14 疑問と幸せ
ぎゃああああおうがああああぁぁぁあぁ!!
「うむ、四匹め」
「順調だな、腕も上がっている」
今日も俺たちはレベル上げとしてオークを狩りに来ていた、オークが相手だとプリムはまだ一匹ずつしか相手ができない。
プリムの体格ではどうしても力負けするのだ。水魔法の刃で器用に敵を倒してはいるが、集団で囲まれたら負けるのはプリムの方だろう。
十数匹、とりあえず目についたオークを始末して、俺たちは休憩しながら水筒から水を飲んだ。
「むう、レイはどうやってオークの集団と戦えるようになった?最初はレイだって弱かったはずだ」
「最初はゴブリンだって集団で相手にしなかったよ、よく使ったのは罠だな。それが出来ない時は一匹ずつ誘き出した、まずは確実に一匹ずつ仕留めていったよ」
「なるほど、今度我に罠の作り方を教えておくれ」
「うーん、罠を作るにも結構力が必要だからな。プリムは魔法の力を伸ばしていった方が早く強くなるかもしれないぞ」
「ほう、魔法か」
「水魔法が得意だから、水場におびき寄せるとか、逆に待ち伏せをするとかだな。後は土魔法なら森なら大体のところで使えるぞ」
「むう、女子は損よの。これより魔法の練習を増やすことにするのじゃ」
「ははははっ、どうしても女の子は男よりかは非力だからな。それは生物として仕方がないことさ」
質問が終わったらしいプリムが膝の上に乗ってくるので、俺は狼の尻尾を手すきですいてやった。プリムは満足そうにしていた。
「俺に言わせるとこのレベルって概念自体が不思議で仕方がない、このプレートのアーティファクトだってそうだ。血を一滴垂らせばその者の情報を読み取る、それじゃ誰がその情報を管理しているんだ?そのことが不思議でたまらん」
「神様とやらが見ているんじゃないか?」
「その神様っていうのは何者だ?教会では全知全能の存在なんていうが、ただ見ているだけで手を貸さないなら何の役にも立たん」
「我は神を信じないので分からん」
「俺も神様を信じてるかと言われると分からないな」
「うむ、そのくらいで丁度いいのではないか」
「そうか」
「そうだの」
休憩が終わるとまたオークを探して森を歩いていった、オークの代わりに狼の群れをみつけたのでこれも倒しておく。プリムがさっそくとばかりに土魔法の槍で何匹かを串刺しにしていた。
「狼は美味しいのか?」
「硬いが食べられないこともない」
狼よりも猪や鹿が食べたいのでレベル上げを中断して森を彷徨う、地面に残っている足跡や糞などから大きな猪を見つけだした。
「ここは我がやろう、水の刃よ!!」
「おお、綺麗に切れたな」
食欲に突き動かされるプリムは凄い、猪の頭を見事に魔法で断ちきった。頭にも肉はあるのでこれもとっておく、そして体のほうは吊るして血抜きをする。
「早く食べたいぞ、レイ」
「血抜きしないとせっかくのお肉が美味しくないぞ」
血抜きをしない肉は生臭かったり、血の味がして美味しくない。しっかりと血抜きをしてから猪を解体していった。プリムが待ちきれない様子なので、肉を少しずつ切り取り串焼きにしてみる。
「塩胡椒を忘れるなよ」
「うむ、ふわあああ。美味い、肉についてる脂肪がまた美味いぞ」
鹿があっさりとした肉なら、猪は脂がしっかりとついた肉だ。もちろん、時期にもよるが食べるなら猪のほうが美味い。
「レベルが上がって、美味しい肉を食べれて幸せだな。レイ」
「確かに幸せだな、プリム」
ガツガツと猪の肉を美味しそうに頬張るプリムを見ているとそれだけで幸せだ、今日の猪はまた脂がのっていて美味かった。
「また食べる時が楽しみだ」
「まだまだ肉は残っているからな、次も楽しめるな」
大きい猪はとても一度では食べきれない、『無限空間収納』に入れておいて必要な時に食べるようにする。本当に『無限空間収納』は便利だ。
「もう食べられないぞ、ふぁ~あ」
「少し眠っていいぞ、何かあったら起すから」
森の中で昼飯を食べてゆっくりと休む、とても贅沢な時間だと思う。家名を背負って戦う騎士より、領地を管理する貴族より、俺はよっぽど幸せな奴だ。
「むにゃ、次は鳥肉で、んにゃ」
「はい、はい、かしこまりました」
プリムは幸せそうに俺の膝でお昼寝を楽しんだ、俺も眠気がやってきたが見張りが一人もいないなんて森の中では危険だ。
のんびりとプリムの頬を突いたりして時間をつぶした、他にも無属性の魔法の構築を考え出したら思ったよりも時間が過ぎてしまった。
午後からもほどほどにレベル上げをして、俺たちは宿屋に帰った。