、全魔法、毒無効、気絶無効、麻痺無効、石化無効
睡眠無効、即死耐性、魔王の祝福
よっし、レベルが一つ上がっていた。ここまで高レベルになると、レベルを一つ上げるのにも一苦労だ。
ん?一つとった覚えのないスキルがある、魔王の祝福ってなんだ。魔物を倒しまくったからこんなスキルを覚えたのか、ますます俺のプレートは他の人間には見せられない物になったな。
「レイ、治して」
「プリム、わざと腕を石化させたのか」
プレートを見ていたらいつの間にかプリムが傍に来ていて、石化した両腕を差し出していた。俺は石化が溶けるように想像しながらプリムに魔力を流していく、さほど時間はかからずにプリムの両手はいつもの手に戻った。
プリムのプレートには新しく石化耐性がついていた、またコカトリスかバシリスクを見つけた時には同じようにして石化無効にまでスキルを育てるのも悪くない。
「レイ、食事の用意をせよ」
「はい、はい、かしこまりました」
今日のメニューは鹿肉のステーキに、乾燥豆のスープだ。プリムは肉が大好きだから、鹿肉のステーキを何枚もお代わりしていた。
成長期なんだ、思いっきり食べると良い。最初に会った時はガリガリだったプリムだが、ようやく年相応の女性らしい姿になってきたところだ。
「あっさりしてるけど、美味いな」
「美味しい、何枚でも食べれてしまう」
レベル上げ、昼食、またレベル上げ、これが最近の俺たちの日常だ。ようやく命が狙われているような状況から解放されたのだ、他にもやることがあっていいのではないだろうか。
「プリム、今日はどこか遊びにいってみるか?」
「西の森のオーク達を倒しに行ってみたい」
おう、レベル上げ中毒患者は俺だけではなかったようだ。プリムもレベル上げの魅力にすっかりハマっているようだった。
だから昼食の後、少し休んだら俺たちはオーク狩りに出かけた。ゴブリンと違ってぶ厚い脂肪にプリムは苦戦しているようだった、俺は彼女の邪魔にならないように適度にオークを狩りながらその様子を見守っていた。
「はああああ!!」
見事にプリムの剣がオークの首を切り飛ばした、彼女は続けて別のオークに狙いをつける。結局二人で数十匹のオークを倒したようだ、魔物の繁殖力は強い。こんなに毎日オークを狩っているのに一向にいなくなったりはしない。
「もう少し平和な世の中ならいいんだけどな、プリム」
「うむ、我は食事が美味い平和な世界が好きだ。レイ」
「ああ、そりゃ俺も好きだわ。そういう世界」
「そうか、それは良いことだ」
俺の故国、ムーロ王国はセメンテリオ魔国に追い詰められていると噂に聞く、本当にご飯が美味くて平和な世の中だったら良かったのになぁ。