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03 拾った女の子



狼少女を拾ってしまいました、痩せていてボロボロの服を着ていて機嫌は絶好調です。何が言いたいのか分からないと思うが、とりあえずこの白い髪に赤い瞳の女の子が何にでも興味深々だということはわかった。


ご飯皿でも眺めまわしてるし、俺なんかあちこち匂いを嗅がれたし、勘弁してください。


「人間、お腹がいっぱいだぞ。特別に褒めてつかわす」

「そりゃ、良かったね。ついでに体を綺麗にしておこうか」


近くにあった川の水で体を洗うようにシャボンをあげると、不思議そうにそれを見た後に舐めて嫌そうな顔をしていた。いや、それ食べ物じゃないから。


もう女の子だということに遠慮せずに、ゴシゴシとシャボンでその子と着ていた服を洗うことにした。最初は嫌がっていたが、レベル122の俺に敵うわけがない。『乾燥(ドライ)』の魔法をかけたら、体も服も乾いたので痩せてはいるがとても可愛い女の子になった。


「今日は都に帰ろうか」

「むう、逃がさないのだぞ。人間、覚悟しておけ」


どうもこのプリムローズさん、略してプリムさん。言葉は通じるが話が通じないタイプのようだ、俺は都の門を通る時に彼女の分の仮の身分証を発行して貰った。ついでに彼女の身の上を相談してもみた。


「今日、西の森で拾った子なんですけど、ディレク王国には孤児院ってありますか?」

「なくはないが、孤児院はいつもいっぱいだぞ。そのお嬢ちゃんを入れてくれるところがあるかどうか」


俺と門兵さんがプリムを見ると、彼女は無表情で平然としていた。俺たちの言っていることが分かっているのか、分かっていないのか判断し辛い。


その日は俺の止まっている宿屋で二人部屋に移動して、プリムと一緒に泊まることになった。明日になったら、レベル上げの前に孤児院をまわってみるつもりである。


「くくくっ、油断したな。人間、覚悟するのだぞ」

「………………眠れないのか、………………よしよし一緒に眠ろうな」


「ち、違うのだぞ。人間、我がこれからお前を殺すのだぞ」

「………………ふぁーい、それはプリムには無理です」


俺は夜中に俺のナイフを持ってベッドに突撃してきたプリムを捕まえた、特に怒るようなことでもなかったのでそのまま彼女を腕の中に確保して寝た。


暗殺者ごっことか、随分と物騒な遊びをする子だ。本物の暗殺者はもっと自然にごく普通の人間を装って近づいてくる、狼少女のプリムでは最初から無理な配役だな。


そう考えて俺は眠ってしまった、睡眠無効のスキルがあるとはいえもうここは敵がいる我が家ではないのだ。ならばぐっすりと睡眠をとって、翌日のレベル上げに備えなくてはならない。


「プリム、暗殺者ごっことか止めなさい。刃物を持ってたら危ないし、お友達が出来ない俺みたいな子になるぞ」

「我は諦めないのだ、人間。でも、方法を変えるのには賛成だ。人間」


俺はプリムに暗殺者ごっことか変な癖がついていることから、都の孤児院に入れることを諦めた。代わりに冒険者ギルドに連れて行った、もちろん身分証のプレートを作って貰う為だ。そこで俺は珍しく悲鳴を上げかけた。


名前 :プリムローズ

レベル:1

年齢 :15

性別 :女

スキル:毒無効


レベルが1!?何度も見たが結果は変わらなかった。この狼少女、ひょっとしたら軽く投げた石が当たって死ぬかもしれない。


「レベル上げ、レベル上げにいこうプリム!!」

「よく分からない奴だな、人間」


レベル上げ大好きな俺にとって、レベル1なんてとても見逃せない。俺は比較的安全な東の森にいたゴブリンの四肢を砕いて、プリムに短剣で止めを刺すように言った。


「えいっ、やぁ、とうっ、はぁ、はぁ、はぁ、もう疲れたぞ。人間」

「まだ一匹目だぞ!?」


それからはなんとかプリムをなだめて同じことの繰り返しだった、俺がゴブリンを瀕死にするプリムが短剣で止めを刺す。その甲斐あってレベルは一気に5まであがった、低い方がレベルは上がりやすいのでこのくらいは当然だ。


「美味しいぞ、人間」

「そりゃ、良かった。お代わりできるなら、いっぱい食べな」


プリムが瀕死のゴブリンと挌闘している間に、俺はリスや鳥を数匹仕留めていた。それを肉団子にして入れたスープや鳥の丸焼きなどを作った、プリムは無表情のまま大急ぎで食べていた。


「誰もとらないから、喉がつまらないようにゆっくり食べな」

「………………毒入りか、いや人間も食べてるな」


一瞬、雷に打たれたかのように食事を遠ざけたプリムだったが、俺が平然と同じ物を食べているのを見てまたすぐにハグハグと食事を再開した。


なんだろう、この子。毒無効のスキルがあったことといい、もしかして俺と同じような身の上なのかもしれない。


獣人は人間よりもずっと早く独り立ちするという、数年くらいならこの子を育ててもいいかなと俺は思いはじめていた。


「うぅ、人間」

「なんだ!?」


突然、プリムがお腹を押さえて蹲った。俺は何かあったのかと思って、彼女を慌てて助け起こした。


「腹が、腹が苦しい。………………やはり、毒入りか」

「そりゃ、ただの食い過ぎだよ」


俺はもう随分と使っていなかった表情筋が動くのが分かった、あはははっと笑う俺をみてプリムは不満そうに眉間に皺をよせていた。


なにはともあれ、まずはこの子のレベルを上げるとしよう。

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