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「すまん、プリム助かった」

「れ、レイ。無理をするでない、お主内臓がいくつか潰れておったのじゃぞ」


「さすがはプリムだ、治癒の魔法。助かった、ありがとう」

「だから、無理を……言っても聞かぬようじゃな。この頑固ものめ!!」


俺はプリムの頭を少し撫でてから、巨大なゴーレムを引きつけておいてくれたシオンの元に戻った。


「すまん、シオン。時間を稼いでくれて助かった」

「元気があるようでなによりだ、このゴーレムは手強い。手足をいくら切り落としても無駄だった、きっと体の中に核があるんだと思う」


俺たちは巨大なゴーレムの攻撃を躱しながら打開策を考える。乱暴だが、魔法で核があるらしき場所を壊していくしかないのか。いや、ゴーレムも魔道具だとすればその核の部分には魔力が集まっているはずだ。


「シオン、こいつはしばらく俺が引きつけるから、魔力が強く集中しているところを攻撃してくれないか」

「わかったよ、任せてくれ。土属性の魔法は得意な方なんだ、……さてこの子の核はどこにあるのかな」


巨大な腕を振り回すゴーレムから飛翔して避けて回る、シオンに攻撃が当たりそうな時には結界を五重に展開して守り抜いた。


「わかったよ、そこが君の(こころ)だね」


シオンがすうっと息を大きく吸い込んだ、そして、ゴーレムの左腰辺りめがけてブレスを吐いた。俺もシオンの攻撃に続いて、魔法で炎の槍を叩きつけた。地上で隠れていたプリムも激しい雷撃を同じところに打ち下ろした!!


ぐおお、おおおおぉぉぉ


どうやらゴーレムの核を破壊できたようで、巨大なゴーレムは崩れ去っていった。そして、ゴーレムがいたところに透明で透き通った薄らを茶色い欠片が現れた。すかさず、俺はその欠片を手に取った。


「レイ、欠片が手に入ったなら逃げようか。時間が経つとあのゴーレムは復活するみたいだよ」

「おう、欠片は手に入れた。早くプリムを連れて逃げよう」


俺たちは何とか無事に欠片を手に入れて、巨大なゴーレムがいた部屋を逃げ出した。プリムが俺に抱きついてきたから、抱き抱えながら逃げ続けた。帰り道もシオンが案内してくれたおかげで迷うことなく、時々ゴーレムと戦いながら迷宮から無事に脱出できた。


「はぁ、今までで一番危なかった。俺が油断をしたからいけなかったんだけど」

「れ、レイは馬鹿じゃ。我はレイが死ぬかと思うたわ、レイは馬鹿じゃあああああぁ!!」

「おやおや、レイ。女性には優しくしなきゃね」


そのままシクシクと泣き続けるプリムを抱っこしてレプリックの都に帰ることになった、都に帰りつくころにはプリムは泣き疲れて眠っていた。そのまま寝かせてあげたかったけれど、土の迷宮のおかげで俺たちは泥だらけだった。


俺たち三人は交代で水浴びをして体を綺麗にした、その後は俺が厨房を借りていつもの野菜スープと猪の串焼きを大量に作った。三人ともお腹がすいていたから、大量に作ったはずの料理は見事に無くなった。


「レイは馬鹿じゃ、許さぬ。決してゆるさにゅ……」

「はいはい、プリム。ご苦労さま、ゆっくりと眠ろうな」

「レイは眠らないのかい?」


シオンの言葉に俺は無言で窓の外を示した、また弟がよこした暗殺者が来ているようだったからだ。


「ちょっと行って、サクッと片付けてくる」

「そうかい、ではプリムのことは任せておいてくれ」


俺が窓からでて裏路地に入ると殺気を放った暗殺者の二人が追ってきた、俺は最速で斬りかかってきたそいつの首を刈り取った。そして、もう一人に言う。


「パルスに伝えろ、いい加減にこんな馬鹿なことは止めろってな。それとも、お前もここで死ぬか?」

「…………承知した」


暗殺者の一人は仲間があっさり殺されたのを見て慌ててその姿を消した。俺は都を守る兵隊にいつものように襲われたことを告げ、遺体の場所まで案内したが既に遺体は誰かに荒らされた後だった。これもよくあることだ、裏通りで生きている者は逞しい。死体の物を盗っていくくらい珍しい話じゃない。


「これでいい加減、パルスも諦めればいいんだけどな」


結局、血の匂いがついてしまったのでもう一度俺は水浴びをするはめになった。シオンは俺が帰るまでプリムを守って起きていてくれた、見張りを交代してプリムのふわふわのしっぽをブラッシングしてやる。眠っていて意識もないのにいつもどおり抱きついてきた。


俺は半分は眠り、半分は無意識に索敵をしながら横になった。しばらくするとプリムが起きてきたので見張りを変わって貰った。今度はプリムがずっと俺の髪の毛を撫でていたようだった、気持ち良く眠ってしまったからその後のことは分からなかった。


「レイ、もう欠片のことは忘れて魔国にでも行って暮らさぬか」

「いきなり何をって、ああ。俺が大怪我をしたからか?」


「我はもうレイが傷ついて死にかけるようなところは見たくない」

「あれは俺の油断が招いた事態だ、迷宮にいたからじゃない」


「迷宮自体が危ないところではないか、我はもう行きたくないぞ」


起きてからプリムはこう言って耳を塞いでしまった、俺はその両手をつかんで耳から離して聞いてもらう。


「プリム、どんなにレベルが上がっても、どんなに強くなっても死ぬ危険はどこにでもある。でも、そんな俺をプリムは助けてくれただろ。俺は行くぞ、最後の迷宮に。前に言っただろう、プリムは俺がどんな姿になろうとついてきてくれると」

「れ、レイの頑固者め。そう言われてしまったら我も、我も行かずにはいられないのじゃ」


プリムは俺に抱きついてまたわんわん泣いた、俺はよしよしとその頭を撫でてやる。人間どこに行ったって死ぬ時は死ぬのだ、どうせどこで死ぬのか分からないのなら思いっきり人生を楽しんで生きてやる。


……とここで控えめだが切羽詰まった声がかかった。


「ああ、君たちの仲が良いのは良いことなのだが、そろそろ朝食にしないかね。まずは食べるものを食べないと元気もでてこないものだよ」


そう言って気まずげにシオンは苦笑していた、俺とプリムは顔を見合わせて思わずきまずくなりお互いに苦笑いを返したのだった。

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