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23 必要な強さ



「はああああ!!」


俺は気合を入れて、一度に二匹のオークを切り裂いた。新しいアダマンタイトの剣は俺に合わせて作ってあるのでやはり使いやすい。


「とやあああ!!」


プリムも風の勢いを借りて跳躍し、オークを寸断しようとした。しかし、いかんせんプリムの体は軽すぎて最後まで刃が通らなかった。俺は慌ててプリムの相手をしていたオークの頭を切り飛ばした。


「むう、良い装備だが我には使いこなせんのう」

「そんなことはないさ、実際にゴブリン退治だったら役に立っただろう。剣に魔力を流すのに慣れれば、オークも斬り殺せるようになるさ」


プリムが使っているのは魔力を通すことができるミスリルの剣だ、剣にまとわせる魔力が多いほどにその切れ味は増していくようになっている。


オークの集団を始末して、俺たちは昼食をとることにした。『無限空(インフィニット)(スペース)収納(ストレージ)』から必要な物を出して、いつものように俺が料理していく。


「我が野菜を洗うがや」

「うん、任せた」


最近はプリムも少しずつ料理を覚えようとしている、魔法で出した水で丁寧に野菜を洗う。基本的に口に入れる水は魔法で生成する、川の水をそのまま飲んだりすると運がわるければ腹痛や死に至ることもある。どうしても川の水を使うときは一度煮沸させることにしている。


料理のほうは贅沢な話だがオリハルコン製のナイフで野菜や猪の肉を切っていく。今日も野菜入りスープと猪肉の串焼きだ。できあがったら二人でさっそく食べ始める。


「今日もレイの料理は美味いのう、どうして街の料理はああ不味いのだろうか?」

「あー、街の料理屋にもよるけど、まず肉が貴重だからだな。それに量を増やす為にふすまなんかが入ってることが多いな」


「むぅ、肉は貴重なのか」

「街に住む者にとっては貴重品だぞ。大きい街なら冒険者が食肉用の肉をとってくる依頼を受けるが、小さい街では金が無いからそんな依頼が自体が少ない」


「街にいるより森にいるほうが贅沢できるとは不思議な話だの」

「鳥や豚、牛を育てる場所がないからな。どうしても肉は狩猟に頼らざるを得ない」


ひと昔前は街の中で豚を放し飼いにしていたこともあった、しかし糞の問題など衛生的なことが原因で最近ではほとんど見られない。街より村のほうが家畜は多いくらいだ。


「街より村の方が家畜が多かったりするが、ほとんどは売却用だな。あとは冬を生き残る為の保存食になる」

「気軽に肉は食べれないのだな」


「街の方が食べる機会が多いものもあるぞ、パンなどは焼くために専用の道具が必要だから俺もさすがに作れない」

「……あの黒いパンは嫌いじゃ、硬いからすごく食べにくい」


「黒パンはスープに浸すか、スープで煮込んでから食べるんだ」

「むう、次食べる時に試してみよう」


そんな会話をしているうちに昼飯を食べ終えた、食べる物は毎回少しずつ変えるようにしているがもっと新しい調理法を知りたいところだ。


「それじゃ、レベル上げもこのあたりで切り上げて街に戻るとするか」

「うむ、今日は街に泊って、明日は駅馬車じゃな」


現在俺たちはボルカーン王国を出て、スティグマタ国へと向かっている最中だ。駅馬車に乗りっぱなしもつまらないので、新しい剣の練習もかねてこうしてオーク狩りなどをしている。


「オークは顔が豚じゃし、食べられないのかのう」

「うっ、迷宮とかでどうしても食べ物が無い時は食べたりするらしいぞ」


「美味いのか!?」

「生臭いのと筋が多いので食べれはするが、あんまり美味しくはないと本にはあった」


「なんだ、残念じゃのう」

「美味かったら食べるのか、オーク!?」


まぁ、人間は美味いものに弱い生き物だから、実際に美味しかったらオーク料理も広がるのかもしれない。プリムみたいに美味しいものに貪欲な人間はどこにでもいる。


「レイ、疲れたので運んでおくれ」

「鍛錬になるからいいぞ、しっかりと掴まれ」


俺は甘えて背中に乗ってきたプリムを背負って近くの街へ向かう、プリムは最初は歌など歌っていたが途中で眠ってしまった。疲れているのは本当らしい。


「少しずつ体力をつけないとな、なぁプリム」

「むにゃ、うむ」


プリムはどうも子どもの頃に充分な栄養が得られなかったせいで身長が低い、体だってとても軽くて同年代の子どもと比べれば小さい。


どういう環境で育ったのかは大体想像がつく、最低限しか食事が与えられずに碌に体を動かすこともできなかったはずだ。


最初に会った時、プリムのレベルは1だった。成人の平均的なレベルが10というこの世界でそれはとても異常なことだった。


「我はもっと強くなるのだ、むにゃ」

「そうだな、もっともっと強くなろうな」


プリムは最初俺を殺しにきたといった、レベルが1の獣人にさせることじゃない。完全な捨て駒だったわけだ、俺はそのことを忘れない。


プリムを利用して俺に傷つけさせようとした者がいる、俺も彼女もまだまだ強くならなくてはいけないようだ。この優しいぬくもりを守る為には強さがいる、俺は宿屋までそんなことを考えながらプリムを背負って歩いた。

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