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11 初心者


きゃああああ!!


悲鳴を聞きつけて駆けつけてみれば、なんと総勢数十人の女性冒険者たちがゴブリンたちを鈍器で撲殺していた。辺りは血の海で、その中で鬼気迫る様子の女性達が殺戮衝動に身を任せている。


「え、えっと?」

「ふむ、これはなんぞや?」


目の前の光景の意味が分からず、俺たちはただ茫然と撲殺されて数が減っていくゴブリンたちを見ていた。するとその中の一人の女性が顔の返り血を拭って、こっちに話しかけてきた。


「おや、あんたら驚いてるってことは初心者かい?簡単だよ、今日はこのあたりのゴブリンを殺してまわる日なんだ。こりゃ奉仕活動だから、報酬はでないけどね」

「奉仕活動?」

「うむぅ?」


その女性はなおも逃げようともがくゴブリンを踏みつけて、一発殴りつけてから話し続ける。


「ゴブリンやオーク、オーガが人間の女を攫うのは知ってるだろ。こっちだってぼけっと攫われるなんてごめんだね。だから、希望者だけでこいつらが増えてるところでこうして大掃除をするってわけさ」

「……なるほど、分かった」

「素晴らしい、その活動もっと広げるべき」


プリムはゴブリン退治をしている女性冒険者を尊敬の眼差しで見つめていた、俺もとても良い活動だと思う。ゴブリンやオーク、オーガの被害は本当に深刻なものだから。


「あねさん、洞窟の中に人がいますよ」

「女の悲鳴が聞こえるから、煙でいぶす作戦がつかえません」

「チッ、厄介だね。洞窟でゴブリン退治をしたことがある奴、そいつらを集めな!!」


女性冒険者たちはテキパキと役割分担をし、洞窟の中に入っていった。どうやら俺たちの出番はなさそうだと帰りかけた時、洞窟から大きな咆哮が響きわたった。


ぐらあああああああああああああああああ!!


「あれはオーガだな!?」

「うむ、ちとここの女性には荷が重くないかのう」


案の定、女性冒険者たちが洞窟から逃げ出してきた。彼女たちを追いかけて数匹のオーガも飛び出してくる。


「プリム、魔法での援護を頼む。オーガには近づくなよ!!」

「うむ、任された!!」


ぐらあああああああああああああああああ!!


俺は逃げる女性たちの間をすり抜けて、オーガに近づこうとする。オーガが炎の魔法を放ったので、氷の魔法で応戦した。


「はああああ!!」


魔法を放って隙ができたその瞬間をねらって、オーガを腹の部分から一閃して斬り捨てた。大量の臓物をまき散らしながら、オーガはそのまま横倒しになる。


「さーて、次だ!!」


ぐらあああああああああああああああああ!!


今度は別のオーガを狙ってこちらから魔法を放つ、足元を凍らされたオーガの動きが鈍った瞬間に背中から真っ二つにしてやった。


「おらっ、あんたたち!!オーガと戦ったことがある奴、今のうちに体勢を整えな!!」

「はい!!」

「おうよ!!」

「戦えない子は下がって!!」


女性冒険者たちも最初は動揺していたものの、彼女たちも冒険者だ臨機応変に数人ずつでオーガと戦いはじめた。


「我が魔法を受けてみやれ!!」


プリムは全体を見渡せる位置に移動し、戦線が崩れそうなところを魔法で援護してまわっていた。プリムの雷の魔法があちこちでオーガに炸裂する。


「ははははっ、女性もなかなか強いもんだ」


俺はまた一体のオーガを倒すと、苦戦しているグループの援護へと走る。ほどなくしてオーガ達は全て退治された。回復魔法を使える者が負傷者の手当にあたり、死者は一人も出なかった。


「にゃははははっ、あんた男だけどなかなか良い男じゃないかい」

「ど、どうも」

「うむ、レイは良い男」


「良い人なんだけどねー、なんて良い人どまりで終わるんじゃないよ」

「は、はい」

「そこは心配無用」


ゴブリンやオーガを全て倒して、捕まっていた女性を村へと送り届けた後。俺たちは奉仕活動をしていた女性たちに捕まってしまった、そしてそのまま酒場に行って飲み会が始まってしまったのである。


「領主もさ、もっとあいつらくそゴブリンどもの対策に金をかけやがれっての!!」

「そ、それはそうですね」

「うむ、女性の敵に慈悲はないぞ」


「まぁ、今日は一日奉仕活動ご苦労さま。まだまだ、飲むよー!!酒持ってこいや!!」

「プ、プリム!?」

「レイ、女性に恥をかかせてはいかんぞ」


結局、その晩はしこたま酒を飲まされて、後半は酔いつぶれた女性たちの介抱をすることになった。…………女性は意外に逞しい。


翌日、冒険者ギルドに行くと彼女たちはそれぞれ依頼を受けて仕事をしているようだった。俺も依頼が貼ってある掲示板をみていると、ギルド職員から声がかけられた。


「ギルドマスターがお待ちです、すぐにこちらにおいでください」

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