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39 土の迷宮



「だから、アイツに会うのは嫌なんだ。もういっそのこと直接勝負してやろうか」

「暗殺者が一気に増えたのう、やはりレイの弟の仕業かのう」

「人間はどうして兄弟で殺し合うんだい、発情期ならまだ理由もわかるけど」


俺たちはロンボス国を出てから頻繁に暗殺者に狙われた、その回数は数えると二日に一度は襲われていることになる。おかげで交代で見張りをしながら眠ることになった。


「それにしてもシオンは結構、剣が使えるんだな」

「僕たち龍が人化した時の武器はこれしかないからね、龍の時のように牙を振るうようなものだよ」

「爪と剣では随分と違うような気がするがのう」


本当は龍であるシオンが装備している剣は自分の牙を変化させたものらしい。その切れ味は素晴らしくよかった、またシオンはようやく人間の体を使いこなせるようになったようだ。


「二人とも巻き込んで、申し訳ない」

「なぁに、我は対人戦の訓練ができて助かるくらいぞ」

「僕もこの体の使い方が分かってきたよ」


シオンは最初の方こそ守られるだけだったが、体の動かし方を覚えるにつれて人間よりも速く動くようになった。また、その体は龍が変化したものなので頑強で普通の剣では傷一つ負わないのだった。


「人間の生活は面白いなぁ、特に僕はこのベッドっていうものが気に入ったよ」

「シオンは何というか凄いな」

「天然というやつじゃな」


駅馬車の移動中もシオンはぐっすりと眠っていることが多かった、とにかく眠ることが大好きなようだ。あれだけガタガタと揺れる駅馬車でも器用に睡眠をとっていた。


「この砂糖漬けと干した果物が僕は気にいったよ、僕でも作れないかな」

「オーガの一匹でも狩って皮を剥がせば、砂糖漬けでも干した果物でも買えるぞ」

「今度、オーガ狩りをするのじゃ」


五つ目の迷宮があるレプリック王国へ向かっていたが急ぐ旅でもないので、途中でオーガ狩りをしたりした。そして、シオンに魔法での皮の剥がし方と冒険者ギルドでの売却の仕方。他にお金の使い方を教えておいた。


シオンは龍だけあって魔力が高く『無限空(インフィニット)(スペース)収納(ストレージ)』の魔法をすぐに覚えた。これで財布を持つ必要もない、シオン自身は甘い物が買えるようになって大喜びをしていた。


また、冒険者ギルドでシオンにもギルドカードを作っておいた。


名前 :イントゥシオン

レベル:102

年齢 :153

性別 :男

スキル:剣術、怪力、魔法剣、全魔法、飛行、ブレス、毒無効、

    神々の祝福、龍王の祝福、神々への挑戦者


また誰にも見せられないギルドカードが一つ出来上がった、ギルド職員からはカードを受け取ると同時にすぐに隠して中身を見せないようにした。もっともシオンの相手をしたギルド職員はその美貌に釘づけになっており、ギルドカードの年齢やレベルなど異常な点に気づかれずにすんだ。


「おっ、もうすぐレブリック王国の都だぞ」

「美味しいお菓子があるといいね」

「美味しいものがあるといいのう」


レブリック王国の都に入ってすぐに飯屋と甘味を探して、露天商を片っ端から巡ったのは言うまでもない。プリムは豚肉と米という食べ物が気に入っていた、シオンはまた別の果物でできた砂糖漬けを手に入れていた。


さて、肝心の迷宮はすぐに見つかった。レブリック王国でもその迷宮は有名だったからだ、有名なのだが人気の無い迷宮でもあった。


「まぁ、ゴーレムがこれだけ出てくれば人気もないだろうな」

「ゴーレムは魔石以外売るところがないからのう」

「ここの迷宮は変わっているね、道がどんどん変わるよ」


ゴーレムたち自体はアダマンタイトの剣をもっている俺の敵ではなかった、この剣でならゴーレムもバターのように切って壊すことができた。問題なのは迷宮の構造が時間が経つと同時にどんどん変わっていくことにあった。


「この道は印がつけてあるから、さっきも通った道だな」

「むう、地図を作っても、作っても、構造がころころ変わるからキリがないのう」

「そうだね、この道をいかないと厳しいね」


「そうか、道を行かないといけないのかってシオン!!道があったのか!?」

「それは早く行って欲しかったぞ!!」

「ああ、ごめん。僕もさっき見つけたところだった、一つだけ違う土で作られた道があるみたいだ」


俺とプリムはシオンが指さした地面を見たが、二人ともその違いが分からなかった。俺とプリムだけでは数カ月くらいこの迷宮で彷徨っていたかもしれない。シオンに感謝しながら俺たちは正しい道を辿り始めた。


「あちこちに人骨があるのが怖い、この迷宮はシオンがいなければかなり厄介なところだ」

「帰ろうとしても帰り道が分からなかったのであろうな」

「誰が作ったか知らないけど、遊びで作ったんならもっと楽しい遊び方をすればいいのに」


時々、ゴーレムに加えてゾンビやスケルトンなどが襲い掛かってきたが、プリムの光属性の浄化魔法でなんなく消えていった。来世があるならそこで幸福にと祈っておいた。


「あれが欠片の番人かな?」


そう言ってシオンが指さした先には一際大きなゴーレムが待ち構えていた、大きさはちょっとした屋敷くらいはあるだろう。


幸い飛翔できるくらいの広い空間だったので、ゴーレムの振り回す腕を避けながら隙をみて片腕を切り落とした。そして、ひと息いれた瞬間に切り落とした腕が宙に浮き、俺はその腕に殴られて壁に叩きつけられた。


「レイ!?」


プリムが近くにやってきて光の治癒魔法をかけてくれているのが分かった、ドラゴンの皮は刃物などは通さないが衝撃を全て消してくれるわけじゃない。完全に油断していた俺の失敗だった。


「さぁ、さぁ、君の相手は僕がしよう」


俺をプリムが治療してくれている間、ずっとシオンがゴーレムを引き付けてくれていたようだ。

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