47 昇格試験
「彼女はお前たちのことを心配して言っているんだ、レベルは高いようだが本物の冒険者になるにはランクも大切なんだぞ」
「俺たちは青銅のランクで満足しているんだ」
「特に依頼に困ることもないしのう」
声をかけてきたのはランク金の冒険者だった、在野で最高の実力者というわけだ。新人が青銅、一人前が銅、腕が良い方が銀、かなりの実力者が金 国家級が白金と言われている。態度も落ち着いていて、話し方も冷静だった。だから、俺やプリムも無視するわけにもいかなかった。
「日頃から冒険者ギルドには世話になっているのだろう、ならば冒険者としてこちらもそれ相応の恩を返すのが道理というものではないのか」
「確かにこれからも冒険者ギルドには世話になると思うが」
「そう言われると無碍に断るのも失礼な気がするのう」
俺とプリムはもうそこで冒険者ギルドの注目の的だった、目立ちたくないと思っているのに真逆の道を突き進んでいる。
「冒険者ギルドに恩はあるが、それは討伐依頼などで返していくことにしている」
「我らにも我らの事情があるからのう、すまんが悪く思わなんでくれ」
「……………………そうか」
ようやく俺たちは冒険者ギルドから出ることができた、下手に絡んでくる輩よりもある意味で厄介だった。理屈からすれば圧倒的に俺たちの方が分が悪かったからだ。後になって宿屋に泊まった時にそのことについて話し合った。
「ランクを銅級くらいにはしておくべきだろうか」
「うむぅ、一人前くらいなら目立たんのではないかや」
その晩、二人で相談して昇格試験を一度受けてみることにした。外部通信装置などはその際はきっておく、自分の実力だけでの勝負だ。一晩経って冒険者ギルドに行ってから昇格試験の申し込みをした。
「銅級の昇格試験の申し込みをお願いします」
「我もじゃ、銅級で一緒に頼むの」
「はい!!考え直していただけて良かったです、さっそく試験を始めましょう」
ランクが銅級の試験はそう難しいものではなく、簡単な筆記試験と先輩冒険者との模擬戦それに面接ということだった。
「プリム、勝負だ!!」
「もちろん、受けてたつのじゃ!!」
筆記試験では僅かにプリムの方が点数が良かった、薬草などの植物学に詳しかったのがその原因らしい。
「食べれるか、食べれんかは大問題だからのう」
「……負けた、そんな理由で植物学を極めてるのか」
先輩冒険者との模擬戦も無難に終わった、どちらも銀級の実力者だということだが剣を躱して数度打ち合うだけで合格を貰えた。残りは面接とのことだった。面接は二人で同時に受けることになった。
「どうして冒険者になりましたか、目標はありますか?」
「食べていくのに冒険者になった、目標はのんびりと強くなることかな」
「我もほとんど同じなのじゃ、レイと一緒に強くなるのは楽しくてのう」
「依頼達成が難しい時にはどうしますか?」
「冒険者ギルドに相談して違約金を払って依頼を放棄する」
「早ければ早いほどいいのう、そもそも無理な依頼を受けはせぬな」
「依頼主は無茶な注文をしてきたらどうしますか?」
「最初に受けた依頼にないことはできないと断る」
「ただ働きはごめんじゃし、依頼主の機嫌を損ねることのないように断る」
他にもいくつか質問されたが、冒険者としては常識的なことで難しいこともなかった。
「おめでとうございます、貴方たちは今日から銅級の冒険者です」
「わー、嬉しい。どうもありがとうございます」
「レイ、棒読みすぎるのじゃ。もっと嬉しそうな演技をせんか」
こうして俺たちは一人前の銅級の冒険者になった、さっそく討伐依頼を受けようと思っていったらゴブリン退治くらいしかなかった。
「レイ、女の敵を成敗するぞ」
「奉仕活動……も悪くないか」
ゴブリン退治の依頼料はたかがしれているので、俺たちは依頼を受けずにゴブリンが出るという西の森に向かった。
「レイ、魔法はなしの縛りプレイじゃ!!」
「了解、ただしプリムは縮地と怪力を使えよ」
ぎゃっぎゃがやあぎゃあぁぁぁぁぁう
俺たちは森の近くの村から足跡を調べて、ゴブリンたちのねぐらを見つけ見張りの奴らを切り捨てていった。
「洞窟の中は魔法を使うぞ、剣では動きづらい」
「仕方ないのう、女子の危機でもあるし」
俺たちは洞窟の中まで行ってゴブリンを一匹ずつ確実に仕留めていった、幸いと言っていいかわからないが誘拐された女性は生きていた。
「ひっやだ、やだ、ゴブリン、もう嫌あぁぁ!?」
「大丈夫じゃ、我は女性ぞ。落ち着くがよい」
生き残った女性は男である俺に近づくのを嫌がった為、プリムが彼女を背負って村まで送っていった。とここで俺は失敗に気づいた。
「やっぱりゴブリン退治の依頼を受けておくべきだった」
「はて、レイの財布はそんなに困窮しているのかえ?」
「俺たちはいい、次にこんな依頼を受ける新人が困るだろう」
「あっ、そうじゃ。ただでゴブリン退治をしてしまったことになるのう」
俺たちは反省をして今度からは依頼をしっかりと受けようと思った、思えば今まで受けなかった依頼でも同じようなことがあったに違いない。冒険者ギルドと新人の冒険者たちに迷惑をかけてしまっていた。
「お前ら、本当にそれで冒険者か?」




