04 人間ではなくて
「よし、止めを刺せ。プリム!!」
「わかったぞ、人……レイ!!」
プリムのレベルもようやく10を超えてゴブリンくらいなら楽に止めを刺せるようになった。彼女とは別にして、俺のレベル上げも順調に行っている。
「プリム、絶対に顔を出すなよ!!」
「分かった、人……レイ!!」
現在、俺はプリムを背負ってオーガと戦っている。オーガは魔法も使う恐ろしい人食い鬼だ。
ぐらあああああああああああああああああ!!
「そんなものくらうか、とう!!」
オーガが咆哮とともに氷撃の魔法を吐きだしたが、俺は火炎の魔法で全部叩き落とした。そのまま勢いにまかせてオーガの首を一刀両断してやる、やっぱりアダマンタイトの剣は固くて使いやすい。
レベルが100を超えたころから、どんなに丈夫な鉄の剣を持ってもポキポキ折りまくっていたからな。家宝のこの剣をこっそり持ち出すまで、剣代がかかって大変だった。
ぐらあああああああああああああああああ!!
「おりゃあ!!はああ!!」
「凄いぞ、人……レイ!!」
俺はオーガの群れを片っ端から斬ってまわった、たまたま巣穴を見つけたのだ。ここにいたオーガ達は運が悪かったとしか言いようがない。オーガ達を全滅させてから、慎重に『光』の灯りとともに洞窟に入っていく。
「プリム、ちょっと目をつぶっていてくれ」
「分かったぞ、人……レイ」
数名の裸で腹を内側から破られた女性がそこで亡くなっていた、なかにはプリムくらいの年齢の子もいる。これだからゴブリンやオーク、オーガは嫌いだ。どうして同族同士で繁殖しないのか、人型の女性を攫って繁殖する習性を苦々しく思う。
洞窟をでてから血生臭いがはぁ~と息をはいた、プリムを背から下ろし『無限空間収納』にオーガの内臓だけを抜いて、残りの体をひょいひょいっとしまっていく。後で都のギルドに売りつけるのだ、オーガの皮はいい革細工になるから金になる。
『無限空間収納』は上級魔法の一種だ。これを習得しておくと凄く便利で、この空間に入れている間は物は腐らないし、かなり多くの物が収納できる。
「それじゃ、川までいって昼飯を食べよう。プリム」
「うむ、大義である。そのようにするがよいぞ、人……レイ」
最近、プリムは俺を人間と呼ばないようになった。言い間違えることはあるがようやく名前を憶えてくれたようだ、暗殺者ごっこもしなくなった。
「今日は主菜は魚にしような、それと肉の入った野菜のスープだ」
「好きにするがよい」
うんうんと頷いてプリムは俺が料理する様子をじぃっと見ている、もう少し大きくなったら料理をさせてみてもいいかもしれない。
「美味いかー?」
「もぐっ、むぐっ、美味い!!」
最初のうちは食べ過ぎで動けなくなったりしたプリムだったが、毎日しっかりとした食事が出ることで食べ過ぎるような悪い癖はなくなった。
好き嫌いもないようで何を出しても美味い、美味いとよく食べる。作る方としては嬉しい限りである、おかげで表情筋がゆるみっぱなしだ。
「午後からはまたレベル上げにいこうな」
「うむ、我は強くなる。レイよりもずっと強くなる」
戦闘でもプリムは最近、積極的になってきている。以前のような諦めきったような無表情でもなくなった、良いことがあれば目が輝いているし、嫌なことがあれば狼の耳と尻尾がだらんと下に垂れている。
「とおぉぉ!!」
ぐぎゃあぁあぁ!?
おお、とうとうプリムが一人で一匹のゴブリンを仕留めてみせた。新しく買った片手剣を振って嬉しそうに笑っている。冒険者のプレートを見たら、こうなっていた。
名前 :プリムローズ
レベル:11
年齢 :15
性別 :女
スキル:剣術、毒無効、水魔法
うん、レベルも順調に上がっているし、剣術や水魔法のスキルが新しくついている。プリムの頭を遠慮なく撫でてほめておいた。
「プリムは凄いなぁ、良い子だなぁ」
「そうだ、我は凄くて良い子なのだ。レイ!!」
プリムも頭を撫でられたら俺の足に抱きついて喜びを示した、お互いに笑顔でじゃれあっていたら邪魔者がわらわらとでてきた。
ぎゃああおああおあお!!
ぎゃしゃああああああ!!
ぎゃぎゃぎゃぎゃああ!?
「プリム、俺から離れないようにして目の前の敵に集中しろ!!」
「分かったぞ、レイ!!」
俺はプリムが狙っているゴブリンを除いて、他のゴブリンを次々と切り裂いていった。魔法を使うものもいたから、同じ魔法で迎撃して更に止めも刺しておいた。
「とう!!ふうっ!!切り裂け!!」
プリムは片手剣を使うだけじゃなく、水魔法で水の刃を生み出してゴブリンを狩っていた。体力的な問題はあるが、ゴブリン数匹程度なら任せても大丈夫なようだ。
そうして今日もレベル上げが終わった、宿屋の井戸でお互いに水浴びをする。最初に体を洗ってやったことから、プリムは俺と水浴びをしても別に嫌がらなかった。
それに暗殺者ごっこは止めたが、夜にベッドに潜り込んでくるのは止めなかった。俺も抱き心地のいい枕がいてくれて、とても快適に眠れている。
「おやすみ、プリム」
「うむ、眠るがいい。むにゃ、レイ」