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死に風吹き行く ~ある姉弟の話 その壱~
父と母はすでに寝ている。
弟は姉にもう寝ようかと言った。
古い柱時計が丁度23時を指し、ボーンボーンとなり始めた。
「あらやだもうこんな時間」
姉はスマホの時間表示を見た。
ふたりは居間でテレビを見ていた。
居間を真ん中にして左が姉の部屋、右が弟の部屋だ。
みかんを口に運びながら弟はリモコンを消した。
よいしょと立ち上がりじゃあと言いかけた弟は仰天した。
「おい、お姉・・・顔っ、顔だっ、自分の顔を見てみろ!」
「何よ、そんな大きな声出して?」
メール送信が終わった姉は弟の顔を見上げた。
ガタイのいい弟が体に似合わず小さく青ざめ震えている。
「えっ?なんだって?あたしの顔がどうしたのよ?」
23回目の音が鳴り終わった。
かた、こと、と時計は静かに次の時を刻んで、いる。
「・・・いいから、鏡で時分の顔を見てみろ!お姉!!」
これほどの驚愕の表情を弟が見せたことは記憶にない。
ただならぬものを悟った姉はすぐさまテーブルの上にあった手鏡を手にした。
「ギャーーーーーッ!!」
姉は手鏡を落とした。
今見たものが信じられなかった。
首から上が蝋のように真っ白になっていた。
元々顔は白いほうではない。そして真夏日が続く通学の中で真っ黒に日焼けしていたはずだった。
そう・・・数分前までは。




