べに
口紅は魔法であり呪いである。
口紅を塗るたびに私は魔法にかかる。
可愛さだったり、幼さだったり、色気だったり、色によって醸し出す雰囲気がある。
新しい私になれる魔法。
口紅を塗るたびに私は呪いにかかる。
私は毎日口紅を塗りつける。
可愛らしいピンク、優しい印象のオレンジ、妖艶な真紅。
他の誰でもない私になる。
ただ私はいつも口紅を塗る前に思うのだ。
「口紅を塗っていない私は”私”なのか?」と。
口紅を塗らない私は誰なのか。
口紅を塗って初めて私は私なのか。
口紅は呪いだ。
私を毎日変えてしまう。
それでも私は
今日も唇に魔法と呪いの色を纏おう。