13 母の愛
ギャオオオオオオォッォッォン
俺とプリムで六重に張った結界にドラゴンは体当たりをした、そしてそのままその場にひっくり返ってしまった。ちなみに黒いドラゴンだった、ってどうでもいいか。
「なんだ、このドラゴン?」
「とんだ見掛け倒しじゃ」
俺はドラゴンがひっくり返っている隙に首だけを出して、ドラゴンの体を土魔法で埋めてしまった。止めをさしてもよかったのだが、万が一仲間がいたりしたら困るからだ。
「おい、起きろ!!」
「我らの質問に答えるのじゃ」
何度も何度も揺さぶったりしてみたが起きないので、雷の攻撃魔法を弱めに一発くらわせた。さすがにこれは痛かったのか、きゃいんと一声泣いてドラゴンは目を覚ました。
「はっはっはっは、侵入者どもよ。私の縄張りより立ち去るがよい……ってどうして僕埋まってるの?あれっ、出れない。出れないよ、お母さんー!!」
「……ドラゴンってもっとこう、崇高な種族じゃなかったのか?」
「何にでも例外はあるということじゃ」
俺はすっかり埋まっているドラゴンの首筋にアダマンタイトの剣を当てて、何か妙なことをしたらいつでも殺せるぞという姿勢をとった。
「ヒッ!!に、人間さん。な、なにか僕に御用でしょうか?」
「そうだな、その皮とか鱗とか防具を作るのに欲しいな。ドラゴンの肉も食ってみたいし、内臓や血は薬の材料になるな」
「レイ、我も、我も、ドラゴンのステーキを食してみたいぞ」
「ヒィィィ!!そ、それ以外でお願いします。僕はまだ独り立ちしたばかりの子ドラゴンです、お肉だってきっと美味しくないですよう!!」
「試してみないとわからないこともある」
「食してみないとわからないこともあるのじゃ」
完全に目の前のドラゴンが食肉用に見えてきた、もうこのままコイツ食べちゃっていいんじゃないかな?
「うわああぁぁん、お母さん。うえええええん、お母さーん!!」
「うっ、うるさい」
「黙らんか、未熟者め」
すると俺たちの上空に今捕まえているより大きなドラゴンが飛んできた、風を翼にまとわせながら下りてきた。綺麗な赤いドラゴンだった。
「うちの馬鹿息子がご迷惑をおかけしたようでごめんなさい。あのできればその子を解放して貰えないかしら」
「ああ、息子さんですか。……心中お察し申し上げます」
「我が思うに、苦労しておるのう」
「ええ、人間の怖さがわからなくてこんなに人間の街に近いところに巣を作ってしまったの。やってきた人間たちも簡単に倒せたなんて言って調子にのるし、はぁ~。でも、可愛い息子なのよ。できれば返してくれないかしら?」
「人間の近くに寄らないように再教育してください」
「それとじゃ、何か貰えると嬉しいの」
「それでは今から私が脱皮する皮をさしあげましょう、魔法で無理矢理に剥ぐ皮だから強度は生きている物と変わらないわ。それに爪と牙、鱗をいくつかつけましょう」
「そこまでされたら、こっちとしては文句はない」
「すまんな、助かるのう」
こうして俺たちと母ドラゴンとの取り引きは終わった、子ドラゴンはその間中シクシクと泣きっぱなしだった。
「それでは、もうお会いすることがないことを祈るわ」
「うええぇぇん、もう人間なんか嫌いだ――!?」
「もう人間に近づくなよ!!」
「うむ、母に面倒をかけるでない!!」
ドラゴンたちを見送った後、冒険者ギルドにはドラゴンが引っ越したことを伝えておいた。新しいタイプのギルドカードも貰えた、しかし今回の一番の収穫はドラゴンの素材である。俺たちはさっそく武具屋にドラゴンの皮を持ち込んだ」
「はああぁぁぁ!?ドラゴンの皮、本物か!?こりゃ、すげぇ!!」
武具屋の親父はドラゴンの皮や鱗を調べたあと、俺たちにこう言った。
「こんなにいい素材の加工は俺の腕じゃ勿体ない、ボルカーン王国へ行きな。あそこには腕のいい武具屋や鍛冶屋が大勢いるぞ」
こうして俺たちはまた旅をすることになった、新しい防具を手に入れる為にボルカーン王国へと。
「フォルクス王国からボルカーン王国か、少し遠いし途中で魔国を通らないといけないな。長い旅になりそうだ」
「武器屋も沢山あるのだろう、我はいっぱいお金を貯めて良い武器を手にいれたいぞ」
「そうだな、別に急ぐ旅じゃないし、のんびりといくかな」
「美味しいものもあるといいのう」
俺は新しくギルトカードを手にいれたわけだが、また妙なスキルが一つ増えていた。よく見れば、プリムもそうだった。
名前 :レイ
レベル:149
年齢 :22
性別 :男
スキル:剣術、怪力、魔法剣、全魔法、毒無効、気絶無効、麻痺無効、石化無効
睡眠無効、即死無効、魔王の祝福、神々の祝福、龍王の祝福
名前 :プリムローズ
レベル:41
年齢 :15
性別 :女
スキル:剣術、水魔法、光魔法、風魔法、火魔法、土魔法、毒無効、石化無効
龍王の祝福
あの馬鹿ドラゴンを引き取りにきた、綺麗な赤いドラゴンは龍王だったらしい。祝福っていうことはまた成長が速くなるのだろうか。
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