24 独り立ち
スティグマタ国へ行く途中、ケントルム魔国で俺は冒険者ギルドの依頼表を見ていた、プリムにも普通の依頼の受け方を教えたほうがいいだろう。今日は駅馬車に乗る予定だったが、変更して依頼を受けてみることにした。
プリムを守ることとは別にしてその成長を促していかねばならない。プリムの成長はとても早い、いずれ俺など必要なくなるはずだ。しかし、どんな依頼を受けた方がいいものだろうか。
討伐依頼などは多分今のプリムでも相手を選べばできるだろう、それならば採取依頼を受けてみるか。
「プリム、このエテルノ草の採取依頼を受けるからギルドカードを貸してくれ」
「うむ、分かった。レイが依頼を受けるとは珍しいのう」
こうして俺たちはギルドで依頼を受けて、まずはギルドの図書室でエテルノ草がどうゆう薬草かプリムに調べさせてから出かけることにした。
「……レイ、あったぞ。エテルノ草じゃ、美容薬に必要な薬草でワイバーンの住む山の高いところにしか生えていない」
「よっし、よくやった」
プリムは字を読むのが苦手で調べるだけでも時間がかかった、しかしきちんと必要な情報を探し出すことができた。
「レイ、こそばゆいのじゃ」
「それじゃ、止めておこう」
「いや、止めんでいいのじゃ」
「……どっちなの」
きちんとエテルノ草を大図鑑から探し出したプリムの頭を撫でてほめておいた、プリム自身は嬉しそうに狼の尻尾を揺らしていた。その様子がとても可愛らしいので、つい長いこと頭を撫でてしまった。
「それじゃ、依頼書にあったプールス山へ行くぞ。その前に携帯食糧などを買い込もう、今回はプリムに任せる」
「分かったのじゃ、今回はやることが沢山あるのう」
依頼書を見てすぐに飛び出すのは新人以下だ、まずは食糧など必要なものを買ってから出かけなくてはならない。
「干し肉などの携帯食糧じゃな、水は魔法で出せるからなんとかなろう」
「まぁ、そうだ。それぐらい買えばいいだろう」
「良く出来ました」
「はうぅ、くすぐったいのう」
プリムはいつも俺の買い物につきあっているから、きちんと必要そうな食糧を買っていた。また、頭を撫でてやったらプリムが紅い顔で可愛く笑っていた。
ただ、買い物の方ではプリムは『無限空間収納』の魔法がまだ使えないから、今後は食糧の重さなどにも注意をしていかなければならない。……そのあたりはまた、今度教えていけばいいだろう。
「それじゃ、山登りだ。行くぞ、プリム地図を見て方向を教えてくれ」
「うむ、目的の場所はこちらの道じゃ」
こうして俺たちはプールス山へエテルノ草を採りに山へと入っていった。森と山とではまた歩き方が違う、俺は慣れていたがプリムはまだまだ苦戦しているようだ。
「レイ、足が疲れたのじゃ」
「そうか、それじゃ。休憩とするか」
「珍しいのう、いつもならレイが我を背負っていくのに」
「……俺も久しぶりの山登りで疲れているんだ」
「足を見せてみろ、傷はないな。こういう時はこれを使う」
「それはポー草ではないかや、ほう。足の疲れがとれるのじゃ」
ブーツを脱がせてプリムの足を確かめる、少しだけポー草という薬草を絞って足にすりこんでおいた。こうしておくと足の疲れがとれやすい。元々ポー草は体力回復に使われる薬草で、草原や山々などいたるところに生えている。
こうして途中で何度も休憩をとりながら、俺たちはプールス山の目的地に辿り着いた。ここでエテルノ草を採るわけだが、ここ一帯はワイバーンの縄張りだ。
「プリム、薬草を採りながら頭上にも気をつけろ。下手するとワイバーンに攫われるぞ」
「ただの薬草を採ればいいというわけではないのじゃな」
プリムはエテルノ草を採りながら、ちらちらっとワイバーンが出てこないかと警戒していた。
「我が魔法を受けてみや!!」
一匹だけワイバーンが寄って来た時にも、きちんと雷の魔法で追い払うことができた。今のプリムではワイバーンを一撃で仕留めるほどの魔法はまだ使えないようだ。
次からは依頼を選ぶところからやらせてみよう。今回の依頼はちょっとプリムの力量では不安がある。
「レイ、依頼どおりの数が採れたのじゃ」
「俺も採ったからこれで数は多いくらいだな、薬草の状態もとても良い」
帰り道ではプリムに採った薬草を持っていかせた、冒険者ギルドに帰るまでしっかりと採取したものを持って帰るのも大事なことだ。
冒険者ギルドにつくとプリムは受付に薬草を持っていき、きちんと依頼料と多く採ってきた分の買い取り料を貰ってきた。
「よし、今回はプリム一人でほとんどできたな」
「我もいろいろ学んでおるからじゃ」
「明日は、プリムに依頼を選んで貰おう。それも勉強だ」
「……我が依頼を選ぶのか?」
「そうだ、その後は今日と同じようにすればいい。ああ、でも買い物は『無限空間収納』をプリムは持ってないから、買う量に注意が必要だ。いずれは俺がいなくてもいいようにしておかないと」
「……レイは、……レイは、我を捨てるのか!?」
プリムが悲鳴のような声を出した、冒険者ギルドの中でその声は良く響いた。




