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32 闇の欠片


「これだけ探しても見つからないのじゃ、もしかしたらここは外れかもしれんの」

「うーん、何かが足りない気がするんだ。プリム、何か思いつかないか?」


「そうじゃのう、暗くて姿は見えずとも虫どもはそこにおって怖いのう」

「…………姿は見えないがそこにいる」


俺はプリムの言葉で思いついたことがあった、最初のケントルム魔国で俺は火炎で虫たちを焼き尽した。その後で、あの欠片を見つけたのだった。俺は最初の欠片を取り出してよく観察してみた。そうすると、ふと思いついたことがあった。


「プリム、灯りを一旦消してから障壁を張ってくれ」

「なっ!?虫どもに障壁が破られたら、恐ろしい死に方をするぞ」


「そこはプリムの障壁の強さを信じて任せる」

「何か考えがあるのじゃな」


プリムが灯りを消し、ズザザザザザザザッと虫たちが障壁に群がるのが分かった。俺は闇の魔法の凍結を使ってどんどんこの場所から熱を奪っていった。


「凍えるように寒いのう、レイ。どうだ、欠片の場所は分かったか?」

「もう少し、この最下層を歩いてみよう」


プリムを背負って障壁を維持してもらったまま歩いていき、俺は目的の場所に辿り着いた。目には何も見えなかったが障壁の中にそれが入った途端、僅かに輝く透き通った闇色の欠片であることが分かった。


「おお、本当にあったのかえ!?」

「ああ、これでこの場所ともおさらばだ」


手を伸ばしてその欠片をとる、すると同じ欠片がまた現れた。しかし、今度も取れるのは一つだけのようだ。


「それじゃ、プリム。雷で虫を薙ぎ払ってくれ、俺がその道を飛翔して帰るから」

「了解じゃ、これでこの場所ともお別れじゃの!!」


俺たちは無事に謎の欠片を見つけて宿屋に戻った、最初の欠片を確認すると薄らと赤い欠片であることが分かった。今回見つけた欠片は薄らと暗い色をした欠片だった。


「レイはどうして欠片の場所がわかったのかや?」

「二つの欠片を見比べてみるといい」


「………………これは、もしかして!!属性ごとに欠片が分かれているのかのう」

「俺が思いついたのがそれだったんだ。最初の欠片は虫たちを焼き払った後に現れた、つまり火属性の欠片なんじゃないかと思った。なら迷宮は闇を現していたから、光を当てると欠片は見つからなくなるのではないかと」


「面倒な罠が仕掛けられているものじゃ、ということは他の欠片もその属性ごとに隠され方が違っておるのではないかや」

「恐らくそうだ、だからこの欠片たちは六属性全ての魔法を使えないと見つけることが難しい。それもせめて中級魔法くらいは使えないとダメだろうな」


「探せる者がほとんどいないわけじゃ、レイは闇属性は得意ではなかろう。疲れたのではないか、はよう休むと良い」

「ああ、レベルが上がっていたから上級魔法まで使えたが、魔力の消費量はやはり得意なものに比べると多いな」


「ほれほれ、ゆっくりと休むのじゃ」

「そうだな、今夜はしっかりと眠らせて貰う」


フィルス魔国での欠片は見つけた、レベルも随分と上がった。次はアーマイゼ魔国にある迷宮だ。そう考えながら、俺は眠りにおちていった。


「レイ、レイ!!起きておくれ、妙な気配がする。おそらく敵が来たのじゃ!!」

「――――何!?」


真夜中にプリムに叩き起こされて俺は借りていた部屋を出た。飛び起きてから改めて周囲の殺気をさぐれば、宿屋の外には大きな魔力を持っている魔族が数名そこここに佇んでいた。


「どういうことだ、何が起こっている?」

「我にもわから…………」


「そこの出来損ないを始末しにきたのよ、プリムローズ」

「ヒッ!!」


俺たちの前に現れた何人もの魔族、その中心にいるのは女だ。金髪に碧眼で剣を持ち、プリムのことを睨みつけていた。


「適当な人間に無残に殺させようとお遊びで強制転移させたのに、その人間をたらしこんでまさか生きて帰ってくるなんて。ああ、嫌だ。妾の子としては正しい本能かしら、男に媚びを売るしかない馬鹿な女」

「黙れ、プリムのことを知らないくせに悪く言うな!!」


「あら、よく知ってるわよ。だって汚らしい人狼の血が入っているけど、一応は私の妹ですもの」

「……プリムの姉にしては随分と性格が悪いんだな」


「たかが人間風情がそんな小娘に随分と入れあげているのね、やっぱりあっちの具合がよっぽどいいのかしら。……城に持って帰って奴隷たちにあげるのも楽しいかもね」

「このくそ女!!」


不気味に佇む数名の魔族を背景にして、俺はプリムの姉を切り捨てようと動いた。しかし、護衛の魔族が女を守ったことと、プリムが怯えて俺にしがみついてきたことでそれは叶わなかった。


「馬鹿な妹、そこで人間風情と一緒に死ぬがいいわ」

「はあああああ!!」


俺はプリムを抱えながら襲ってくる魔族の攻撃を避けた、平気だプリムがいるくらい何のハンデにもなりはしない。まだ弱かった頃はよく片腕を負傷して戦ったものだった。


「ぎゃあああああ!!」

「こ、こいつはあああ!?」


プリムを抱き抱えて既に二人を始末した、魔法で風の槍を生み出し更に5,6人を倒してやった。こいつらは弱い、これだけ弱ければ問題ない!!


「あ、あんたは一体!?」

「グレーテ様!!」


プリムの姉だとかいう女も護衛ごと剣で叩き斬ったやった。全員が絶命しているのを確認してその場を離れる。もうこの国には用はないからだ。


「プリム、プリムしっかりしてくれ」

「あ……ね、ねえさまは……」


「あいつはもういない、今から国を出るからな。歩けるか?」

「す、すまぬ。む、無理じゃ、歩けぬ」


「そうか、分かった」


俺はプリムを背負って外壁を風の魔法で飛び越え、アーマイゼ王国の方向へと走った。プリムはずっと俺の背中で震えていた、少し泣いてもいた。


夜が明けたら森の中で休憩をとった、プリムはようやく眠った。俺はプリムと昨夜殺した女のことを考えながら、プリムを見守っていた。


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