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34 偽りの光



「うわあああ、キラキラしていて綺麗だのう」

「質のいい魔石みたいだな」


「レイは女心と言うものがわからんかや」

「女心どころか、男が何考えてるかも分からないよ」


アーマイゼ魔国の宝石店の店先に並べられた宝石をプリムはじぃっと楽しそうに見つめていた。この国は沢山の宝石の主な産出国なのだ。宝石に夢中なプリムを見ながら、俺は自分の半生を思い返してみた。


俺は人生のほとんどをレベル上げに費やしていたからな。子どもの頃は両親の剣術と魔法の猛特訓で忙しかったし、騎士になってからは騎士と冒険者との二重生活で目がまわるように忙しかった。


同年代の男はもちろん女性とも話したり、遊んだりした記憶がない。あれっ、俺って結構ボロボロの人間関係ではなかろうか。いやいや、今はプリムがいるんだ。ちゃんと会話もできるし、友人としていい関係が築けていると思う。


俺はそう自分の人生を振り返って、まだキョロキョロと宝石たちを眺めているプリムに言ってみた。


「そんなに気に行ったのなら買っていこうか、例えばその指輪とか」

「なんと!!そそそそんな大切な物を買って、迷宮に行ったりした時に失くしたらどうする!?」


「でも、結構冒険者で多いぞ。宝石を金銭代わりに持っている奴、軽くて嵩張らないから良い財産になるんだ。確かに紛失する危険はあるけどな」

「うむむむむ、財産管理の話しかや。それでは必要ないぞえ」


プリムはがっくりと肩を落として宝石店を後にした、俺はどうやら女心が読めなかったようだ。……もっと勉強しておこう。


「それにしても、今度の迷宮は難しいな」

「ここもそうじゃが、六つの迷宮を考えた奴は性格が悪いのう」


「親切な迷宮なんか、宝を盗み放題じゃないか」

「うぅ!?……そう考えれば迷宮の作り手としては優れておるのじゃ」


アーマイゼ魔国にある迷宮は光の迷宮と呼ばれていた。迷宮が六属性に合わせて作られているという俺たちの仮説が正しいとすれば、この迷宮を踏破するには光属性の魔法が必要になる。だが、その使い方がわからないのだった。


「レイ、オーガじゃぞ!!」

「いいや、気配ではプリムの後ろだ!!避けろ!!」


「ひえええぇぇ!!」

「とう!!」


俺はプリムの後ろにいたオーガを一刀で切り裂いた。この光の迷宮という広大な森に入った俺たちは彷徨っていた、それは迷宮の構造に問題があったのだ。見ている光景と実際の迷宮が異なっているのである。


右に道があるように見えて、言ってみるとそこはただの壁だったりした。また魔物が左にいると思ってよけると、実際は右から襲ってくることもあった。


「どこが光の迷宮なのかや?」

「探索で魔物の気配はわかるけど、目的の欠片がどこにあるかはわからないな」


「飛翔の魔法で見つけようにも、樹木が茂っていてろくに地面もみえやせんわ」

「正々堂々と何か道を見つけろっていうことなんだろうな」


今日もあちこちから襲い掛かる魔物を相手に光の迷宮で散々苦労して、何も得られずに帰ることになった。プリムは帰るなり水浴びを済ませるとぐったりとベッドに横になってしまった、俺も考えすぎて疲れたのでそれにならって横になることにする。


「なにか光に関係することがあるはずじゃ」

「それか最悪、光をさえぎる森を全部焼き尽すとかかな。他の人が迷宮に入っていたらできないけど」


「光、光、そうじゃ。闇の迷宮では闇が鍵になっておったな!!」

「何か思いついたのか?」


プリムは少し考えこみながら小さく頷いた、どうも自信のある答えではないらしい。翌日、プリムが思いついた案を試してみることになった。


「なんと、こんな簡単なことだったのかや!?」

「あー、明るい時にわざわざ魔法で灯りをともす奴はいないよな」


光の迷宮はプリムが強い灯りの魔法を使うと実際の迷宮を映し出した、今までは偽物の光で作られた幻の中を歩いていたのだった。


「ただし、この灯りの魔法。相当に強い光を発せねば正体を現さぬぞ」

「光属性に強い魔法使いが要るわけだ、プリムには引き続き灯りの維持を任せる」


正しい道がわかると俺たちはそう間をおかずに迷宮の中を進むことができた、強めの魔物にはサイクロプスやアルラウネなどがいたが、今や俺のレベルは411である。あっさりとはいかないが、余裕をもって倒して進むことができた。


「れ、レイ。魔法がもたぬ、休憩をしたいのう」

「おう、わかった」


この迷宮を踏破するのに必要なのはプリムの魔法と俺の強さだ。迷宮の比較的安全そうなところに天幕を張って食事をさせた後でプリムを休ませた。


「よし、もういいぞ。先へ進むのじゃ」

「おお、分かった」


そうやって休憩をはさみつつ、ゆっくりと確実に進んでいってなんと十日も迷宮を攻略するのに時間がかかった。最後の方は疲労のあまりふらつきながら、また透き通った欠片を一つ見つけたのだった。


「レイ、帰りはどうするかや?我はもう疲れたぞ」

「簡単だ、プリムを背負って飛翔の魔法で飛んでいけばいい」


「なるほど!!それは素晴らしい案じゃな!!」

「それじゃ、帰るぞ」


十日ぶりに宿屋に着いたときにはプリムはもうふらふらで、水浴びも俺が支えて洗ってやる有様だった。そうして食事もとらずに二人で久し振りの睡眠をむさぼった。


取ってきた欠片は薄らと黄色い欠片で、他の二つと合わせると確かに凹凸が組みあう場所があった。六つの欠片があるという推測も今のところは当たっているようだ。


次に行くところは人間界になるのだが、余計なことに巻き込まれなければいいなと俺は思っていた。

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