49 商隊護衛
「私が今回の商隊の長を務めます、コルボーと言います。皆さん、どうかよろしくお願いします」
「俺が護衛長を務めるラウンドという、こらからよろしく頼む」
商隊護衛ははっきり言って退屈だった、荷を運ぶ馬に合わせてゆっくりと歩いて進むだけだった。俺とプリムが道中で魔力操作の練習をしていたのは言うまでもない。
「ほらっ、レイ。こんどこそこれが馬じゃ」
「ふふふふふ、それじゃこんなのはどうだ!?」
「はう、三頭身の馬じゃと。可愛い、可愛い過ぎるのじゃ」
「ははははっ、こういうデザインもいいだろう」
俺たちは二人して手にひらサイズの氷の像を作って魔力操作の練習をしていた、それに誰も文句を言わなかった。
護衛長だというラウンドという男は寡黙で、コルボーという商人は何か言いたげだったが結局何も言ってこなかった。朝と夕に休憩をとって見習いの商人さんたちが食事の用意をしてくれた。
「護衛として出される飯だけでは足らんのう、レイ。肉を少し分けておくれ」
「はいはい、料理している暇がないから、柔らかめの干し肉を用意しておいた」
「グッジョブなのじゃ!!」
「そうだろう、もっと褒めてもいいんだぞ」
商隊から出される食事を俺たち以外の護衛は集まって食べていた。中にはプリムに不躾な視線を向ける者もいて、不愉快だったからローブをプリムに被せた。プリムもその理由を察して、移動中もローブを被って移動するようになった。夜寝る時は交代で見張りをしながら寝た。
「退屈じゃのう、レイ」
「そうか、俺は新しい魔法の操作について考えてる」
「それも飽きたのじゃ」
「はいはい、何なら背負ってやろうか」
そんな遣り取りを俺たちがしていても、誰も何も言ってこなかった。俺は鍛錬がてらプリムを背負って歩き続けた、プリムはそのまま俺の背中で眠ってしまった。
そんな気の抜けた日々が何日も続いた頃。
「女と馬車を置いていきな、抵抗するやつは殺す」
丁度フォルクス王国につく手前、ドクトリーナ王国との分かれ道。もうすぐ目的地という護衛が一番気が緩みやすいところで盗賊に襲われた。俺とプリムはすぐに行動を開始した。
「俺が盗賊を!!」
「我が護衛じゃな!!」
盗賊たちと護衛は切りあいを行っていたが護衛は次々と倒れていった。俺は逆に盗賊たちを打ち取ってまわった、そんな俺に向かって敵が集中する。
「まだまだ、プリムの攻撃の方がよっぽど強い!!」
俺に降り注ぐ矢の雨を風の魔法で追い散らしてまた一人盗賊を倒した。とうとう盗賊の一人が焦り出して、倒れている護衛たちに近づいて言った。
「なんだあの小僧は!?やられたふりをしてないで手伝いやがれ!!」
「ちぃ、くそあんな若造一人始末できねぇのか」
「やれ、やれ」
「こりゃ、話が違うぜ」
そうやって商隊の護衛だった者が盗賊側に加わった、その瞬間に激しい光とそれに伴う轟音が響き渡った。
「護衛の担当は我じゃからのう、なに片足を少し焼いただけじゃ!!」
プリムの雷の魔法が護衛だった裏切り者たちを行動不能にしていた。俺はそれを目の端で確かめると残りの盗賊を始末すべく疾走した。
「レイの言うたとおりじゃな、こやつら全員がぐるか」
「ああ、護衛のわりにはあまりにもやる気がなかった」
「我に不快な視線を送る者もいたのう」
「プリムも商品の一つに数えられていたんだろう」
「だから我らかや?」
「そう、だから必要もないのにランクが銅の俺たちを雇ったんだ」
俺たちは明らかに盗賊だったものは頭目を除いて止めを刺した。護衛だったものは両手を縛り、無理やり歩かせて無事にフォルクス王国へと入った。そこで盗賊に関与した者は門兵に捕縛されていた。着いたとたんに商隊の代表であるコルボーから礼を言われた。
「ありがとうございます、本当にありがとうございます」
「いや、礼はいいからさ」
「そうじゃ、礼は無用。お主もさっさと捕まるが良い」
「…………は?」
「とぼけて逃げようたって無駄だ、あんたの目はプリムを商品としてみていた」
「急に護衛を希望した我らを採用したのも其方だの、どうせ盗賊たちもすぐに白状するのじゃ」」
俺たちがそう言ったとたん、コルボーという商人は逃げようとした。だが、周囲にいた門兵に取り押さえられた。
なんのことはない、この商隊は見習いの商人と俺たちを除いて全員が盗賊と関与していたのだ。そう考えると商人見習いにも綺麗な女性が多かったし、近くのドクトリーナ王国あたりで全員奴隷として売り払うつもりだったのではないだろうか。
「私はこんな下働きの商人なんかで終わる男じゃないんだ、お前たち覚えておくぞ。絶対に復讐してやるからな!!」
コルボーはそう喚きながら連行されていったが、横領など他にも罪が見つかり公開処刑で縛り首となった。他の盗賊に関与した護衛も同じである。
「レイ、この氷菓子は美味いのう」
「うん、本当に魔法ではどう作ってるのかな、氷を薄く切ってからスライスするのか?」
俺たちは懐かしい氷菓子の味を楽しんだ、久し振りにきたフォルクス王国だ。他にも何か面白いものがあるだろうか。




