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31 暗闇の迷宮 



「今日の晩飯はなにかや?」

「昼は猪だったし、晩は鹿肉にしておこうと思う」


「あっさりとした鹿の肉も我は好きじゃ」

「プリムには食べ物の好き嫌いがないので助かる」


一冬が過ぎて俺たちは謎の欠片を探す旅に出ていた、いやそれは口実で旅をしたいから適当な理由をつけていたといったほうが正しい。


「フィルス魔国に行ったら、レイは我の奴隷ぞ」

「分かってる、プリムこそ主人らしく振る舞ってくれよな」


フィルス魔国は話を聞くと人間について厳しい国だ、そこにいる人間は全て奴隷で金銭でやりとりされているというころだった。だから、形だけ今度は俺が奴隷の役をして、プリムが主人役になるわけだ。


幸いケントルム魔国とフィルス魔国は隣同士の国だ、俺たちが謎の欠片があると思っている過去の六大国は元々は一つの国だったと聞いている。だから俺たちの行く国は比較的近くにあるのだ。


「そろそろ国境じゃ、レイ。準備はいいか?」

「はいはい、ちゃんと首輪はつけてるよ」


首輪らしくて、でもアクセサリーでも通るような形の物。プリムが真剣に選んで探した逸品だ、失くしたりしたらあとが怖い。


「獣人と人間の奴隷か、奴隷なのに随分といい服を着せているな」

「我の護衛も兼ねておるからじゃ、通行料はこれでよいかえ」


「人間にあんまり甘い顔をみせるなよ、奴らはすぐにつけあがる」

「親切な忠告に感謝するぞ、それではな」


最初からこの国のことを調べておいたおかげであっさり国の中に入ることができた、今のやりとりでも分かったがここは人間に随分と冷たい国だった。


「プリム、裏通りを覗くなよ。あちこちに人間の死体がある」

「表通りも綺麗とは言い難いのじゃ、ここは怖い国かものう」


「奴隷制度がある国は大抵どこかが歪んでいる」

「奴隷なぞ、本当に嫌な国よな。なるべく早くここを出ていきたいのじゃ」


とりあえず、宿屋をとって休むことにした。低級な宿屋を選んだので、料金を多めに払えば奴隷でも宿泊ができるということだった。


「早くこの国の迷宮を突破して、次の国へ移ろう」

「うむ、レイのご主人さまをしていても、この国ではちっとも面白くないのじゃ」


翌日からフィルス魔国の迷宮に入ることになった、この国の迷宮はまた少し変わっていた。


「れ、レイ。何も見えんのじゃ、手を握っておくれ」

「ここだプリム、魔法で灯りをともせ。それ以外の光は全て迷宮に吸収されるようだ」


ぎゃああああおうがああああぁぁぁあぁ!!


「えい!!」

「はあああああ!!」


出てくる魔物は弱い者はスライムやゴブリンなどいつもと変わりが無かったが、あちらはこの暗闇でも行動できた。こちらは灯りがないと身動きが出来なかった。そのおかげでこの迷宮は人気がなく、潜っているのも俺たちくらいのものだった。


ガサササササササササッと何かが地面を走る音がした、プリムが思わずその身をすくませる。


「レイ、あやつらじゃ。早く、早く、焼き払っておくれ――――!!」

「わかったから混乱するなよ、ここではぐれたらお互いに見つけ出せないで虫どもにやられるぞ」


それを聞いたプラムは俺の背中にしっかりとしがみついた、俺は魔法の火炎の球を何個も撃ち出して姿が見えない虫たちを片付けていった。


「ほらっ、プリムも頑張れ」

「うぅ、見えないのがいいような、悪いような複雑な気分じゃ」


プリムにも雷を魔力で生み出して貰い、虫どもを焼き殺して貰った。俺よりプリムの方がレベルが低いから、その埋め合わせという為でもあった。


「レイ、もう魔力がもたんぞ」

「一旦帰ろう、何日かかけてゆっくりと攻略すればいい」


十数日のレベルあげで俺たちのギルドカードはこうなった。


名前 :レイ

レベル:367

年齢 :22

性別 :男

スキル:剣術、怪力、魔法剣、全魔法、獣の目、毒無効、気絶無効、麻痺無効

    石化無効、睡眠無効、即死無効、魅了耐性

    魔王の祝福、神々の祝福、龍王の祝福、神々への挑戦者


名前 :プリムローズ

レベル:210

年齢 :15

性別 :女

スキル:剣術、全魔法、毒無効、麻痺無効、石化無効、睡眠耐性、魅了耐性

    神々の祝福、龍王の祝福、神々への挑戦者


しかし、虫どもを追い払って最下層まで辿り着いたものの、今度はあの欠片のようなものを見つけることができなかった。


俺とプリムは虫どもと挌闘しつつ、欠片を探して迷宮を彷徨うのだった。

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