22 新装備
「お嬢ちゃん、ドラゴンの皮の扱いだったらうちの店が一番さ」
「いやいや、うちの店は本物を扱ったことがあるよ」
「是非、本物のドラゴンの皮を扱わせてくれ。報酬だっていらないよ」
「うちもそうだよ、金なんていらないからドラゴンの皮を加工させておくれ」
「いいや、やはり伝統のあるうちの店こそ……」
プリムがうっかりとこぼしたドラゴンの皮という言葉に次々と武具屋らしきドワーフたちが集まってきた。結論からいうと俺たちはとりあえず逃げた、せっかく貰ったドラゴンの皮だ。どうせ加工するならじっくりと店を選びたい。
「おっ、この剣はいいな。振ってみた時にしっくりくる」
「ここの防具は細工が細かいのう」
「オリハルコンのフルプレートまであるのか!?うっわ、高過ぎる」
「値段が二桁間違っておるのではないかや」
「うーん、どの店も特色があって迷うなぁ」
「おお、この店にはドラゴンの皮の装備があるぞ」
「どの鉱石を使うかも考えものだよな、俺は硬いアダマンタイトの剣がいいけど」
「我はミスリルかオリハルコンの方が良いかの」
「値段が、値段さえ高くなければ!!」
「ほう、ここはなかなか腕が良さそうじゃ」
結局、鍛冶屋や武具屋を一軒、一軒ゆっくりと見てまわり、仕事が丁寧でこちらの要望を細かく聞いてくれる店に作って貰うことになった。
「こりゃ、すげぇ。本物のそれも上質のドラゴンの皮と鱗だ。これ、本当に使っていいんだな。代金にドラゴンの皮を分けてくれるってのも本当なんだな」
「ああ、良い防具をよろしく頼むよ」
「また採寸かえ、こそばゆいのう」
防具屋の方ではドラゴンの皮を一部譲るということで、代金を相殺して作って貰うことになった。なんといっても一匹分のドラゴンの皮だ、多少譲ってしまってもまだまだ沢山あるのだ。
「アダマンタイトの剣とミスリルの剣だな。代金は残った鉱物と金貨300枚だな、いいだろう。それぞれにあわせて一級品を作ってやろう」
「よろしくお願いします」
「ここでも採寸か、忍耐じゃな」
防具もそうだが剣だって体に合わせて作った物の方が使いやすい、プリムは絶望したような顔でまた採寸を受けていた。作ってもらうのは俺がアダマンタイトの剣が二本に、プリムがミスリルの剣が二本だ。一部はボルカワーム退治で手に入れた鉱物で支払い、残り金貨300枚で作ってもらうことになった。
「ついでだから食事や雑事に使うナイフも買っておこう」
「そこは大事じゃぞ、美味い食事は大切なことだ」
野宿をする時にもナイフは何かと役に立つ、お金に余裕があることだし、二人で一本ずつオリハルコンのナイフを買っておいた。
「出来上がるまで一カ月か、どこかでレベル上げでもするかな」
「ゴブリンを狩ろう、どうせ奴らどこにでもおるじゃろ」
プリムの発言に俺はまさかと笑いかけたが、冒険者ギルドに行ってみればゴブリン退治が本当にあった。ドワーフの女の子は小さいから攫われやすいそうだ。
ぎゃいあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
「ええい、女の敵め!!全滅するがよい!!」
「……プリムがやる気になってるのはいいけど、凄く怖い」
もちろん、助けが間に合う場合もあれば、間に合わない時もある。しかし、退治しないよりははるかに状況はよくなるのには違いない。
「ボルカワーム退治依頼がまた出ているな」
「ヒッ!?わ、我はあれは苦手じゃ~~」
プリムは嫌がったがボルカワーム退治はいい稼ぎになるので、遠慮なく魔法と剣で片っ端から倒させて貰った。
このそこそこに強い敵を倒す感覚、一瞬も油断できない雰囲気。俺のレベル上げという趣味にぴったりの獲物である。
「倒すだけでよかろう、解体はいいのではないかや?」
「いや、この中には大事なお宝が眠っているんだ」
倒したボルカワームを解体していく作業をプリムは嫌がった、虫というより蛇やミミズが苦手なのかもしれない。
「プリム、いいな。新装備に新しい剣」
「うむ、もうワームは狩らなくていいのだな。もう、夢の中にワームは出て来んのだな」
この一カ月でボルカワームを相当倒したので、一気にレベルが上がっていた。おかげでボルカワームもさくさく倒せたが、あれは普通なら複数のパーティが集団で挑むくらい強い魔物だ。ギルドの職員さんからは真剣な顔でここに移住しないかと聞かれたくらいだ。
俺たちの現在の強さはこんなところである。
名前 :レイ
レベル:193
年齢 :22
性別 :男
スキル:剣術、怪力、魔法剣、全魔法、獣の目、毒無効、気絶無効、麻痺無効
石化無効、睡眠無効、即死無効、魅了耐性
魔王の祝福、神々の祝福、龍王の祝福
名前 :プリムローズ
レベル:62
年齢 :15
性別 :女
スキル:剣術、全魔法、毒無効、石化無効、魅了耐性
龍王の祝福
やはりプリムよりも俺のほうがレベルの上りが良い、これは祝福系の力であると思う。
これは当初の予定どおりスキルについて研究している、スティグマタ王国へ行ってみるべきだろう。
「プリム、次はスティグマタ国へ行ってみたいんだけど」
「どこでも良いぞ、ただしもうワームは本当に勘弁してくりゃれ」
すまん、そこまでワーム系の魔物が苦手だったとは思わなかった。
ご指摘のあった誤字を修正しました。




